"聴覚優位の夫"と"視覚優位の妻"の語学勉強法の違い
私たち夫婦は、どちらも言語学専攻出身です。先日、夫と話をしていて、お互いの語学の勉強方法や暗記方法の違いがわかって面白かったので、備忘録として残しておきたいと思います。
まず、簡単に私たちの自己紹介を。
私たちが出会ったのは、大学の民族舞踊サークルでした。卒業して10年以上経った今でも、一緒に民族舞踊のパーティへ行って踊ったり、語学の知識や合唱経験を活かして各国の民謡を歌ったりしています。
【夫】
言語学者。専門は認知言語学・アイヌ語。
ネイティブと間違えられるほど英語の発音が上手い。アメリカ英語・イギリス英語を発音し分けることもできる。
めちゃくちゃ耳がいい(=聴覚優位)。モノマネが上手い。
大学では民族舞踊サークルとグリークラブ(男声合唱)を兼部。
先天的に視力が低い(ビジュアルスノウ、斜視、乱視、近視)。このことが由来して聴覚優位になったのか?
語学歴:フランス語、アイヌ語、スペイン語、クルド語 etc.
【妻(私)】
大学・大学院(修士)で言語学を専攻。専門はポーランド語。
編集者・校正者。細かい文字の間違いに気づいたり、わかりやすい図解を作るのが得意(=視覚優位)。小学生の時、通信簿に印字された小さい「教」の字が「敦」という誤字になっていたのを見つけて、先生に驚かれたことがある。
小学校から高校まで、地元の合唱団に所属。ヨーロッパ各国や中国などいろんな国の歌や、日本の民謡を歌っていた。
語学歴:ドイツ語、ポーランド語、ロシア語、ブルガリア語、ハンガリー語、スワヒリ語 etc.
新しい言語を学ぶとき、まず何をする?
夫:会話の音声を聴く。YouTubeで初学者向けの会話レクチャー動画を何度も見てフレーズで覚える。その後で、覚えたフレーズを分析しながら文法を覚えていく。
妻:文法書を読み、文字と発音の対応や文法を覚える。簡単な挨拶や会話文を、発音しながらノートに書き写し、文法的に分析する。
発音の練習方法は?
夫:音声を聞いて真似をする。その後で、綴りや音声記号を確認し、自分の覚えた発音と合っているかを確かめる。そのうえで、音声記号通りではなく、聞いた音(リアルな発音)に近づけるように自分で調整する。
妻:音声を聞いても真似ができないので、音声記号を確認し、舌の位置など物理的にどうやって音を出すのかをまず理解してから練習する。
単語の覚え方は?
夫:綴りと発音を対応させてインプットする。正確に発音できるようになったら「覚えた」ことにする(綴りは曖昧な場合もある)。
妻:綴りと発音を対応させてインプットするのは夫と同じ。ただ、綴りがわからないと覚えられない。綴りを覚えられたら「覚えた」ことにする(発音は間違っている場合もある)。ちなみに、私は外国語だけでなく日本の名前であっても、文字で確認しないとなかなか覚えられない。
番外編:曲(楽譜)の覚え方など
夫:曲全体をまず聞いて、印象をインプットする。次に楽譜を見て、聞いたときの印象と合っているかを確認し、最初のインプットがずれていた部分を修正する。また、初めて聞く曲も、すぐに真似して歌える。
妻:楽譜がなければ覚えられない。覚える場合は、楽譜自体を視覚的にインプットする。そらで歌っている途中で続きを忘れても、「今は楽譜の○ページ目の何段目だから、次はこうだった」と視覚情報を思い出すことでリカバリーできる。初見の曲は、楽譜があれば歌えるが、楽譜がなければなかなか覚えられないし、音を間違えまくる。
最後に
ここまでお読みいただきありがとうございます。
みなさんは、夫と私のどちらのタイプに近いですか?あるいは、両方の要素があるか、どちらともまったく異なるタイプですか?
こうやって人と話をしていると、自分にとっての当たり前が他の人にとってはそうではないことが分かって、非常に興味深いです。私は教材編集の仕事をしていますが、自分にとってやりやすい勉強法が「誰にとっても良い方法だ」と思いこむのは危険だと改めて実感しました。
人によって、認知特性もさまざま。そして、認知特性によって学び方も変わります。この記事が、あなたに合った勉強法を考えたり、自分の「当たり前」を見直したりするきっかけになれば嬉しいです。
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