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SUVの枠を超えた”なんちゃってSUV”<トヨタ C-HR>

私は車を運転することが好きだし、どんな車でも良さがあり食わず嫌いはするべきではないと考えがあるがどうしても受け入れられないジャンルの車両がある。それはシティ派SUVと呼ばれるものだ。SUVといえばここ10年で多種多様な車種が登場し、カローラやクラウン、センチュリーのような名高い歴史ある車種までSUV化して町中を走り回っている。
 もちろん人気が出るのには訳があり、視界の高さや実用性の高さ、あるいはデザインなど老若男女問わず今や大変な人気を誇る車種ジャンルなわけである。私自身もSUVというジャンルに関して言えば嫌いではないしむしろ大変気に入った車種も様々にある。しかしシティ派SUVの中には2WDのみの設定の車種や、最低地上高が画用紙一枚程度しかない車種、といった本来のSUVの姿とは程遠い悪路を走破することをはなから考えられていない車種が見受けられる。正直、重量増や高重心化、燃費の悪化などただ見た目だけの中途半端な車になってしまい今までの経験上乗っても楽しくない、愚鈍で分銅のように扱いづらい車種がほとんどで到底メリットがあるように思えないのだ。
しかしその価値観を持った私に考えを改めさせられる"なんちゃってSUV"があった。それがトヨタのc-hrだった。

自分の中にあるSUVの理想像という存在が揺らいだ。

いうまでもなく、c-hrは私がなんちゃってSUVアレルギーを起こす典型例だ。初めて出会ったc-hrはハイブリッドモデルで、2WDだった。(そもそもハイブリッドには4WDの設定が存在しない)友人との小旅行へ行くのに長距離であったため保険の関係上愛車を友人に運転させるわけにもいかず、また、3連休の初日だったということもありカーシェアを借りざるを得なくなったのだが
タイムズのカーシェアはこのc-hr以外空きなし。乗りたくないあまりに他社のカーシェアも検索したが案の定どこも空きなしで後に引けなくなってしまったのである。

記事を書くにあたって急遽撮影してきたc-hr 、かなり個性的なスタイリングをしている

地上高も見るからに低く2WDで、デザインだけのいかにも典型的な、なんちゃってSUVという状況に真っ先にアレルギー反応を示してしまった訳だが、ヒスを起こしそうになりながらなんとか走り出して数分で今までのなんちゃってSUVとは違う違和感を感じたのである。機敏ではないがSUVにしてはハンドルに対して正確かつフラットに気持ちよくカーブを曲がってくのである。乗り心地自体はゆったりとしており重心もこの手の車にしては低く後輪がドタバタと暴れることもない。ロールも車内の人間の快適性を損なわない程度に抑えられており箱根新道のようなワインディングや比叡山のような狭いカーブもスイスイと走り抜けていく。ハイブリッドでも十分気持ちよく曲がっていくが、ターボモデルの方がキビキビと曲がる印象を受けた。乗り心地も若干硬いのでこの辺りは好みの問題だろう。後方視界は慣れてもかなりひどい感じるレベルだし、後部座席も乗り込みづらく座りたいと思えないほどタイトで軽自動車以上に居心地が悪いが、メリットもデメリットも含めてSUVらしくないのである。

SUVとスポーツカーの中間点

走れば走るほどなんちゃってSUVアレルギーは身を潜めていき気づけばこの車を受け入れてしまっていた。SUVのはずなのにコーナーが楽しいどんどん曲がりたいとすら思わされるのだ。スポーツカーほど運転してて疲れることもなく、SUVのような無理をしてコーナーをふらふらと曲がる感触もない。スポーツSUVのようなジャンルも存在するがそれとも一味違うように思う。これだけの個性があるだけに、気持ちよく流している時にハイブリッド、ターボ共にパワー不足を感じてしまうのが大変残念である。特にターボ車はエンジンのトルクが細くある程度回さないと走ってくれなかった。どの領域でも慢性的な力不足を感じるのだ。MTであったこともありギアを下げてつい回してしまい、燃費も大幅に悪化してしまった。せめて1.5ターボくらいあればなあと思ってしまう。しかしながら、シャシーと足回りがしっかりしており癖がないクラッチの感触にさらにiMTが装備されているため初心者でも楽々運転することができるだろう。そこまでパワーがあるわけでもないので、練習に乗るのもヨシ回して遊ぶのもヨシ楽しみの幅は広いと言える。
一方のハイブリッドも、パワフルな加速をするわけではなく特に高速域で物足りなさを感じてしまった。箱根新道のようなワインディングでも加速時はかなり踏み込む必要がありハイブリッド特有の気持ち良い加速はできなかった。もっとパワーがほしいと感じる。こちらは意図的に回すことができないため少し退屈な印象を受けた。スポーティーに走りたいがスポーツカーほど速くない車を求めている人にはターボ車のMTがピッタリではないだろうか。

気持ちの良い走りと引き換えに使い勝手はイマイチ

小見出しに結論をそのまま書いてしまったが、言葉のまま、使い勝手は正直・・・といったところだ。リアドアはデザインを優先し隠されるデザインになっているのだが、とにかく扉が開けづらく、またクーペルックな形状も相まって後部座席の乗降性もよろしくない。ハッチも斜めになっておりトランクもさほど広くない。この辺りはスポーツカーライクな部分だ。
またSUVとしての使い勝手は壊滅的である。地上高の低さが災いし、舗装路だが大きな段差でアンダーカバーの一部をヒットさせてしまうことがあった。ちょっとした未舗装路も走行せざるを得なかったのだが、案の定凹凸を避ける走行ラインを取らざるを得ず、常に下回りを気にして運転する必要があった。少しでも積雪地や未舗装路、凹凸の多い道を走る可能性があるならカローラクロスやヤリスクロスのほうが安心して走ることができるだろう。

とにかく写真の通り後方視界が悪く車線変更がしづらい。まさしくスポーツクーペのようで非日常を味わえそうだが、実用性をある程度捨ててまで走りに振ったのにページを移動しないとドライブモードの切り替えができない。なぜ人間は同じ過ちを繰り返す生き物なのか理解に苦しんでいるがそれと同じくらい理解不能だ。走りながら切り替えることのほうが多いはずなのだから物理スイッチが最も扱いやすいはず。

なぜ設定画面にドライブモードセレクトを持ってきた??
ページをめくってる間に日が暮れそうだ


gモニターも装備されている。視覚的に走りも楽しめる要素だ。


総評 

ハイブリッドとターボをトータルで600kmほど走らせたが、結論から言えばc-hrは“なんちゃってSUV”である。

いや、

誰でも楽しく、SUVらしからぬ走りを味わえる”なんちゃってSUV“である。もはやSUVの愚鈍さはどこにも無い。

もう海外では二代目にバトンタッチしたそうだが、残念ながら日本には導入されないらしい。非常に残念だ。
2代目も初代と同様、エッジの聞いた個性派として多くの人を笑顔にする車であって欲しいと願う。

2代目c-hr

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