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アイデアを ひらめき・つくり・つたえるワークショップ「PROTOTYPING CLASS」開催レポート

D2C IDでは、さまざまなプラットフォーム、さまざまな創作ジャンルで優れた作品を生み出し、新たな挑戦をし続けるクリエイターを支援する「インテル® Blue Carpet Project」にパートナー企業として参加しています。今回はその活動の一環としてIMG SRC STUDIOのメンバーが講師となり行われたワークショップ「PROTOTYPING CLASS」 をご紹介します。2023年9月13日、14日、27日の全3回に渡ってワークショップが行われ、最終日には、約2週間に渡って制作したプロトタイプの最終発表会が行われました。この記事では、その様子をレポートします。


ワークショップ「PROTOTYPING CLASS」とは?


「PROTOTYPING CLASS」は、新しいアイデアを ひらめき・つくり・つたえるための考え方と、クリエイティブとテクノロジーを使ってプロトタイピングするスキルを身につけるワークショップ。日常にあるテーマを題材にアイデアを出し合い、話し合い、実際に手を動かし、自分たちのアイデアを形にする体験を通じて、デジタルコンテンツ作成のプロセスとその背後にある考え方を、深く理解できることを目的として開催、今回は専門学校生・大学生が参加されました。

1日目(9月13日)は “アイディエーション”。日常をテーマにしたデジタルコンテンツの講義と事例紹介をした後、アイデアを出し合い、話し合い、プロトタイピングするコンテンツを決定し、設計に向けた足掛かりを築きました。

2日目(9月14日)は “設計とプロトタイピング”。Windows PCやセンサーデバイス、TouchDesignerなどのプロトタイピングツールやデザインツールを使いながら実際に手を動かして作品をつくっていきました。

そして最終日の3日目(9月27日)は、制作したプロトタイプの最終発表会です。

講師を担当したのは、テクニカルディレクターの田中誠也とデザインエンジニアの増本慶。進行とファシリテーションをディレクターの菅野悟史が担当しました。3名共に、D2C IDの体験創造ユニット・IMG SRC STUDIOに所属する、実案件から個人活動まで経験豊富なクリエイターです。

IMG SRC STUDIO ディレクター 菅野悟史

また本ワークショップは、インテル社がクリエイターを支援する「インテルBlue Carpet Project」の一環として開催されています。このプロジェクトの詳細は記事後半や別記事でもご紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

会話が途切れたときに話題を自動で提供してくれるプロトタイプ『天の声』

ここからは、参加された学生さんたちが制作した、各プロトタイプの紹介をさせていただきます。

『天の声』は、会話が途切れたときに話題を自動で提供してくれるプロトタイプ。
骨格推定を用いてカメラ内に映る人数を把握し、人数が2人以上である場合にシステムが作動、会話が8秒間途切れると機械音声で話題が提供されるという仕組みです。

「最近、嬉しかったことはありますか?」「最近読んだ本はありますか?」「最近おいしかったごはんはなんですか?」といった話題が、前記の設計通りにデモンストレーションされました。

今後の展望としては、「仲良くなれる箱」と題したインスタレーションへの展開例が語られました。

制作者は、初めてOSCを使用した制作を行ったとのことで、その仕組みを知るところからスタートしたことが大きなチャレンジだったと語りました。講師の田中からは、コミュニケーションを活性化させるアプローチとして、質問がパーソナライズ化されたらより需要があるのではとアドバイスがありました。また、今回のワークショップにご協力いただいたインテル株式会社技術本部の安生さんからは、OpenVINOなどAIを用いて声色からの音声感情分析や、会話から次の話題を推論/提供するといったような、会話の内容をキャッチしながらファシリテーションしていくようなものに進歩できれば興味深いのではと語られました。

IMG SRC STUDIOテクニカルディレクター 田中誠也
D2C IDではテクニカルディレクターとしてデジタルコンテンツの制作を担当。アプリケーション、インスタレーション、WEBなどの開発を行なっている。機械学習や深層学習のフレームワークを使ったエンジニアリングを得意とし、顔解析、顔置き換え、感情解析、ボディトラッキング、言語解析、言語生成などを行なうアプリケーションの制作を行う。

升に日本酒の商品情報が表示されるARプロトタイプ『Miemasu 〜Japanese Sake〜』




次に発表されたのは、升に日本酒の商品情報が表示されるARプロトタイプ『Miemasu 〜Japanese Sake〜』です。
ARで升へ日本酒の情報表示することで、日本酒の情報の見える化を図りました。日本酒のラベルをARマーカーとしてスマホカメラをかざすと、ブラウザが起動し、日本酒が注がれた升にさまざまな情報が描出され、飲酒と共に楽しむことができます。



今回のデモンストレーションでは、原料米や酒蔵の映像とともに、「特定名称酒」「原料米」「精米歩合」「日本酒度」といった情報が流れ、「生産地」に関してはGoogleマップで日本地図から生産地の位置情報をズームしていくマップズームエフェクト映像が流れました。

今回は日本酒に合わせて制作をおこないましたが、酒類以外の飲料等その他の商品にも応用ができるため、プロモーション手法と応用していきたいこと、また今回初めてUnityに触れたため、アイディエーション時に考えていた、お酒が注がれる液体の表現や音も加え臨場感を楽しむといった表現/デザインに、今後挑戦していきたい旨が語られました。

