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【金沢旅行記:前編】サウナとアートはどちらがより「美」に効くか

大昔ーーと、いうのは私が大学院生だった時代の話なのだけど、現代美術の授業で、キュレーターの長谷川祐子さんの著書である『女の子のための現代アート入門 MOTコレクションを中心に』を読まされたことがあった。

大学院生にしてはずいぶんユルい本を読んでるなと思った人もいるかもしれないが、授業を担当していた先生はとても強いフェミニストの思想の人で、この本もどちらかというと(いや、どちらかといわなくても)批判的な文脈で紹介された。まず、「女の子のための」と銘打った上での、このドピンクの表紙はなんなのか。著者は「美術館は感性のエステサロン」と言っているが、女の子は、「感性を磨く」「美しくなる」「モテる」「愛される」みたいな目的の中でしか、アートを理解できないのか。そんなはずないだろう。

先生の批判は当時も「ごもっとも」だと思っていたし今も「ごもっとも」と思っているが、とはいえもう10年くらい前の話だし、当時は今の何十倍も「モテ」「愛され」という言葉がパワーを持っていた時代だったから、こういう本が生まれたこと自体はそれほど不思議ではない。

……という話は今回の旅行と関係あるようでないのだけど、今年の3月にバルト三国&ポーランド&チェコ行きをコロナの影響で断念してから早7ヶ月。自由に海外旅行ができる世界の復活を望みつつ、マグマのように滾る飛行機欲を満たすため、石川県と福井県を3泊4日で旅行してきた。

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昨年アルゼンチンに行く前、早く行きたすぎて1週間前から成田空港の動画をYouTubeで繰り返し見ていたという珍エピソードの持ち主である私だが、旅行自体はもちろん、飛行機に乗るのと空港がとにかく好きなのだ。もしも未来でどこでもドアみたいなものが開発されたとして、それは私からすれば興醒め以外の何者でもない。ここではないどこかに行くのだ! というあの瞬間が好きなのに。欲をいえば、国内線のところにも免税店をおいてほしい(免税とは?)。

金沢21世紀美術館のレアンドロ・エルリッヒ

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