見出し画像

ザッカーバーグ氏が考えるメタバースとは? フェイスブックからメタへ

国内外で話題となっているフェイスブックからメタへの社名変更。同社CEOマーク・ザッカーバーグ氏のメタバースへの思いを探った。

10月28日(現地時間)、米フェイスブックは今年で8回目になる年次VR(仮想現実)/AR(拡張現実)イベント「Facebook Connect」を開催した。同社CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は、1時間20分にわたるキーノートの中で、同社のメタバース構想をたっぷりと紹介した後、「最後にもう一つ」と加えて「メタ(Meta)」への社名変更を告げた。

最近の元社員からの内部告発や規制の動きなどを受け、企業イメージ刷新を狙ったのではともいわれているが、ここではシンプルにザッカーバーグ氏が考えるメタバースとはどんなものか、どんな思いがあるのかに焦点を当てる。

スクリーンショット 2021-11-03 0.01.31

オンラインでのソーシャル体験をハイブリッドに

メタバースとは、これまで「オンライン上に構築された仮想3次元空間のこと」などと説明されてきた。イメージするのは、ゲームの中でアバターを使って集い、「バーチャル=仮想」の中の「リアリティー=現実」を体験するといったものだろう。しかし、ザッカーバーグ氏が掲げているのは、単体のサービスやアプリによる空間を開発して終わるといったものではなく、もっと壮大な未来予想図だ。

メタ社によるメタバースとは、今日のオンラインでのソーシャル体験をハイブリッドにしたようなもので、時にはVRヘッドセットやARメガネを装着し、時には3次元に拡張され、時には現実世界に投影される。離れていても一緒に没入感のある体験を共有することができる。さらには、物理的な世界では不可能だったことも体験できる。

スクリーンショット 2021-11-04 22.51.47

アバターは今日のプロフィール写真のようになるという

キーノートでは、将来的な活用事例として、ソーシャルなつながり、エンターテインメント、ゲーム、フィットネス、仕事、教育、コマースといったコンセプト映像を紹介した。離れた所にいる友だちと隣にいるかのようにライブを観て、その後には別の空間に移動し、バーチャルの自分の服を選ぶといったシーンや、バーチャルの相手とスポーツの対戦をしたりチェスをしたりするシーンが紹介されていた。人は、状況に応じてリアルの体やアバターを使い、リアルとバーチャルの空間を自由自在に行き来できるイメージだ。空間のどこからどこまでが物理的なリアルなのかバーチャルなのか、もはや意識しなくなる世界だろう。これが「新しい雇用や経済効果も生み出す」ともザッカーバーグ氏は言う。

画像1

画像2

画像3

「人と人のつながりとともに進化する」という思い

ザッカーバーグ氏は、メタバースはインターネットにとって「次章」であると言う。そして、フェイスブックもまた「次章」に進む時だとし、あらためて自分たちがどのような企業なのかを考えたのだという。

Facebookを始めた理由について、当時はインターネットを使えば、ニュース、映画、音楽、ショッピングなど、ほとんどすべての情報を得ることができたが、「人」を中心にしたサービスがなかったからだと説明する。「私たちは今日、ソーシャルメディア企業として認識されているが、そもそものDNAは人と人をつなぐテクノロジーを構築する企業であり、創業時のソーシャルネットワーキングがそうであったように、メタバースは次のフロンティアである」(同氏)

キーノートで紹介したようなメタバース体験が実現するには10年程度はかかるだろうとザッカーバーグ氏は言っている。メタ社は、メタバースの確立のためにVR/ARのテクノロジーや通信技術などの開発を進めると同時に、次世代のクリエーターを育成するための没入型学習に1億5000万ドルの投資を行うとしている。

画像7

「メタ(Meta)」はギリシャ語でbeyond(超えて)を意味し、ザッカーバーグ氏にとって「常に構築すべきものがあることを象徴している」という

メタバースは実現するのか

メタ社発表の翌日の29日は、ちょうどインターネット誕生日といわれる日だった。「ARPANET」と呼ばれる米国防総省の軍事ネットワークが世界初のパケット通信ネットワークとして誕生したのが1969年で、それから52年だ。最初の通信は、米国内の4つの大学・研究機関の接続だった。

1991年に最初のウェブブラウザーが登場したときは、インターネットの存在を知らない人がほとんどだった。その後、Windows 95をきっかけにインターネットが徐々に普及。1998年にGoogleが誕生し、検索でウェブ上を自由に行き来することができるようになっていった。肩から掛けていた重い携帯電話は、今や手のひらサイズのスマホとなり、インターネットを利用したSNS、動画視聴、ショッピングなど、それまでパソコンでやっていたことをどこででも当たり前にできるようになった。

そんなインターネットにひも付いたテクノロジーの歴史を振り返ってみると、ザッカーバーグ氏が語るメタバースの時代が近い未来に訪れても不思議ではない。

文:遠竹智寿子
フリーランスライター/インプレス・サステナブルラボ 研究員

写真 メタ提供

+++

インプレスホールディングスの研究組織であるインプレス・サステナブルラボでは「D for Good!」や「インターネット白書ARCHIVES」の共同運営のほか、年鑑書籍『SDGs白書』と『インターネット白書』の企画編集を行っています。どちらも紙書籍と電子書籍にて好評発売中です。