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【退屈なリハビリを楽しくする】子どもがトキメク遊びの要素4選

「子どもがリハビリにもっと集中してくれればいいのに。」
「運動課題はつまらないから小さい子はやってくれない。」
「リハビリを楽しい体験にするにはどうすればいいのかな。」
あなたもこのように悩んでいませんか?
10年前、若手理学療法士だった私も実は同じ悩みを抱えていたので、その気持ちが痛いほどわかります。

そのような悩みを抱えるあなたに、この記事では以下の内容を御紹介します。
「子どもが夢中になってリハビリに取り組むようになる難易度設定の方法」
「集中力が途切れないプログラムを組むコツ」
「成功体験を積むことで自信を高められる目標設定の方法」
「子どものもっと上手くなりたい気持ちを刺激するフィードバックのポイント」

実際、トレーニングを行おうとしてもすぐに子どもに飽きられてしまい、十分な質と量を確保できなかった私が、今では小さな子供でも40分間夢中になってトレーニングに取り組んでくれています。

記事を読み終わった頃には、あなたの担当する子どもに合わせた魅力的なリハビリの提供の仕方が身につきます。子どもが楽しんで取り組む中で能力と自己肯定感が高まる実りのあるリハビリにすることができるでしょう。

効果的なリハビリを実現するために、トレーニングに遊びの要素を取り入れる方法を学びませんか?子どもの成長を支援できる本当に効果的なリハビリの第一歩をここから始めましょう。


1. 子どものトレーニングの質と量を確保するための遊びの要素の重要性


 運動療法の効果を高めるための鍵は、トレーニングの質と量の確保にあります。質の確保のためには理学療法士の適切な知識が、量の確保のためには対象者のモチベーションが不可欠です。

 大人の場合、トレーニングの意義を理解することでモチベーションを高めることができますが、子どもにとってはそれが難しいでしょう。また、トレーニングに伴う苦痛に長期間耐えることも困難です。したがって、子ども向けの運動療法では、トレーニングに遊びの要素を取り入れることが重要になります。

 遊びの要素をトレーニングに取り入れる際には4つのポイントを押さえるとうまくいくことが多いです。4つのポイントとは「適切な難易度」、「新しい刺激」、「目標設定」、「フィードバック」です。遊びに限らず世の中にある楽しい体験にはこの要素が含まれていることが非常に多いです。

2. 楽しくて効果的なリハビリに必要な遊びの4つの要素

①難易度:成功率8割で勝ちたい気持ちを刺激する。

 適切な難易度設定によって、モチベーションが高まります。難易度設定が適切である場合、子どもが最終的には自分が勝てると信じられるため、楽観的にトレーニングに取り組めるようになります。また、気を抜くと負けるかもしれないという緊張感が、子どものワクワクやドキドキを刺激するため、トレーニングに夢中になれます。
 一方で、難易度が適切ではないと、モチベーションが低下します。難易度が高すぎると、自分にはできないと悲観的になり、トレーニングを放棄してしまいます。難易度が低すぎると、すぐにつまらなくなり、別の遊びに惹かれてしまいます。

 適切な難易度の目安は「成功率8割」です。成功率8割の難易度は、勝てそうだという楽観的な気持ちと、気を抜くと負けるかもしれないという緊張感のバランスがちょうどよいポイントとなります。ただし、トレーニングにどれほど取り組んでいるかによって若干の調整が必要です。

  1. トレーニングに取り組み始めた頃
     トレーニングの始めは初めての取り組みであるがゆえに不安や緊張感が高い傾向にあります。これにより、失敗した時の心理的なダメージが大きくなるでしょう。したがって、トレーニングの導入時には失敗しないように成功率10割の難易度から始めましょう。

  2. トレーニングに慣れた頃
     トレーニングに慣れてきたら、自分にはやれそうだという自信が生まれてきます。これに加えて、失敗するかもという緊張感が気持ちを高めるスパイスとして働くようになるでしょう。したがって、トレーニングに慣れた頃には油断したら失敗するような成功率8割の難易度に設定しましょう。

  3. トレーニングに飽きてきた頃
     トレーニングが上手になったら、この遊びは自分にとって簡単だというように自信が高まり、失敗への恐怖感が非常に小さくなります。これにより、成功時の嬉しさが薄まり、失敗時の緊張感のインパクトが減るため、次第に退屈を感じるようになるでしょう。したがって、トレーニング終盤には成功率5割の難易度に設定しましょう。時には、成功率1割ほどの非常に高い難易度が退屈を吹き飛ばす刺激になることもあります。

