見出し画像

国連とメディアによる「1.5℃の約束」キャンペーンが元日からスタート――2024年は通年で実施

国連広報センター(UNIC)は12月21日、メディア有志と展開しているキャンペーン「1.5℃の約束――いますぐ動こう、気温上昇を止めるために。」を、2024年1月1日~12月31日の通年で実施することを発表した。
同時に、博報堂DYホールディングスによる同キャンペーンのインパクト調査の結果も発表された。それによると、キャンペーンの認知者ほど気候変動への危機感が高い一方で、気候変動の抑制につながる行動は広がっていないというのが現状のようだ。

気候変動に歯止めを掛けるための具体的なアクションを示す「1.5℃の約束」

「1.5℃の約束」は、2022年6月17日に国連とメディアのグローバルな連携の枠組みである「SDGメディア・コンパクト」に加盟しているメディア有志が立ち上げたキャンペーン。メディアの情報発信を通じて、世界の平均気温上昇を産業革命以前と比較して1.5℃に抑える必要性への理解を促進し、地球温暖化をはじめとする気候変動に歯止めを掛けるための具体的なアクションを提示して個人・組織の行動変容につなげることを目的としている。

同キャンペーン参加メディア・団体数は、1年目の2022年が146、2年目の2023年が156。3年目となる2024年は現時点で125が参加を表明しており、今後も増える見込みである。
 
実施期間についてはこれまで時期を区切っていたが、3年目は四季を通じてより幅広く積極的に発信するために2024年1月1日~12月31日の通年となった。このうち集中期間は、国連総会ハイレベルウィークが開かれる9月1日から、国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)閉幕の11月22日までである。

キャンペーン期間中、参加メディアは猛暑などの異常気象や人々の関心が気候危機に集まるタイミングを捉えながら、気候科学の情報、暮らしの工夫の提案や好事例などを発信していく。特に個人や組織、そして社会全体でのアクション・解決策を提示することで、より多くの人を巻き込みつつ具体的な行動を促進するような発信を目指す。同時に、自身の経営においても、気候変動対策を実践することを引き続き視野に入れていく。

一方、国連広報センターでは、気候科学者や気象予報士といった科学的知見と生活者をつなぐ人が参加メディアに接する機会をより増やしていくことで、メディアの取り組みを後押しするとともに、参加メディア間の連携や協働の機運を高める場づくりにも力を入れる。

「1.5℃の約束」の認知者は気候危機への意識が高くなる傾向があるものの、行動促進につながる情報発信が引き続き重要

1.5℃の約束が人々の意識と行動にどのようなインパクトを与えたかを検証することを目的としたインパクト調査も、2022年に引き続き実施された。

調査結果を踏まえて国連広報センターは「昨年に引き続き1.5℃の約束の重要性を認知した人は一定程度おり、そうした人の方が気候変動に対する危機感を持ち、自分が取れる具体的な気候変動対策を実施していたことがうかがえる」と評価した一方で「昨年よりも認知者の割合や具体的な行動を取った割合は微減しており、メディア間の連携を含めた多層的な情報発信の拡大の重要性が浮かび上がった」との課題も挙げた。

詳しい調査結果は、博報堂DYホールディングスのウェブページを参照いただきたい。


『D for Good!』を運営するインプレス・サステナブルラボが所属するインプレスホールディングスは2023年、同キャンペーンに初めて参加し、インプレスグループのデジタルメディア「Impress Watch」のシリーズ媒体の記事を再構成したコーナーを展開している。2024年も引き続き、同キャンベーンに積極的に取り組む予定だ。


文:佐々木 三奈
フリーランスライター/校正者、がん患者・経験者の運動を支援する「まめっつ」メンバー。『SDGs白書』『インターネット白書』の編集にも参加。

+++

インプレスホールディングスの研究組織であるインプレス・サステナブルラボでは「D for Good!」や「インターネット白書ARCHIVES」の共同運営のほか、年鑑書籍『SDGs白書』と『インターネット白書』の企画編集を行っています。どちらも紙書籍と電子書籍にて好評発売中です。