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ある救急医の備忘録 カルテ2 / 面影

いつもと変わらない夜。
いつもと同じように救急搬送依頼の電話が鳴る。

XX年YY月ZZ日 21時

「23歳 女性 意識消失発作の方の受け入れをお願いします」
「フィリピンの方で日本語は通じません」


電話から15分して到着し、英語で診察を始めた。
が、通じない…
ダメもとで日本語でも試した。
やはり 通じない。
さぁ どうしようかな と思ったとき、救急隊員が「同乗されてきた同僚の方が通訳できます!」と。
" そういうことは早く言えよ!" と思いつつ、救急初療室へ入ってもらった。

同僚の方も流暢に日本語が話せるわけではないので、片言の日本語と英語で尋ね、それをタガログ語に翻訳してもらって、問診をすすめた。

診察では問題なく、血液検査なども問題なかった。
聞けば、彼女はフィリピンパブで働くダンサーだった。
日本に来てまだ 2ヶ月くらいで、日本での生活や夜間の仕事に慣れず、そのストレスからの意識消失発作と考えられた。出勤前だったことも踏まえて。

ただ、問題は運ばれてきた女性ではなかった。

問題だったのは付き添ってきた同僚の方だった。

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