 難易度は子どもによって微調整しましょう。成功や失敗の感じ方は子どもによって様々です。自信満々なタイプの子どもは失敗の悲しみの影響が小さい傾向にあります。一方で、自分への自信がないタイプの子どもは、失敗によるショックが大きい傾向にあります。前者の場合には、難易度を高めに、後者の場合には難易度を低めに設定するとよいでしょう。

難易度設定の例:平均台チャレンジ
1.トレーニングに取り組み始めた頃
目標:
平均台を使って、簡単な直線を歩く。
設定: 平均台の幅を広くし、床に近い高さに設定します。成功率10割の難易度にするために、平均台を歩く距離は短めにし、周囲には安全なようにクッションを敷きます。
説明: 子どもは平均台を歩きながらバランスを保ちます。失敗しないように、平均台は非常に安定していて、ほとんどの子どもが成功するように設定されています。

2.トレーニングに慣れた頃
目標:
平均台を使って、少し複雑な直線や曲線を歩く。
設定: 平均台の幅を少し狭くします。成功率8割の難易度にするために、歩く距離や平均台の形状に変化を加えます。
説明: 子どもは平均台を歩きながら、途中で曲がったり、少し不安定な部分を渡ったりします。少し難易度が上がるため、注意深くバランスを取る必要があります。

3.トレーニングに飽きてきた頃
目標:
平均台を使って、複雑なコースをクリアする。
設定: 平均台の幅をさらに狭くします。成功率5割の難易度にするために、コースには曲がり角や段差を加えます。
説明: 子どもは平均台を歩きながら、複雑なコースをクリアします。平均台は時折揺れたり、不安定になる部分があり、失敗する可能性も高まります。このようにして、子どもの挑戦心を刺激します。

4.例外的に高い難易度
目標: 平均台を使って、非常に難しいチャレンジをクリアする。
設定: 平均台の幅を非常に狭くします。成功率1割の難易度にするために、コースには多くの曲がり角、揺れる部分、さらには大人が子供を落とそうと邪魔してくるエリアなど多様な障害物を設けます。
説明: 子どもは平均台を歩きながら、非常に難しいコースをクリアします。成功するのは非常に難しいため、達成感や挑戦感を強く感じることができます。

②新しい刺激:先の読めない展開で好奇心を刺激する。

 トレーニングに適度に変化を加えることによって、モチベーションが高まります。子どもは同じような展開が続くとやがて飽きます。そのような徴候が認められたら変化を加えるサインです。変化の付け方には主に3つあります。「難易度の変更」、「ルールの変更」、「遊び方の変更」です。

  1. 難易度の変更
     難易度の項目で述べたように、時折高い難易度設定にすることは好奇心を刺激する効果があります。例えば、バランス練習に玉入れ遊びを取り入れている場合、10球中2球入ればクリアという設定を、10球中5球入ればクリアに変更することがこれにあたります。

  2. ルールの変更
     同じ遊びでもルールを変更することで新しい刺激を加えられます。例えば、玉入れ遊びの場合、 「玉を入れる籠は一定の距離に置いておく。」のではなく、「玉が入るごとに少しずつ籠が遠くなる。」などのルール変更が考えられます。あるいは、玉の種類や大きさを変えたり、制限時間を設けたりすることも新たな刺激となるでしょう。

  3. 遊び方の変更
     同じ遊びでも遊び方を変更することで新しい刺激を加えられます。例えば、玉入れ遊びの場合、ペアを組んで交互に投げる形式に変更することで、協力と競争の要素を取り入れることができます。また、音楽をかけて、音楽が止まるまでにどれだけのボールを入れられるかを競うなど、ゲーム感覚で楽しむ方法も効果的です。

③目標設定:ゴールを定めて達成感を刺激する。

 適切な目標設定によって、モチベーションが高まります。目標が明確であると、何をすれば成功なのかが分かりやすく、子どもは不安を感じずにリハビリに取り組むことができます。何をすれば成功なのかがわからない状況というのは不安感を高め、子どもをイライラさせます。何をすべきかが明確であるためにゲーム達成のための試行錯誤に集中できるのです。また、目標に対する自分の立ち位置がわかるために成長したいという気持ちが高まります。
 適切な目標設定に必要なポイントは以下の3つです。

  1. 子どもにとってわかりやすい目標にする。:何をすれば成功かがわかりやすい目標を設定しましょう。例えば、バランスビームを10歩進む、ボールを5回連続でキャッチするなど、具体的で達成可能な目標を設定します。これにより、子どもは具体的なゴールに向かって努力しやすくなります。

  2. 成功できる小さな目標から始める:大きな目標に向かって段階的に進むために、小さな達成可能な目標を設定しましょう。例えば、バランスボールに10秒間座っていられる、1分間の間に10回ジャンプできるなど、具体的で達成しやすい目標が効果的です。これにより、子どもは小さな成功体験を積み重ねていくことで、自信を持つことができます。

