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北方謙三

新しい歴史小説家が、なかなか生まれない。

そんな中で、地道に新境地を、
切り拓き続けてきた作家がいる。

ハード・ボイルドの旗手、北方謙三である。

1990年代から本格的に歴史小説を書いているが、
なかなか売れてはいなかったのではないか。

2005年に幻冬舎文庫の「黒竜の柩」を読んだ。
土方歳三が主人公だ。

同じ土方歳三の作品なら、浅田次郎が書いた、
2007年の文春文庫「輪違屋糸里」のほうが、
僕には面白かったと思っている。

ところが、意外なところにファンがいた。
96年から書いた「三国志」だ。
全13巻の大作で手応えを掴み、
2000年から「水滸伝」全19巻で飛躍した。

以降、一貫して中国史を書いているが、
新たなヒット作が生まれたわけではない。

そもそも彼はもう、
ヒットを望んでさえいないと思われた。

また、ところが、である。

2018年から書き始めた新たなシリーズは、
モンゴル史「チンギス紀」だった。

70歳を超えて、大ヒット作の誕生だ。

僕に文学を教えてきた85歳を超える父親が、
熱心に読み耽る姿に瞠目した。

「チンギス紀」はまだ文庫になっていない。

僕はまず「三国志」を読んだ。
全13巻をあっという間に読んでしまった。

正史に基づくと言われているのに、
演義に近いと思えたのが残念だったが、
ハード・ボイルドな筆致は楽しめた。

確かに日本史には、
向かないかもしれない、とも思う。

いやはや、父親にも驚くが、
北方謙三、恐るべしだった。

「チンギス紀」の文庫化を、楽しみにしている。

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