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2030年までの折り返し地点となる「SDGサミット2023」いよいよ開催
、国連総会ハイレベルウィーク

9月18日より、第78回国連総会のハイレベルウィーク2023が始まる。各国首脳がニューヨークの国連本部に集まり、持続可能な開発目標(SDGs)に焦点をあてて討論が行われる本総会の、本年度における課題や予定される会議やイベントについて紹介する。

SDGs進捗「後退」の中で求められるハイレベルでの政治的ガイダンス

国連は、本年のハイレベルウィークについて、「2030アジェンダの達成に向けて、また17の持続可能な開発目標(SDGs)を正しい軌道に戻すことが緊急に求められる中での重要な節目となる」と位置づけ、各会議を開催予定だ。

第78回国連総会に先立ち、記者団にブリーフィングを行うアントニオ・グテーレス事務総長。「世界中のリーダーたちが集い、世界の現状評価だけでなく、共通の利益に向けて行動するための年に一度の特別な瞬間である。今、世界が必要としているのは”行動”です」と述べた。UN Photo/Manuel Elías

9月19~23日、26日に予定される一般討論では、テーマを「信頼の再構築とグローバルな連帯の活性化:すべての人々にとっての平和、繁栄、前進、持続可能性に向けて、2030アジェンダとそのSDGsのための行動を加速させる」と掲げ、平和、安全、持続可能な開発を前進させるためのグローバルな課題解決策について論じられる。

本総会の中で最も注目される「SDGサミット2023」は18~19日に行われる。2015年の国連総会で採択された「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」が定めたSDGsは、今年、達成目標年となる2030年までの折り返しにあたる。4年に一度の本サミットが前回開催されたのは2019年だが、この間、気候変動による気象災害、新型コロナやウクライナ侵攻などSDGsへの取り組みを「後退」させる要因が重なった。

国連の最新の報告書「The Sustainable Development Goals Report Special edition」によれば、SDGsの169ターゲットのなかでデータによる評価ができる約140個のうち、順調に推移しているものは15%にとどまっている。国連は「SDGsの達成は危機的状況にある」と警告しており、この状況を打破するため、SDGs達成に向けた一層の連携強化が求められているのが今回のサミットだ。なお、各国首脳によるSDGサミットの成果は、交渉を経た政治宣言となる。

また、SDGサミットに向けて国連では、今週末(9月16~17日)「SDGアクションウィークエンド」と称されるイベントも予定されている。ステークホルダー、国連機関、加盟国の関係者ネットワークが集まり、2030年までのSDG変革を推進する具体的なコミットメントと貢献を策定する場として、40以上のサイドイベントが行われる予定だ。

総会を前に準備が進められる会議場の様子
UN Photo/Mark Garten
第78回国連総会に向けて準備が進められる「Japanese Peace Bell Garden(平和の鐘のある日本庭園)」の様子。総会を前に14日には、グテーレス事務総長と日本の関係者たちが出席し「平和の鐘」を鳴らす式典が行われた。鐘は、平和活動に取り組んだ中川千代治氏が世界各国のコインを溶かして製作し、1954年に寄贈した。UN Photo/Manuel Elías

開発のための資金調達、気候野心サミットなどその他の各会合

一般討論、SDGサミット以外の各会合の予定は以下のとおりである。

・開発のための資金調達に関するハイレベル対話(9月20日)
SDGs達成に向けて資源を動員するための国連の枠組みである「アディスアベバ行動目標」の実施に関する政治的リーダーシップおよびガイダンスを示す予定。
 
気候野心サミット(9月20日)
SDGサミットと並行して招集される。各国政府、企業、都市、地域、市民社会、金融機関などのリーダーに対して取り組み強化を呼びかける。

パンデミック予防・備え・対応(PPR)に関するハイレベル会合(9月20日)
世界保健機関(WHO)とともに各国首脳を招集。パンデミック予防・備え・対応に向けて、国、地域、国際レベルでの政治的意思を結集することを目指す政治宣言を採択する予定。
 
「未来サミット」のための閣僚級準備会合(9月21日)
2024年9月に開催予定の「未来サミット(※)」に向けた準備として開催される閣僚会議。※未来サミットは、国連が100周年を迎える2045年に向けて、世界が直面している重大な課題に対する協力の強化とSDGsの次のグローバル・アジェンダを議論する。

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に関するハイレベル会合
(9月21日)
UHC達成のための保健医療システムを強化する政策の実行や責任基盤などが語られる。※UHCは「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」ことを意味する。

結核との闘いに関するハイレベル会合(9月22日)
予防・検査・治療・ケアに対する公平なアクセスの確保と、世界的な結核の流行を緊急に収束させるための科学、資金提供、イノベーション、それらの恩恵を推進することをテーマとする。

一般討論、SDGサミット他、各会議の模様は、UN Web TVや一般討論ウェブサイト(英語サイト)にて、ライブやオンデマンドで視聴できる。

文:遠竹智寿子
フリーランスライター/インプレス・サステナブルラボ 研究員

トップ画像:UN Photo/Mark Garten
編集:タテグミ

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