学振DC1は誰でもとれる

このノートを読んでいる人は当然、学振DC1とは何かを知っている。そういう前提で話を進めていくので、学振とは、DC1とはという話はここではしない。想定する読者は博士課程進学を考えている学部4年から修士1年あたりである。M2になってからでは少し遅いアドバイスもある。以上のことを踏まえた上で読み進めて欲しい。

・タイトルの意図
・私はどんな学生だったか
・審査を受けるのはあなたではなく書類
・上位2割に食い込む書類を作れ

1. タイトルの意図

あなたの周りの大学院生で、こんなことを言う人はいないだろうか?
「学振は優秀な人が取るものだから、私なんか通らないし出すだけ無駄だよ」
本当のところ、そう思う人には言わせておけばいいしそれで生きていけるなら勝手にしてもらうのが宜しいのだが、まだ未来と可能性のあるあなたがたが騙されてそう思い込んでしまうのはあまり気分のいいものではない。実際のところ、学振DC1で求められる書類のレベルは高すぎるわけではないし、申請者の20%程度が通るという倍率も、あなたが将来研究者を目指しているのならむしろ非常に低い倍率ともいえる。1件の公募に数十人、場合によっては100人近くが応募してくることもある。同年代のたかが上位20%ぐらい、入ってやろうと思わなくてどうするのか
そして何より、上位20%に入る書類を作ることを意識していけば、別に才能があったり成績が極めて優秀だったりしなくても、学振DC1を取ることは可能なはずなのだ。

2. 私はどんな学生だったか

まず、成績優秀でなくても学振を取れる、という実例として私の話を少ししよう。あまり勉強が得意でなかった私は、旧帝大ではない大学に入った。卒業時の成績は、GPAで1.2を切っていた。その後大学院で所属を移るも、特にたくさん論文を書いたわけでもなく(M2の春になんとか1本間に合わせた)、なんとか学振の書類をギリギリで書き上げ、結果として面接ののち採用となった。このように、成績優秀でなくても、業績の鬼でなくても、東大京大でなくても、学振は取れるのである。

 3. 審査を受けるのはあなたではなく書類

では逆に、成績優秀で業績豊富な東大院生なら必ず学振を取れるのだろうか。そんなわけはない。誰でも取れる、というのは、誰でも採用されるレベルの書類を作れるということである。どんな優秀な人間も、採用されるレベルの書類を作らないと採用されないのだ。この考え方は、もしも落ちてしまったときにも重要である。学振を取れなくても、あなたの研究者としての能力が否定されたわけではない。ただ、他の人と比べて書類がイマイチだっただけであり、あの程度の書類であなた自身のことがわかるわけはないのだ。

4. 上位2割に食い込む書類を作れ

実際の書類の作り方、細かい注意点などは学振本を読みながら書けばだいたい間違えることはない。ここでは、もう少し大雑把、かつ具体的に何をすべきかを述べていきたい。

まず、1番大事なことのひとつは「なるべく多くの申請書を読むのがこと」だと考えている。

これが簡単なようで意外と難しい。自分の所属している研究室がそれなりに規模が大きく、博士を複数排出しているようであれば、歴代の先輩の申請書が見られるはずだ。東大や京大の有名研究室が有利に見える原因はこのような部分にあるかもしれない。
では、研究室に先輩の申請書がなかったらどうするか。
申請書を見せてくれる先輩を作ろう。
なにも自分の研究室にこだわる必要はない。同じ大学の近い分野の研究室でもいいし、他の大学を含めたら学振申請経験のある同じ分野の先輩は掃いて捨てるほどいるはずだ。そんな先輩をハントする場が学会の大会である。学会に参加して、近い分野の若い研究者には片っ端から話しかけよう。大した内容でなくても、自分が何をやっているかわかるような形で発表をしておいたほうが話すきっかけは作りやすい。また、名刺を用意していくのも忘れてはいけない。自分が名刺を持っていればスムーズに連絡先を交換できるので、あとはいいタイミングで申請書を見せてくれるようにメールするだけだ。
このようにして先輩から手に入れた申請書は、多くの場合採用された申請書である。理想的には、出したが通らなかった申請書もある程度読んでおきたい。申請書を読み続けていると、だんだんと通る申請書、通らない申請書の差がどこにあるかわかってくるからだ。そこを理解した上で自分の申請書に反映させる必要がある。これを解決する方法として、同期で申請を考えている人たち(進学を考えている人たち)と申請書を見せ合う、という手がある。初稿の段階では、だいたい全員の申請書が通らない申請書のレベルだからだ。なので、同期、特に進学しそうな同期とはできるだけ良好な関係を維持しよう

次に、できるだけ多くの人からコメントをもらうことも重要だ。実際の審査では、複数の分野にまたがる”書面審査セット”に割り振られる。それを6人の審査員が審査するわけだが、自分の分野とドンピシャで同じ審査員は期待値として1人以下だろう。つまり、大きく見たら同じ分野、ぐらいの専門性の人間が審査するのだ。自分と指導教員だけで書類を作り続けていると、どうしても前提条件を共有した上でわかる内容になりがち。自分の文章は粗があっても読みやすく感じてしまうのと同じだ。ここでもやはり、先輩や同期にも読んでもらう必要が出てくる。良好な人間関係、築いていきましょう

そして最後に、業績欄はできるだけ埋めよう。業績欄を埋めるといっても、めちゃくちゃに業績を出せとは言わない。ただ、小さなものでも、積極的に公表していくスタンスで行くべきだ。研究者のやり方としては賛否が分かれる部分かもしれない。しかし、”学振DC1攻略”の観点から言えば、一つでも多く積み上げてみせることが重要になってしまうのは事実だ。そこで、発表できそうな学会はできるだけ発表して、執筆できそうな機会があれば積極的に執筆していこう(これは奨学金の返還免除申請にも有効になる)。また、TAや、外部セミナーでの発表、ものによっては雇われ講師経験なども書ける。とにかく、業績欄がスカスカに見える(完全に見た目の話だが)だけで印象は下がってしまう。

まとめると、
・学会に出るなどして先輩の申請書や同期の申請書を集めて読もう
・先輩や同期にたくさん読んでもらおう
・業績欄を最低限埋まってるように見せよう
・人間関係って大事だよね
といったところだ。

結構長々書いてしまったが、読みやすくてわかりやすくて見栄えのいい申請書が書ければいいという話だ。審査員は何十人分もの申請書を忙しい合間を縫って読む。分かりづらかったり、業績を”なし”だけで終わらせていたりすると、審査員は安心して低評価の方に放り込んでくれるだろう。その逆をやれば、それが通る申請書なのだ。
最後に、長すぎて読めなかった人へ。
誰でもって書いたけどこれぐらい読めないやつは通らんわ。がんば。

#大学院 #研究 #学振  




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