マガジンのカバー画像

夜更けの思索宮

62
時には哲学を、古代ギリシャを、あるいは皮肉やのイタリアの彼氏のような、ちょっといつもの場所をはなれて遊ぶ
運営しているクリエイター

2020年8月の記事一覧

『地中海世界』フェルナン・ブローデル編 - 前半

 地中海世界は、従来の土着文化が、自由、人間性、理性、論理性の人間謳歌のヘレニズム(古代ギリシャ)、ヘレニズムに触発されて統制、組織化されたヘブライズム(ユダヤ・キリスト教)によって彩られたモザイク。今回は、前半のまとめとしてその変化の流れをみていこう。 陸地:「節制」を運命付けられた土地 地中海世界の成り立ちは、厳しい自然とともにあった。南にアフリカの砂漠、西に大西洋の雨に囲まれたこの領域は、消して恵まれた環境ではなかった。地中海は、移動手段がなければ、ただの障害物。浅瀬

『地中海世界』フェルナン・ブローデル編 - 空間

 前編の最後は、ブローデルの弟子エマールの『空間』。彼は、空間の中に社会的関係を空間化した『町』と、その対比である『田舎』について語る。 人の関係を表した町と人を拒絶する田舎 痩せた土と石が広がる田舎には人影がなく、そこを訪ずれるのは、遊牧者のみ。一方、町は、利害関係者の関係によって同心円の階層状に広がり人が住む。また、町の周りに広がる田園は、町によって創られるという。田園は町の人々の食を満たすために存在し、それが十分であれば自らは増殖しない。田舎と町の境界には、森と畑が広