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日本人の主食としてのクルマ<E13ノート(e-power)>


昨今急速な電動化が進んでおり、初期の頃はプリウスやインサイトといった専用車がハイブリッドの顔として町中を走り回っていた時代から今やコンパクトカーや軽自動車すらハイブリッドを名乗る時代である。E13ノートも例外ではない。初代から正直パッとしない車だったが現行型から”現代っ子“としての思い切った変化を与えてより電動色の強い方向に舵を切ったように思う。


アライアンスを活かした合理的かつ上質な作り

e13ノートの心臓部、HR12DEとEM47で構成されている。

まず現行型のノートe-powerは”現代っ子”。つまり、近年ますます進む電動化の波に乗ったモデルである。先代に引き続きe-POWERが設定されたのはもちろん、なんとe-POWER専用車としてデビューしたのである。プラットフォームも刷新され、ルノー・クリオ(ルーテシア)やキャプチャーと同様のものが採用された。それにとどまらずシートリマインダーや車線逸脱警報音など情報提示音もバンダイナムコ研究所と共同開発といった具合で、上質さの演出においてはかなりの気合の入りようだ。実際にドアを開け閉めしただけでも、車体の剛性の高さや閉まり方の2つだけで先代モデルから飛躍的な進化を感じるほどだ。もちろん共通プラットフォームゆえ、左ハンドル前提の弊害の最たる例であるヒューズボックスのせいでグローブボックスが上着のポケット程度まで縮小してしまっていることが挙げられる。だがそんなものは大した問題ではなく、走らせずみているだけでも先進性と上質感が高次元に両立されているように感じる。またノートオーラとの差別化も上下関係を損なわない程度にうまくまとめられているのではないか。なんというべきか、「全体的に欠点のない、バランスの良い車」という印象である。

グレーのホイールキャップとグロスブラックのグリルによりなんとなく引き締まった印象を与えられる
どことなくSUVのトレンドを含んでるようなバンパー構造だ

嫌味のないフラットでパンのような乗り味

走り始めて真っ先に感じるのは、先代ほど尖ったキワモノ感が少ないことだ。先代比で出力が6%向上したと聞く割にはなんとも乗りやすい、万人に受け入れてもらえるような足回りやハンドルの動きも含め一言で言うなら落ち着いた走りである。また、静粛性も先代と比べても明確に向上している。5ナンバーのコンパクトカーとは思えない、2クラス以上も上の動的質感の高さだ。この静かさなら、上級車種からのダウンサイジングの枠の選択肢にもなり得るだろう。(私ならオーラを選択するが)そしてe-POWERは相変わらず力強くEVライクな乗り味は健在で、日常遣いには過剰すぎる速さを持ち合わせている。旧世代のノートではあからさまに車体が負けていたがE13では安心感を持って踏み込める足とシャシーの良さがあった。追い込んでいっても破綻することがなく、ハイペースにものんびりと流すのにも柔軟に対応できる足回りのセッティングである。六甲山や越前海岸の荒れた舗装路でもゆったりと走れる懐の深さはこのクラスのコンパクトの中でもかなりのものだ。e-pedalも10キロ未満では解除されクリープを産むようになった。個人的には完全停止のほうが遥かに魅力的だが、他車からの乗り換えやレンタカーやカーシェアで乗る分には扱いやすいのだろう。万人受けしやすい方向にシフトしたとも言える。毎日の足としても、朝食べるパンのように飽きず、付き合っていける仕上がりだ。

車における足としての本質

先述した通り上質かつ乗りやすく、しばらくは廃れないであろう程よい先進性もあって上質な移動をコンパクトな車体に求めるユーザーにはドンピシャな一台だし欠点も少ない。次世代のカローラのような車として認識しても問題ないと思う。
しかし、個人的な本音を言ってしまうのであれば「どこか味気なく楽しさと刺激に欠ける微妙な出来」といった印象である。ノートという車のキャラクターを考えれば、あまり尖った車にできないという背景もあるのだろう。しかし、先代のe-POWERはとても楽しかったのだ。あのクセの強さが走りの楽しさに直結していたように思う。アクセル一つにしてもちょっと強く踏み込むと急発進してしまうようなあの扱いにくさのある車を乗りこなす楽しさがあったのだ。それは身を潜め、今では乗りやすい車に変化してしまった。今思えばパワトレに対して車体が追いつかないあの乗り味は走り好きにウケる仕上がりだったのかもしれない。
それはさておき、ノートという車種のニーズを思えば正解なのだろう。毎日の足としての本質を極めたのがE13ということなのだろうか。

次世代の日産としての役割

E13は先述した通り、e-POWER専用車となり販売されている。このラインナップ構成にも「電動車の布石」や「上級感の演出」と言った目的があるのだろう。
日産としての電動車に対する立ち回りが如実にあらわれたモデルといっても過言ではない。そして「電動車だからできる立ち回り」を体現させたいわば市販されたコンセプトモデルのような存在に思う。
それも踏まえた上でもう少し運転の楽しさを体現したe-POWERモデルが出たらいいのになあとせっかくの電動車なのになんだかもったいなく感じてしまうのだ。
セレナのe-POWERモデルを所有してる身とすれば、e-POWERには未だ可能性があると感じている。しかし1.4のユニットになったセレナに乗って初めて感じた可能性の光だ。ノートのようなお手軽なモデルにも反映させていってほしいと心から願う。


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