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無印良品の家で「インフラゼロでも暮らせる家」の実証実験スタート――2024年以降の実用化を目指す

無印良品を展開する良品計画グループのMUJI HOUSEは、無印良品の家における実証実験「インフラゼロでも暮らせる家」を3月から開始する。「ゼロ・プロジェクト」と称し、電気や水道など生活インフラが整わない場所でも暮らすことのできる移動式住宅の実用化を目指して行われる。

燃費や環境負荷を考えた家づくり

“永くつかえる、変えられる”をコンセプトに住空間に関する事業を行うMUJI HOUSEは、2003年から「無印良品の家」を展開しており、これまで3000棟が建てられている(※)。無印良品の家では“建築費だけではなく「燃費(光熱費)」や「環境負荷」までを考えた家づくりがあたりまえの社会を目指す”とした取り組みをこれまでも行ってきた。

既存ライフラインに依存しない移動式住宅 (出所:MUJI HOUSE)

例えば2011年に開始された「全棟温熱シミュレーション」は、室温維持に必要なエネルギー量を計算し、実際にかかる電力消費量や節約効果を図るというものだ。コンピューターによる温熱シミュレーションプログラムを使用し、数値で「温熱性能」を確認しながら、地域気象や敷地の特性を生かしたプランを検討できるという。また、環境配慮を目的とした「ダブル断熱+トリプルガラスサッシの標準仕様化」にも2015年から取り組んでいる。

MUJI HOUSEはゼロ・プロジェクトにおいて、これまでの知見や技術も反映しながらインフラゼロでも暮らせる家の実用化とともに、住宅のLCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)化を進めていきたいとしている。

インフラゼロでも暮らせる家とは?

ゼロ・プロジェクトでは、インフラ、カーボン、リビングコスト、災害リスクの4つの「ゼロ」を目標としている。

―「ゼロ・プロジェクト」のコンセプト―
1.インフラ・ゼロ
エネルギーや水を自ら生成する仕組みをつくることで既存インフラに頼らない家に
2.カーボン・ゼロ
太陽光発電や廃棄物発電などの再生可能エネルギーを活用することで、温室効果ガスの排出を実質ゼロに
3.リビングコスト・ゼロ
取得したエネルギーの効率的な利用、廃棄・排泄物の処理コストをかけないことにより、生活に必要なエネルギーコストを実質ゼロに
4.災害リスクゼロ
生活インフラの自給自足とどこにでも移動ができる機能を備えることで、自然災害のリスクを回避

(出所:MUJI HOUSE)

これらコンセプトの実現に向けて、プロトタイプ開発にはU3イノベーションズとモノクロームの参画が予定されている。

U3イノベーションズは、社会インフラ領域のイノベーション推進と新産業創出を目指して2018年に設立された合同会社で、プロジェクトでは、自律分散型水処理システム、蓄電池、バイオトイレの領域での連携を予定している。

自律分散型水処理システム (出所:U3イノベーションズ)
蓄電池 (出所:U3イノベーションズ)

モノクロームは、同社開発の壁と屋根の一体型太陽光パネル「Roof-1」の技術提供を行う。Roof-1は、特殊加工により太陽光発電モジュール全体の色を黒色とし、黒色の金属屋根と一体化させた屋根材で、3月中には一般販売が予定されている。

(出所:モノクローム)
(出所:モノクローム)

企業連携による技術検証をしながらのプロトタイプ開発を行った後、12月には実際の生活者を募集して検証を行う予定となっている。MUJI HOUSEは、2024年以降の実用化を目指すとしている。

エネルギー課題や自然災害のリスク回避などの社会課題と向き合う家づくりへの今回の取り組みは、企業コラボにより各社の技術を活用することで実用化もそう遠くない月日で見込まれている。今後の展開が楽しみである。

文:遠竹智寿子
フリーランスライター/インプレス・サステナブルラボ 研究員

トップ画像:MUJI HOUSE
編集:タテグミ

https://www.muji.net/ie/interview/

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