  3. ゲーム感覚で楽しむ:目標達成をゲームのように楽しむことができます。例えば、ジャンプの回数を数えてポイントを獲得する、バランスを保ちながらゴールと定めた特定の場所まで移動するなど、子どもが楽しみながら取り組めるように工夫しましょう。ゲーム感覚で取り組むことで、子どもはリハビリを遊びの延長として捉え、自然とモチベーションが向上します。

④フィードバック:評価と報酬でやりがいを刺激する。

 適切なフィードバックによって、モチベーションが高まります。自分の行動が正しかったか、間違っていたのかをすぐに理解できるため、より良くしようという気持ちが高まります。自分の頑張りの結果を可視化することで明確に進歩を感じられるようになるため、意欲が高まります。
 適切なフィードバックに必要なポイントは以下の3つです。

  1. すぐにフィードバックを与える:子どもが何かを試みた直後にフィードバックを与えることで、その行動が正しかったのかどうかをすぐに理解させましょう。例えば、「今のジャンプはとても上手だったよ!」、「もう少しバランスをとってみようね」といった具体的なコメントが有効です。このようないわゆる「即時フィードバック」は、子どもの行動に対する反応が速いため、改善点や成功ポイントをすぐに認識できます。

  2. 視覚的なフィードバックを活用する:進捗を視覚的に確認できるようにしましょう。例えば、シールやスタンプを使ってポイントを可視化する、グラフやチャートで成長を示すなど、目に見える形でのフィードバックが子どものモチベーションを高めます。視覚的なフィードバックは、子どもが自分の成果を直感的に理解しやすく、達成感を得やすい方法です。

  3. 報酬システムを導入する:小さな努力に対しても報酬を与えることで、子どものやる気を引き出すことができます。例えば、一定のポイントを集めると特別なシールがもらえる、お気に入りのゲームで遊べる時間が増えるなど、子どもが楽しみながら目標に向かって努力できる環境を作りましょう。報酬は子どもの興味や関心に合わせて設定し、モチベーションを維持するために工夫します。

まとめ 

 この記事では以下の内容を紹介しました。
「子どもが夢中になってリハビリに取り組むようになる難易度設定の方法」「集中力が途切れないプログラムを組むコツ」
「成功体験を積むことで自信を高められる目標設定の方法」
「子どものもっと上手くなりたい気持ちを刺激するフィードバックのポイント」

 実際、子どもがすぐに飽きてしまうとトレーニングの質と量を確保するのは難しいですが、これらの方法を取り入れることで、小さな子どもでも長時間夢中になって取り組むことができるようになります。

1. 子どものトレーニングの質と量を確保するための遊びの要素の重要性
 
リハビリの効果を高めるためには、トレーニングの質と量が重要です。子どもはトレーニングの意義を理解しにくく、苦痛に長期間耐えるのも難しいため、遊びの要素を取り入れることが必要です。

2. 楽しくて効果的なリハビリに必要な遊びの4つの要素
①難易度:成功率8割で勝ちたい気持ちを刺激する
 
適切な難易度設定は、子どものモチベーションを高めます。成功率8割の難易度は、成功への期待と失敗への緊張感のバランスが取れています。例えば、最初は平均台の幅を広くし、成功率10割に設定します。慣れてきたら幅を狭くして成功率8割、さらに上手になったら複雑なコースで成功率5割にします。

②新しい刺激:先の読めない展開で好奇心を刺激する
 
トレーニングに変化を加えることで、子どものモチベーションが高まります。例えば、玉入れ遊びの場合、玉が入るごとに籠を遠ざけたり、ペアで交互に投げたりすることで新しい刺激を与えられます。

③目標設定:ゴールを定めて達成感を刺激する
 
目標が明確であると、子どもは不安を感じずにリハビリに取り組めます。小さな目標から始め、大きな目標に向かって段階的に進むことで、子どもは成功体験を積み重ねられます。例えば、バランスボールに10秒間座る、1分間に10回ジャンプするなどの具体的な目標を設定しましょう。

④フィードバック:評価と報酬でやりがいを刺激する
 
適切なフィードバックは、子どものモチベーションを高めます。即時にフィードバックを与え、進捗を視覚的に確認できるようにします。例えば、ジャンプが上手くできたらすぐに褒め、シールやスタンプを使ってポイントを可視化する方法があります。小さな努力に対しても報酬を与えることで、子どものやる気を引き出せます。

 これらのポイントを取り入れることで、子どものリハビリが楽しい体験となり、集中力やモチベーションが向上します。子どもたちの成長と自己肯定感を高める効果的なリハビリを実現しましょう。

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