見出し画像

移動における脱炭素の指標値を定めた「Location-GXガイドライン」が公開―― 位置情報データを活用したビジネスを推進する事業者団体が作成

LBMA Japanは5月20日、移動における脱炭素の指標値を定める「Location-GXガイドライン」を発表した。同団体のウェブサイトから 無料でダウンロードできる(会員登録が必要)

●移動における炭素排出量を可視化し、企業の共通指標に活用

LBMA Japanは位置情報データを活用したマーケティングサービスを推進する事業者団体(一般社団法人)で、2024年5月時点で77社・団体が加盟している。今回発表したLocation-GXガイドラインは、LBMA Japanの加盟会員の中から7社が集まって委員会を発足し、サステナブル経営推進機構(SuMPO)の協力を得て立案・作成した。同ガイドラインは、移動における炭素排出量を可視化し、統一することで人々の行動変容を促す施策を企業が展開できるようにすることを狙いとしており、炭素排出量の算出のロジックや方法などを定義している。

 LBMA Japanが5月21日・22日に開催したイベント「ロケーションビジネス&マーケティングEXPO 2024」では、代表理事を務めるリバーアイルの川島邦之氏が登壇し、ガイドラインを作成した理由について以下のように語った。

 「脱炭素というキーワードを聞く機会は多いですが、その手法はぼんやりとして明確ではありません。そのような中、私たちは業界団体として、位置情報データを活用してどのように脱炭素に貢献できるかを考えるために、今回ガイドラインの発表に至りました。『サステナブルな地球を守っていく』というのは、はっきり言えば“きれいごと”ですが、“きれいごと”を継続的に実施していくためにはビジネス化しなければいけません。私たちは日本社会において脱炭素の取り組みをより浸透させるために、多くの事業者がこの取り組みをビジネス化することを団体として推進します」(川島代表理事)
 

LBMA Japanの川島代表理事 (撮影:筆者)

 ●行動変容によるCO2削減値をポイント化

Location-GXガイドラインでは、位置情報や移動時間、交通経路などを比較して移動手段を推定する方法に加えて、自家用車・航空・バス・鉄道などさまざまな移動手段において1kmごとの炭素排出量(g)を“元値”として定義している。その上で、元値を毎年更新し、各サービスやビジネスで算出したベースライン(施策実施前データ)と施策実施後のデータを比較して、その差分である変容値(削減値)を「ロケーションGXポイント(L-GXポイント)」として定義している。

 「位置情報データと、経路図や路線図を組み合わせることで交通手段を明らかにし、その移動に対してCO2の量をかけ合わせることで排出量が分かります。このかけ合わせる方法を定義したのが今回のガイドラインですが、CO2排出量を可視化したあとに、これをベースラインとして『歩いて通勤しよう』とか『ポイ活サービスを使おう』といったいろいろなキャンペーンを行い、それらの施策で変わったCO2の削減値を『L-GXポイント』として算出する手法をガイドラインで策定しました」(川島代表理事)

位置情報と地図を組み合わせて移動手段を推定
1kmごとの排出量を元値としてベースラインを算出

 将来的にはL-GXポイントを、オフセット値を必要とする他企業に対してクレジットとして販売できるスキームの構築を目指している。

 「L-GXポイントをエンドユーザーに還元したり、会社の業績としてCO2削減のオフセット値にしたりするための仕組みを国に認めていただくために働きかけを行っていきたいと思います。2030年に向けて全企業がカーボンニュートラルに取り組んでいく必要がありますが、既存のJ-クレジットという制度は取得するのがとても大変です。それだけではない別のサービスから取得できた削減値をしっかりとカーボンニュートラルの値に算入できるようにすることを目指しています。こうしたことに取り組む上で、みんなが違う手法を採っていたら信憑性がなくなりますので、ガイドラインにより共通の指標を作って展開していきたいと思います」(川島代表理事) 

L-GXポイントのクレジット化によりマネタイズを目指す

LBMA Japanは今後、ガイドライン履行を監査するための認証制度の構築も予定しており、2025年には制度を開始する予定だ。

 発表資料
https://www.lbmajapan.com/locationgx

 文:片岡義明
フリーランスライター/地図と位置情報を中心とした情報サイト「GeoNews」主宰。地理空間情報をテーマにニュースサイトや雑誌にて執筆。著書に『こんなにスゴイ!地図作りの現場』『位置情報トラッキングでつくるIoTビジネス』(共にインプレスR&D 刊)など。

トップ画像:iStock/Blue Planet Studio
編集:タテグミ