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夜更けに「君の名は。」を語る※ネタバレあり

あぁ、タイトルを書き出してみたものの、その安易さに自分でゾッとしてしまう。

試写会に当たって、喜び勇んで観に行った7月7日時点にこれを書けていれば、きっと今よりも有益な人間になれると思う。

今となっては、100億突破のモンスターヒットを飛ばしてしまった流行りものに対して今さら何を言うことがあるか、悩みつつも、朝早くに目が覚めてしまったついでに、二度寝をするに等しいほどのだらだら加減で綴りたい。

※多分にネタバレを含み、一回しか観てないので曖昧に適当なことを言い出す可能性が高いです、まだ観ていない方はご注意下さい。

新海誠監督作品を初めて目にしたのは、時系列で言えば大学生の頃、2007年くらいに「秒速5センチメートル」が流行ったのをきっかけに、アニメばっかり見てた僕はどっぷりとハマっていた。

特に好きな作品の一つが「雲のむこう、約束の場所」という2作目で、程よく寂れた駅の描写や、新海誠の真骨頂である光の風景描写、空の色や時間帯まで含めた芸術的なシーンの演出が光る。

「君の名は。」を観終わった感想として、まずはじめに頭に浮かんできたのは、この「雲のむこう」だった。言うなればこれが完成版のような、あの日小さなライブハウスで観たあのバンドが、超満員の武道館でド派手にライブをしているような感覚。

とか書き始めると、完全に「マイナーな頃から知ってた、俺ね、かっけぇ」みたいな話になってきてしまう、そうではない、いやそれもあるけど、結構言いたいけども。

共通項として語りたい部分としては、会いたいのに会えない主人公たちのすれ違いや、異なる世界線や時間軸(雲のむこうでは夢の中でお互いにお互いを探しつづける)そしてその交わる瞬間の描写がクライマックスに用いられる部分である。なんとも好きな人はすごく好きだし、これが嫌いな人は全般的に新海誠が嫌いなのだろうと思う。よく「あぁー、会いたいのに会えない切ない系のアニメでしょ?」みたいな言い方をされて内心カッチーンとくるが案外それはそうではあるので「えぇ、まぁ、ははは」みたいな返ししかできない。まぁまぁ仲が良い人になら「うるせぇあの映像の美しさでやるからこそ意味が生まれるんだ」とか、「セカイ系全盛期にこそふさわしいあの甘酸っぱさがなぜわからぬか」とか議論のしようがあるものの、特に興味がない人に対して力強くオススメしようとは思わない。

「君の名は。」に関しても、誰でもかれでもにこれは観るべき!とか、観ないと人生損してるだとかを言うことは全くなかった。仲の良い数人に、「いや面白かったっすよ、観た方がいいっすよ」みたいなことをぼそぼそお伝えするにとどめた。

なんだかこう書いていると新海誠ファンではないような口ぶりではないか、、、いやめっちゃ好きなんですよ、「雲のむこう」はサントラまで買ったし、吉岡秀隆のちょっと舌ったらずな声がどうにもツボでこのキャスティングはほんと神がかってるなと、そんな感じで、うーん、あまりうまく伝わらない。ネタバレとかいいつつ、あまりネタバレが好きじゃないので、どの程度ネタバレしていいかもわからない。

行き着く先は思春期

今回試写会で舞台挨拶をしていた監督が「思春期」という言葉を使って表現した作品のテーマ。新海誠作品の根底にあるものとしては、そこに行き着くのではないかと思う。そして賛否の別れ方で言ってもこの部分への批判が多い。

おそらくだが、性的な経験人数が2桁に突入するくらいから、この作品はどんどん響かなくなっていくだろう。言ってしまえば童貞くささがあり、身勝手な妄想の部分が作品の大半を占めているとは思う。

とはいえ、それだけで100億のヒットはなかなか出ないだろう、要因を色々考えてはみたものの、まぁ色んな人が色々と分析をしているだろうから、好きな理由を見つけてくれたらいいと思うが、僕の意見としてはチームとしての総合力で監督の魅力が最大化されたのではないかと思う。キャラクターデザインや、音楽での演出にこれまでの新海誠作品の要素がこれでもかってくらいに詰まって爆発力を生み出している。

観た人と話していた中で面白かった意見として、全盛期のMADに似た作り方(いわゆる音楽にあわせて映像を作り上げる2chやニコニコ動画などで盛り上がっていたカルチャー)でほぼ全てのシーンにおいて見せ場がある状態があるというのがヒット要因の一つではないかというものもあった。

あとは多分リピート率の高さ、身の回りで2回観たという人が2人いるというのも実感値としてはリピートの人も多そうだなと思うところ。

しかし前作が1億ちょっとの監督がいきなり100億とは、バズってるとしか言いようがない状態な気もする、観た人の評価も割と分かれる部分が多い、でもやっぱり嬉しいのだ、マイナーがメジャーに受け入れられる瞬間。別に自分が見出したわけではないのは重々承知だが、いわばサブカルがカルチャーへと向かう瞬間が。

だらだら書いてしまったついでに、もうちょっと書いてしまうと、新海誠監督と次回作が心配である。誠に勝手な意見ではあるが、メガヒットの一発屋で終わっては欲しくない。「思春期」という根底にあるテーマを貫いていくのか、あるいは「成長」やその先に向かうのかはご本人次第だと思うが、今作でついたファンもいれば、一見さんでその青臭さに次は観ないという人もけっこういるかもしれない。

その中で「君の名越え」をできるかは結構な課題だと思う。

細田守監督のようなパターンであれば、段階的に数億〜40億のヒットをコンスタントに飛ばして、実力値の評価もじわじわ伸びているような感覚があり、次回作への期待値も興行収入も比例しながら推移している。

完全に蛇足になってきたが、今回のヒットを考えると、恋愛ものが強いのか、はたまた家族愛や人生訓のようなものの説教くささが流行らないのか、スタジオ地図もさらに売れるといいなぁ、、、。細田守は「サマーウォーズ」あたりまでは狙いすぎな感じがしていたけど、「おおかみこども」ではぐっと深みがでて、すごく好きな作品になった。

何の話だっけか。ともかく、いち新海誠ファンとしての意見をまとめさせていただくと、「君の名は。」をまだ見ていない人で、こんな駄文をこんなところまで読んでしまった人は「雲のむこう」Huluとかで見てから、古参ファンな気持ちで劇場でこのメジャーデビュー感を楽しむもよし、もう観た人で新海誠にハマった人は秒速よりも「雲のむこう」で吉岡秀隆の声に萌えてほしい。終わり。

#君の名は #映画 #レビュー

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