見出し画像

三菱地所、国内初の“気候テック”イノベーション拠点「Japan Climate Tech Lab」を2024年秋に開設――スタートアップの成長支援や最新トレンドの発信も

昨今、欧米を中心に気候変動対策を目的としたテクノロジー分野である「気候テック」が注目されており、それに伴い、スタートアップ支援の取り組みが拡大している。日本でもこの動きに追随し、同分野への関心が高まっている。そのような中、三菱地所は気候テック領域における国内初のイノベーション拠点「Japan Climate Tech Lab」(仮称)を開設する。2024年秋、東京都の新大手町ビルに開設予定の拠点では、スタートアップをはじめ産・官・学の関係者が協働し、イノベーションを創出する環境を提供する。

「ビッグテック」から「気候テック」への流れ

気候テック(Climate Tech)とは、気候変動や地球温暖化、またその主要因である温室効果ガス対策に焦点を当てた技術の呼称で、対象領域はエネルギー、モビリティ、インフラ、農林水産業、不動産など幅広い。2050年のカーボンニュートラルを目指しSDGsへの取り組みが拡大する中、注目を浴びている新たなテクノロジー分野である。技術セクターで見ると、マイクロモビリティー、バイオ燃料、EV、EVステーション、EV飛行機、長期蓄電池、スマートグリッド、緑色水素、代替肉、環境再生型農業、細胞農業、カーボンキャプチャ、リチウム電池再生など、非常に多様なプレーヤーが含まれる。

特にコロナ禍以降の2020年から2021年は、気候テック市場に資金や人材が流入しベンチャー投資が熱を帯びる中、シリコンバレーのビジネストレンドにおいても「ビッグテック」から「気候テック」への流れがメディアで頻繁に取り上げられている。国内でも関連企業やサービスが徐々に広がり始めている。ここでは一例として、気候テックカオスマップを紹介しておこう。これは、CO2排出量の見える化・削減を支援するクラウドサービス「アスエネ」を運営するアスエネが作成したものだ。

2023年版カオスマップでは、12セクターから気候テック関連企業を取り上げている。出所:アスエネ

気候テックのイノベーション拠点「Japan Climate Tech Lab」とは

三菱地所が、東京都・大手町に開設予定の「Japan Climate Tech Lab」は、スタートアップや企業、ベンチャーキャピタル、金融機関、アカデミア、行政機関、NPOなどが協力し、イノベーションを促進するための拠点として設立される。

約1800㎡のエリア内には、交流を図るためのラウンジやカフェ、セミナーやワークショップのためのイベントスペース、41のオフィス区画と5室のミーティング室、そしてスタジオも設けるなど、大規模な施設となる予定だ。

「Japan Climate Tech Lab」(仮称)は2024年秋に開所予定。「我慢しないサステナビリティ」を設計コンセプトに、設計段階から「作る量を最小にする」「段階的にアップデートする」「環境負荷の少ない素材だけで作る」などのプロセスを取り入れるという。

また、気候テックに取り組むスタートアップの成長支援や最新トレンドの発信、気候変動とその対策に関するリカレントプログラム実施、カーボンニュートラル達成に向けた企業への課題解決支援プログラムなども予定されている。

三菱地所は、丸の内エリアにスタートアップ・エコシステムを形成。ビジネス開発支援付きサービスオフィスやFinTech拠点、研究開発拠点などを提供し、成長段階に応じた支援を展開している。「(仮称)Japan Climate Tech Lab」においても、既存施設・コミュニティとの連携を図っていく。

米国では近年『Climate Week NYC』や『San Francisco Climate Week』といった、1週間をかけて行われる気候テック関連のイベントが大盛況だ。こうしたイベントは、アクセラレーターやインキュベーターが主導し、スタートアップと国や企業との連携を促進する“場”となっており、重要な役割を果たしている。

日本における「気候テック」の動きが本格化するのはまさにこれからと言えるが、三菱地所の「Japan Climate Tech Lab」が、今後の日本の気候テックイノベーションの発展を促進する“場”となってくれるのではないか。期待したい。

文:遠竹智寿子
フリーランスライター/インプレス・サステナブルラボ 研究員

トップ画像:iStock/NicoElNino
編集:タテグミ

+++

インプレスホールディングスの研究組織であるインプレス・サステナブルラボでは「D for Good!」や「インターネット白書ARCHIVES」の共同運営のほか、年鑑書籍『SDGs白書』と『インターネット白書』の企画編集を行っています。どちらも紙書籍と電子書籍にて好評発売中です。