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モディ首相とゲイツ氏が対談、インドのデジタル革命について――農村地域の女性向け「ドローン操縦訓練」プログラムとは

インドのナレンドラ・モディ首相と米マイクロソフトの共同創業者ビル・ゲイツ氏が、3月29日に対談を行い、AI、気候変動、女性のエンパワーメントなど多岐にわたる昨今の重要なトピックについて語り合った。本稿では、特に女性支援について語られた内容を中心に取り上げる。

ナレンドラ・モディ首相とビル・ゲイツ氏の対談は、インドの日刊新聞『Business Standard(発行:Business Standard Private Limited)』の公式YouTubeで公開された。ゲイツ氏がモディ首相官邸を訪れ、前半は室内で、後半は場所を官邸庭に移してリラックスした様子で行われた。

モディ首相とゲイツ氏の対談は、まず2023年のG20サミットの話題から始まった。モディ首相はサミットでの様子を「インドのデジタル革命について世界中の代表者たちが興味を示した。私は、技術を民主化し、独占しない旨を彼らに説明した」と振り返った。これを受けてゲイツ氏は「デジタル政府の分野で、インドはテクノロジーを適用させているだけでなく、実際にその道をリードしている」と、インドの包括的なアプローチへの評価、および、デジタル革新と南南協力の重要性を説いた。

デジタル格差を許さない

モディ首相は「世界におけるデジタルデバイドの話を聞くたびに、自分の国ではこのような格差が生まれることは絶対に許されないと思っていた。そのためにも、デジタル公共インフラの整備が極めて重要である」と力強く語っていた。

女性エンパワーメントに力を入れるインド

「技術の最良の活用は、医療、農業、教育の分野である」と話すモディ首相が、大きな目標の一つとして掲げているのが女性たちへの支援だ。

女性たちの経済的独立と、社会的地位の向上を目指すプログラムとして「ラクパティ・ディディ(Lakhpati Didi)」が進行中だという。ラクパティ・ディディは「豊かな姉妹」を意味しており、3000万人を支援することを目標に掲げている。モディ首相は「経済的な自立だけでなく、自信や自己肯定感を持つように支援したい」という思いも述べていた。

ドローン操縦の訓練プログラム「ナモ・ドローン・ディディ」

続けて、農作物の監視、肥料の散布、種まきなどの作業に向けた、女性のためのドローン操縦技術を学ぶ訓練プログラム「ナモ・ドローン・ディディ(Namo Drone Didi)」について語られた。

「インドの女性は新しいテクノロジーに対して積極的」「彼女たちは、以前は自転車すら乗ることがなかったが、今ではプロのドローン操縦士として活躍している」と、計画が順調に進んでおり、女性のマインドや生活にポジティブな変化をもたらしていることをモディ首相は強調している。これは、農村地域の近代化への促進にもつながる取り組みである。

「ナモ・ドローン・ディディ」の様子は、モディ首相がXで発信した以下の動画で見ることができる。

モディ首相は、教育におけるAIをはじめとするデジタル技術の変革の可能性と、第四次産業革命におけるその重要な役割について言及する。「第一次および第二次産業革命の間、私たちは植民地であったために後れを取った。しかし、今、デジタル要素がコアとなる第四次産業革命の真っ只中にいる。ここから、インドが多くの利益を獲得していくことを確信している」(モディ首相)

こうしたインドのデジタル革命が躍進している様子を聞き、ゲイツ氏は「テクノロジーの進歩が人々の暮らしをより良い方向へ導いていることを実感できて、とてもうれしい」とコメントしていた。

文:遠竹智寿子
フリーランスライター/インプレス・サステナブルラボ 研究員

トップ画像:iStock/Dimple Bhati
編集:タテグミ

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