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【4/3】本当の事情は、往々にして言いにくい(ゆえに知られない)

今週、1回も電車に乗らなかった。土日も乗る予定はない。来週も乗らないだろう。もともとアクティブなほうではないけど、さすがにこんなことは、通勤通学で電車を使うようになった高校生以来、初めてかも。多くの人が思っていることだろうけど、まさか自分が、歴史に残るような世界規模の危機を経験することになるなんてな。今日のことは、今月のことは、後世にどんなふうに語り継がれていくんだろう。さまざまな学者がアフター・コロナの世界について語っている文章を読んだけれど、「おおっ〜!」と感嘆するところがまったくないわけではないにしても、なんだかどれも宙ぶらりんに見える。もちろんそれは学者たちの力不足というわけではなく、私や世の中の温度感とか、まあいろいろな要因が絡み合ってそうなのだろう。

このところ、いつにも増してSNS(というか、まあTwitter)は殺伐としている。

私も、せめておうちにいる人が楽しく過ごせるようにと、Amazonプライムで見られるおすすめの映画を紹介したり、「読書楽しいよ〜」のポーズをとったりしてみているが、そしてそれはこれからも続けるつもりだが、当然ながら、今、それどころじゃない人がいるのはわかっている。外出せざるを得ない仕事に就いている人がいること、収入に深刻な打撃をくらっている人がいることは、わかっている。おうちで楽しく過ごすことは責められるようなことではないとはいえ、私のSNSを見て嫌な気分になる人もいるかもな〜くらいのことは、想像できる。一応補足しておくと、Twitterで意地悪なリプライやリツイートをされたわけではない。そんなことをされなくても、「嫌な気分になる人がいるかも」くらいのことは、想像がつく。私は、そういう人たちのことを無視しているわけではない。誰に弁明しているわけでもなくて、これは、自分に言い聞かせているんだけど。

殺伐としたSNSのなかで、いつも以上に「人それぞれに事情がある」ということを、思い知らされる。

「非常時になって買い溜めをするな、平時から備蓄しておけ」という人。「それはあんたが独身男性だから言えることでしょ、4人家族の我が家にそんな大量の食料品を備蓄できるスペースはない、そんなんだから独身なんだよ」という人。「首都封鎖を目前にして地方にもどるやつは北部イタリアの状況を見てなかったのか」と批判する人。「仕事も収入もない誰にも頼れないこの状況で実家を頼るしか選択肢がない人だっている」と反論する人。

指摘や批判はごもっともだが、それをできない人もいることは、ちょっと考えてみればわかることでもある。

ありえない! と思うような選択をした人がいたとして、その人は必ずしも倫理観が欠如していたり、思慮が足りなかったりするわけではない。指摘や批判をする際に覚えておきたいことだし、反論するほうもするほうで、気をつけないといけないことだ。「そんなんだから独身なんだよ」という4人家族のお母さんのツイートは、私は独身なので、自分に言われたことではないとはいえ、けっこう傷ついてしまった。

まあ、非常時だから浮き彫りになっている(ように私には見える)けど、本当は、平時だってそうなんだよな。

たとえば、私は33歳にして結婚をしていなくて、この先する予定もなく、生涯独身の意志をわりと固めている。それには私なりの言いにくい事情がたくさんあって、いろいろ考えた末にそうならざるを得ないだろうなと思って決めたことなんだけど、「いい人いるって」「頑固なんだなあ」「理想が高いんだよ」「気が利かないから」「雰囲気が固いから、隙を作ったほうがいいよ」などの指摘やら批判やらを、数えきれないくらい受けた。たいていは「そうですよねえ〜」とか言って流してしまうけど、マジのマジで頭に来たときは、"本当の事情"をストレートに言った。相手は、言葉を失って青ざめた。

まあだから、そういうのってよくあることなのだ。平時でも、非常時でも。わかっていたことだからいちいち落ち込んでいないけど、浮き彫りになった(ように私には見える)今だからこそ、「人それぞれに事情があるんだから、相手の言動や生き方に軽々しく口を出してはいけないよ」ってことに、気づく人がいるといいなあ。気づく人がいるといいなあってか、私自身がまず身を引き締めなければいけない。こういうのは、緩むとすぐにだめになるんだ。人それぞれに事情があり、本当の事情は本当であるがゆえに言いにくく、ゆえにあまり知られることはなく、でもそれは存在しないわけではない。目には見えない無数の事情で、人間は動いている。物事を表面的に解釈してはいけない。

家にこもりっきりなこと自体は、私自身は幸いにして、外出自粛にダメージを食らう職種ではないし孤独耐性がハンパなくあり多趣味なので、なんともない。でも、そんな私でさえ、精神力、倫理観、人としての賢明さ、体力、すべてが問われている気がする。

残念ながら、これは長期戦だ。最後に、未練がましいことをいうと、もしも中止せずに旅行に行っていたら、今日はポーランドのクラクフを散策しており、明日はアウシュヴィッツ博物館に行く予定であった。


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