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ぼくのなつやすみ

 2021年8月13日。時刻は午前3時。まだ外は真っ暗。ゴーっという除湿機の低い音だけが静かに鳴り響くリビングでひとり、冷えたりんごジュースを飲んでいる。早朝から予定があるわけでもないので再び布団に入りなおしてもいいのだが、昨晩子どもと一緒に遊び疲れて寝てしまったのが21時頃だった事を考えると、体内時計のリズム的にこれでもう起きてしまうのがちょうどいいと判断する。
 持ち込んだノートPCで会社のサーバーにログインして、昨日の収支を確認する。ほぼ毎日店に立って店番をしている自分にとって、店から離れたところで自分が関わらない日の店の収支を確認しているこの状況は珍しく、とても新鮮で、且つそれがとても気分がいいことに今日ようやく気づく。
 もしかすると今まで、本質的に”人に頼る”ということが出来ていなかったのかもしれない。自分が全く手をくださずに、周りに仕事やタスクを投げきって自分は離れて別のことをする。その経験が極端に不足していた。たとえば従業員であれ、親族であれ、後輩であれ、自分に協力してくれる人を心から信用すること。すべてを任せて、自分は後処理や軌道修正するだけにとどめること。本来は経営の教科書の最初のほうに出てくるはずの重要なテーマに、ようやく少し触れられた気がした。
 包み隠さずいえば、きっと、他人のことを心から信用していないんだと思う。そしてなんでも自分でやってしまって勝手に自分の首を締めてきた。結局自分が何でもやってしまったほうが丁寧でミスが少なく、効率が良いとどこかで思ってしまっているんだろう。でもそれは少し違いそうだ。そのことに40歳過ぎてやっと気づけたことは成長なのかもしれない。
 そしてまた、他人に頼るのが下手くそとはいえ、日々の生活や子育ては妻に思いっきり頼りっきりなので、逆説的に言えば妻のことだけは心から信用しているともいえる。妻は偉大だ。とにもかくにも、いま傍らにあるりんごジュースが抜群に美味しいことと、仕事から離れた一日一日が想像以上に充実できていることに感謝しつつ、明日も子どもと一緒に目いっぱい羽根を伸ばそうと、お盆の只中独り想う。

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