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集中力ないからオーディオブックで本を読んでいる

最近、自分が出した本がオーディオブック化した。

AmazonのAudible(オーディブル)だ。

プロのナレーターが書籍の朗読をしてくれるやつ。月額1500円くらいで有名どころはだいたい聴ける。無料期間もある。


Audible化の話が来たときは「需要あるのかしら」と思いつつOKと返事した。朗読を聴く習慣が無かったので、どんな人がどんなタイミングで聴いているのかあまり想像できない。

承諾し、しばらく経ってからボイスデータが送られてきた。まるで自分の日記を朗読されている感じがして(実際、一作は日記を改稿したエッセイ集だ)むず痒く、自分では最後まで聴くことはできなかったけれど、「本を耳で読む」という行為は案外なじみそうに思えた。


それから自分も会員登録し、Audibleを利用し始めた。

これが想像以上に良かった。利用し始めてからさほど経っていないが、すでに10冊以上の本を音だけで聴いている。

なにがそんなに良かったのか、理由を少しまとめてみる。


■オーディオブックの利点

  • 移動時間で聴ける

ベタだけどこれがやっぱり大きい。

往復の通勤で毎日1時間半くらいの時間を消費している。その間はおおむね歩行しているか電車に乗っている。どっちの時間も読書に充てられるのはかなりいい。特に電車の中ではSNSのしょうもない炎上とかをつい見てしまうのでかなり不毛だった。

毎月の移動時間は30時間くらいある。ここを読書に費やせるのは嬉しい。


  • 気が散りにくい

普段の読書は主にKindleだ。しかしスマホを見ていると通知が目に入ってきたりSNSのしょうもない炎上の様子が気になったりして、とにかく気が散る。私は15分以上同じ書籍を読めない。スマホの端末操作がそのまま脱線の入り口になっているせいだ。

オーディオブックを聴きながらスマホを見て内容を理解するのは不可能だ。なので必然的に、オーディオブック再生中はスマホを閉じて虚空を見つめることになる。

もちろんボーッとしたり考え事をしたりして意識が飛ぶことはあるけれど、電子書籍を読んでいるときのように「全く違うことを始めてそっちに熱中し、多大な時間を浪費する」という事態にはなりにくい。


  • 読書効率が意外といい

これがいちばん予想外のメリットだった。

当然、朗読を聴くよりは文字を目で追ったほうが速く読める。しかしながら、書籍を読むには「文字を読み続ける」という能動的な行為を続けなければならない。よって集中力が切れるとすぐSNSのしょうもない炎上を追ってしまう。

一方、音は放っておけば勝手に情報が入ってくる。瞬間の読書スピードは「読む読書」が優勢でも、寄り道が起こりにくいぶん、長期的には「聴く読書」が優勢になりうる。うさぎとかめ現象だ。

オーディオブックには再生スピード変更機能もある。デフォルトのスピードはかなりゆっくりなので、多少速度を上げても問題ない。2倍速くらいまでなら自然についていけると思う。私は2.5倍がちょうどよく感じるが、最近3倍までいけるようになった(しかしさすがに長時間は脳がジリジリ焦げる)。

長編小説は1冊12時間くらいかかるが、2倍速で聴けば6時間だ。通勤で往復90分かかるなら、4日で最後まで聴ける。ゆっくりめでも1週間あれば読み終えられる。


■ナレーターの技術がすごい

ところで、オーディオブックを聴いていると「声」の重要性を強く感じる。

最近『硝子の塔の殺人』という長編ミステリをAudibleで聴いて、ナレーターの技能に驚いた。声優の高梨謙吾さん。最近のゼルダでリンクの声を演じている人だ。

『硝子の塔の殺人』には多種多様な人物が出てくる。

・若い医師
・女探偵
・中年の刑事
・軽薄な料理人
・メイド
・霊能力者
・老作家
・編集者
・執事
・老富豪

という老若男女を男性ひとりで演じ分けている。にもかかわらず、聴いていてほとんど混乱しない。

登場人物の多い作品は音だけで聴くと混乱しそうだと思っていたが、上手なナレーターなら声色や演じ分けによってあらたな情報を付加できる。むしろ読書の助けになるのだ。もちろん当たり外れはある。ナレーターが女性のセリフを裏声で読むので気が散る作品もあった。

『爆弾』という長編には、爆弾魔と思わしき中年の容疑者が出てくる。これもナレーターの演技によって迫力が付加されている。のらりくらりとした返答で巧みに警察を操る狡猾さと憎たらしさが語り口で表現されている。こういうナレーターによる解釈を楽しむのも面白い。ふつうに文字で読むよりも各シーンの印象が深く残っている気がする。

大御所声優がナレーションを担当した作品もあり、大塚明夫が読む『走れメロス』もある。メロスがいい声すぎるので一聴の価値がある。


■読書量と運動量が増えた

一日のどこで読書をすればいいのか、私は時間の確保に悩んでいた。

なにぶん集中力が壊滅的なので、本を読もうとしてもすぐインターネットでしょうもない炎上を見に行ってしまう。家で落ち着ける時間はもうずっとそればかりだ。

そんな私には、移動中に聴けるオーディオブックが向いていたようだ。腰を落ち着けた読書をいったん諦め、出歩いている時間にそれを充てるのである。

最近では「本を読むために移動する」という逆転が起こりつつある。オーディオブックを聴きながらひたすら歩く。この前は仏教の話を聴きながら都内から埼玉まで歩いてしまった。散歩したりルームランナーで走ったりしながらでも読書できるのは「一挙両得」感があり楽しい。


■全部オーディオブックになればいいのに

最初は「字で読んだほうが効率いいじゃん」と思っていたが、文字を目で追う集中負荷と天秤にかけたら普通にこっちに傾いてしまった。今では、もう全部の本が早くオーディオブックになってくれないかな……と思っている。

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