コロナ禍を経て、自宅で楽しめるような商品やプロモーションの領域が期待されているため、ARパッケージとしての展開も可能性があると、講師の田中はコメント。インテル株式会社の安生さんからは、居酒屋など店舗での展開の際には、充電付きスマホスタンドを使用したり、デバイスを虫眼鏡型のものにするなど、ユーザーフレンドリーかつ体験時の所作にも気を配ることで、価値ある体験設計ができるのではとの意見がありました。日本酒は海外の注目度も高いので、今後の展開に期待が寄せられました。

目の不自由な方でも楽しめる花火のプロトタイプ『体験型花火プログラム(仮称)』

日本の祭りにフォーカスしてさまざまなアイデアを考えていた制作者が、最初に思い浮かんだのが今回のテーマとした「花火」でした。誰でも楽しめるようにとの思いから、視覚障害者など目の不自由な方でも楽しめるよう、温度をきっかけとして、振動と映像とで花火を感じられるような体験ができればと考えたプロトタイプが、『体験型花火プログラム』です。

マイコンボードArduinoとプログラミング言語Pythonを接続し実現しており、仕組みとしては、Arduinoで温度を受け取り、温度が30度を超えた場合、ディスプレイに花火を模した画像をPythonで描画、同時にデバイスが振動する仕組みになっています。

発表会では、それらのデモンストレーションがおこなわれ、今後の展望としては、火薬の香りを噴射してより花火らしくする、花火の爆発音を追加してリアル感を出す、といった具体的な内容が語られました。

制作者の展望や意欲に対して講師の田中は、香りとの連携など五感に訴える体験を実現しようと取り組む制作者にエールを贈りました。

IMG SRC STUDIOデザインエンジニア 増本慶
1996年東京生まれ。ものや概念に根ざす価値の再翻訳を目指し、それらがより多くの人と寄り添える様にすることを目的として活動している。建築・アルゴリズムミックデザイン・コンピューテーショナルアートをバックボーンとし、広義の意味でのハードの設計から機械制御、ソフトウェア開発、ビジュアライゼーションを用いた作品の制作を、D2C IDにてデザインエンジニアとして所属しながら、complementとして個人でも行っている。

御守り型の育てるARプロトタイプ『みにつくもの神様』

最後にプレゼンテーションがあったのは、御守り型のAR『みにつくもの神様』というプロトタイプです。
小学校の6年間、ランドセルのカバンに付けて共に登下校することによって、御守りの中の精霊を卵から育てた、卒業時にARで表示できるというもの。ランドセルを大切に使った子のもとに現れる、小さなつくも神(付喪神:年月を経て物に宿った神や精霊のこと)の存在によって、ランドセルを大切に扱いながら、一生に一度の期間を大切に過ごしてほしいとの制作者の思いが背景にありました。



企画段階では、御守りの運動変化(振動や傾きや衝撃等)の検知ができる加速度センサーや傾斜スイッチを用い、精霊の成長に影響を与える仕組みになっていました。デモンストレーションでは御守りを認識しAR演出がされる映像を披露しました。

大学卒業までの数ヶ月で制作を続けたいと語る制作者は、在学している大学のゼミでも意見交換をおこなったそうで、制作を続けていくにあたり生じた迷いについても話してくれました。講師の増本は、アートの世界で近年提唱されているスペキュラティブ・デザインに触れながら、今後の活動を後押し。インテル株式会社の安生さんからは、6年もの期間をしっかり愛着もって育てていけるよう、パーソナライズとサプライズがキーになってくるのではとの助言がありました。

まとめ

今回ご参加いただいたのは、美術や工学を専攻する20歳前後の学生クリエイター。多少のプログラミング経験や、ものづくりをしたことがある方々でしたが、このワークショップを機会に、はじめてのソフトウェア/ハードウェアに触るなどの挑戦をしながらこの2週間、それぞれのプロトタイプ制作に向き合っていました。参加を通して「表現の幅が広がった」「新たな知識/技術を身につけることができた」といった意見が聞かれ、大変有意義なワークショップとなったようです。今後も、メディアアートやクリエイティブに興味がある学生に対してサポートしていければと思います。

インテルBlue Carpet Projectのご紹介

先日公開したnote記事「弊社のテクニカルディレクターがOpenVINO™️を使ってみた話(https://note.com/d2cid_inc/n/n325b12e1de97)」でも、田中からご紹介させていただいていますが、D2C IDは、クリエイター支援プロジェクト「インテルBlue Carpet Project」のパートナー企業として、提供いただいたインテル社製の高性能PC を使用したプロトタイプ制作(自社R&D)や、ワークショップの開催(今回の例や、昨年の文化庁メディア芸術祭におけるAIを活用したAR制作等)などに取り組ませていただいております。

CX=顧客体験創造を得意とするIMG SRC STUDIOおよびD2C IDでは、今後も共同制作やR&D活動のサポート等でお役に立てると思っておりますので、ぜひお気軽にお声がけください。SNSでも活動を発信していますので、ぜひフォローお願いします。

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