【5/19】恐ろしく、薄ら寒く、心地よくー『猫を棄てる』感想
高校生だった一時期、私の記憶違いでなければ、友人たちとのごくごく狭いコミュニティの中で、それぞれの家の「家紋」を教え合う……というのが流行った。もちろん、一時期というのはほんの短い間、1週間とかそこらである。ただ、友人たちが自分の家の家紋を「うちはこんなふう」「うちはこんな」と誇らしげに教えてくれるのに反して私は、そのブームのあいだ黙りこくり、自分の家の家紋を教えることは決してなかった。だいいちうちの家紋なんて知らなかったし、また親に「うちの家紋ってどんな?」と聞くことは、な