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読書感想文:「巨大銀行のカルテ」

タイトルに惹かれて買ってみた本。足元の大手金融機関の取り組みや経営スタイルについて、知りたかったので、読んでみました。結論としては、深く金融ビジネスの変化、特にテクノロジーの活用とそのインパクトを知りたい人には少し物足りないかもしれないが、リーマンショック後の各行の戦略を網羅的に知ることはできたいので、満足しています。

特にゴールドマン・サックスやUBS、BNPパリバ等の大手行がどんなテクノロジーを使っているのかを、少しでも情報を仕入れられたので、よかった。
大きく分けて、① 顧客資産の運用・管理系のツールとしてのフィンテック、② 自社のトレーディングに資するテクノロジーの2つに分別出来るように思う。

セカンダリー市場、特に機関投資家と投資銀行はコミュニケーションを密にして、タイムリーに取引を行うこと自体が、お互いに重要になってくる。そのため、機関投資家を含めた顧客資産の運用・管理ツールを導入すること自体は特に違和感はない。このあたりは、NY発のスタートアップであ

Symphony社が評価されているのと同じように思える。

また、ロボアドの活用によって、個人顧客の囲い込みと効率的な営業網の実現にも、進化が見られるように思った。

また、トレーディング業務から収益は、減少傾向にあるとはいえ、歴史的に見ても、テクノロジーの応用に積極的だった、トレーディング部門での活用は進んでいるように思える。ブラックロック社の「アラディン」は社外にも提供され始めており、ミドルオフィス、バックオフィスを含めたテクノロジープラットフォームの外販モデルは今後も進む可能性があると思っている。
それ以外に、本書では、多くのページを金融危機のインパクトと個別行ごとの、事業戦略にページがさかれている。BNPパリバの躍進やドイツ銀行の状況などは、国内にいると米系銀行よりも肌感で感じにくいところもあり、軽く読める書籍としては、非常に有益であると思う。

職業柄かテクノロジーの応用について、視点が行ってしまうのだが、もう1点付け加えるとしたら、金融機関におけるテクノロジーの活用やイノベーションは、個社内で起こっている可能性が高いのかもしれないという部分である。もちろん、様々なテクノロジー企業の買収などもあると思うが、課題と気付きのスタートラインはあくまでも、自社の中からという印象を本書からは受けた。やはり、それだけ専門性の高い分野ということかもしれない。

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