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父の手書きの「退会届」

「これをパソコンで
 打ってくれないか?」

父が私に
1枚の紙を
差し出しました

何かな?と見ると
手書きの『退会届』

このような書き出しで
始まっています

「私は、35年間在籍した
 ライオンズクラブを
 退会することに致しました」

父が50歳の時に
入会した
ライオンズクラブ

土日になると
ボランティア活動や
イベント手伝いへと出掛け

夏には
家族を交えた
遠足と題した小旅行や

12月には
家族も参加の
クリスマス会など

私たち家族も
お世話になり
色々な思い出のある
ライオンズクラブ

クラブの会長職はじめ
地区のクラブを
取りまとめる役も務めた父

85歳を迎え
コロナ禍もあり
最近は月例会の参加も
見送っていた

クラブ内でも
最年長
在籍も最長クラス

数年前から
考え始めていたようですが
思い入れが
深かったのでしょう

踏ん切りが付かずに
そのまま在籍していました

父の字で
クラブへの感謝と
メンバーへの気遣いが
書かれた退会届

「このまま手書きで
 提出した方が
 いいんじゃない?」

私はそう言いましたが
パソコン打ちに
こだわる父

家業でも
書類の大部分は
手書きですが

正式な文書や
かしこまった文書の時は

パソコン打ちを
これまでも
父は希望してきました

きっと最後に
父なりにビシッと
したかったのでしょう

出来上がった
退会届を手渡すと

「じゃあ、この手書きの
 退会届はもう不要だな」

そう言って
ビリビリに破いた父

私と母は
35年間の功績として
飾っておけば良いと

口を揃えて
止めたのですが

父はあっという間に
捨ててしまった

その後
クラブの活動写真を
ゆっくりと一枚一枚
いつまでも眺めていました

写真を眺めている
父の背中からは

退会した淋しさが
にじみ出ていました

35年間の
地域貢献活動
本当にお疲れ様でした

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