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第三章

1月、いよいよ本格的に合奏練習が始まる。
指揮者からキツく言われたのは、強弱の次にリズムだ。駆け出しの僕からすれば、第3楽章から第4楽章が、早くてオロオロするところが多いのだが、第1楽章のリズムは、プロでも難しいのだとか。3拍子がどうしても2拍子になりやすい。メトロノームを使って毎日練習を、と言われても。
ただ第7番をよく聴いてきたからこそ、指揮者の言ってることがわかる。それだけでも、相当なアドバンテージだ。できるできないの前に何をすべきか、そのありたき姿がわかるだけでも、恵まれていた。個人レッスンの先生も、同じようなことを最初に言ってくれている。
この第7番に限ったことではなく、第1楽章は観客の心を掴むためにも重要だと言われ続けた。たしかに、僕はまだ観客の気持ちがわかる。とにかく第7番の第1楽章は、その推進力を生むリズムがすべてだと教わった。
ベト7、第1楽章を聴けば聴くほど好きになった。それまでは第2楽章と第4楽章が好きだったが、第1楽章、特にこの長い序章に込められたベートーヴェンの思い。その思いをどれだけ表現できるのか、興奮と不安が錯綜する。この挑戦はまだ、始まったばかりだ。

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