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文学タブー事情【2016年4月号第1特集】

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記事一覧

メフィスト賞からフリーゲームへ――「ノベライズ」という小説家の新たな稼ぎ方



『青鬼』(PHP研究所)

 こちらの記事ではウェブ小説という、小説そのものがウェブに存在しているジャンルについて解説してきた。一方で現在ウェブには、小説以外のエンタメコンテンツがあふれかえっている。動画や音楽、ゲームといったジャンルでは、ウェブからヒットコンテンツが生まれて定着し、各業界の従来のあり方を大きく変えるほどの影響力を持つ。そして、これらウェブ発のコンテンツ各種と小説は無縁ではない

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小説家になりたい人の近道に…? ベストセラーをザクザク発掘! この投稿サイトがスゴい!

――こちらの記事で言及された、ウェブ小説投稿サイト。ここから、新たなベストセラー小説が生まれるかも……!?

■もはやひとつのジャンルに成長した関西の雄
「小説家になろう」

[DATA]運営:株式会社ヒナプロジェクト 開設:2004年 月間PV数:9億5000万(14年12月時点)

現代表が学生時代に「ウェブ小説をたくさん読めるサイトが欲しい」と個人サイトを作成。アクセス数が増え続け、2010

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累計650万部のヒットも出る、希望の道筋か 「小説家になろう」CGMサービスが死に体の文芸業界を転覆させる

――「小説が売れない」と散々言われて久しい中にありながら、「小説家になろう」なる小説投稿サイトが人気を博している。投稿者数もPVも右肩上がり、商業出版、 アニメ化される作品が続出。“なろう系”というジャンルを指す言葉も誕生。この新たな潮流は小説界の救世主なのか、あるいは文芸出版の構造を覆すクロフネなのか?

多くの売れ筋ウェブ小説と異なり、装丁にイラストもなく、「ウェブ発」の色が薄めの『君の膵臓を

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海外ベストセラーの版権を狙え! 巨額が動く出版界のギャンブル 海外小説と版権エージェントの世界

――近年はそこまでヒット作に恵まれないものの、『ハリー・ポッター』シリーズや『ダ・ヴィンチ・コード』など、数多くの海外文学が日本国内でベストセラーとなり、社会現象にまでなった。だが、その裏側で辣腕を振るい、暗躍する“版権エージェント”には、あまりスポットが当たらない──。

映画化もされたスティーブ・ジョブズの自伝。(公式HPより)

 海外で大ヒットした作品の権利をめぐり、エージェントと呼ばれる

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美人女流作家からモダニズムの傑物まで! いまこそ読むべき戦前の“大作家”たち

――本文では紹介しきれなかった大作家たちを一挙ご紹介!

■22歳で没した片脚の美人女流作家
素木しづ(しらき・しづ)

1895(明治28)年~1918(大正7)年
上の写真は『素木しづ作品集 その文学と生涯』(北書書房、1970(昭和45)年)
北海道札幌市生まれ。夏目漱石の弟子・森田草平の門下生で、その美貌と才能で一時は森田の寵愛を受けるが、結核のため次第に遠ざけられるようになり、傷心のうち

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漱石、芥川など純文小説だけではい! 日露戦の飛び散る肉片描写も!? 戦前ニッポンの本当にヤバい小説

――同時代の売り上げ規模としてはエンタメ系のほうが大きくても、後世まで残るのはほとんどが純文学系の作品。しかし、現在では忘れられてしまっている古いエンタメ作品の中にも、十分読む価値のあるものが多数存在する。そこで、明治、大正、昭和初期の知られざる傑物作家、傑作小説を一挙にご紹介!

『浮雲』(新潮文庫)

 夏目漱石、森鴎外、芥川龍之介に太宰治。

 国語の授業で取り上げられる戦前の小説というと

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【ジャーナリスト・小林雅明が選ぶ】映画をキケンに味わうための未邦訳文学3選

[ジャーナリスト]小林雅明(こばやし・まさあき)
音楽ジャーナリスト。著書に『誰がラッパーを殺したのか?』(扶桑社)、監訳書に『チェック・ザ・テクニーク』(シンコーミュージック)や『ロスト・ハイウェイ』(扶桑社)などがある。

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【ライター・池城美菜子】が選ぶ未邦訳本――「こんなに面白いんだから訳させて!」なノンフィクション文学3選

[ライター]池城美菜子(いけしろ・みなこ)
ヒップホップやレゲエ、R&Bなどのライナーノーツ執筆をはじめ、対訳も手がける。著書に『まるごとジャマイカ体感ガイド』(SPACE SHOWER BOOKs)などがある。ツイッター〈@minakodiwriter〉

 面白いものやおいしいお店を見つけると、 そればかり周囲に勧める迷惑な人っている。私、ソレです。 本の場合はさらに重篤。特に邦訳がないノンフ

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【翻訳家・寺尾隆吉】が選ぶ・邦訳発売が決定している注目のラテンアメリカ文学3選

[翻訳家]寺尾隆吉(てらお・りゅうきち)
1971年、愛知県生まれ。ラテンアメリカ文学研究者、翻訳家。フェリス女学院大学国際交流学部教授。ラテンアメリカ文学の邦訳とともに、安部公房や大江健三郎らのスペイン語翻訳も手がける。

 私は翻訳家ですが、出版社からの依頼ではなく、こちらから作品を提案し、同意を得た上で邦訳を進めています。また、ラテンアメリカ文学研究者という立場から、売れる/売れないの観点か

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丸屋九兵衛が案内する未訳文学の奥深き世界観!邦訳すべき“歴史改変SF”小説

――「もし、南北戦争で南軍が勝っていたら」――そんな世界的歴史を題材にした“歴史改変文学”なるジャンルがある。ここでは本誌連載でおなじみのライター・丸屋九兵衛氏が太鼓判を押す未邦訳作品を解説。さらに3人の識者に「今こそ邦訳すべきタブー文学」を選出してもらった。

(写真/北川 泉)

 中規模以上の書店なら、〈SF棚〉が標準装備。日本は決してSF後進国ではない。もっとも、その棚を嬉々として徘徊して

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【小説家・嶽本野ばら】「小説で薬物にハマり、依存しました──」薬物による2度の逮捕と清原にすすめたいあの本

――2015年4月、『下妻物語』(小学館)などで知られる小説家・嶽本野ばらが、麻薬取締法違反で逮捕された。薬物による逮捕はこれで2度目。やめられなかった薬物への未練と、文学界の巨匠たちへの憧れ、そして清原和博へのメッセージまで、現在の心境を語る。そして、そこにはいつも本があった──。

(写真/高田 遼)

 僕が薬物で最初に逮捕されたのは、2007年でした。『幻想小品集』(KADOKAWA)を出

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アメリカ、フランス、日本のドラッギーな表現 麻薬文学の作家たちとパンチライン

――麻薬文学の代表的作家として挙げられるのが、これらの人物かもしれない。彼らの作品を読めば、ドラッギーな“名文”に出会える!?

■麻薬の効果を冷静に見つめた象徴派詩人
シャルル・ボードレール

『悪の華』(1857年)で近代における孤独と苦悩を歌い、フランス近代詩を確立した詩人。60年、英国の批評家ディ・クインシーの『阿片常用者の告白』(1822年)の翻案も含む『人工楽園』を刊行。それは、19世

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有名作家によるドラッグと文学のマリアージュ! コカイン中毒で原稿が鼻血まみれ! “麻薬文学”の近現代史

――麻薬と文学と聞いて、バロウズやギンズバーグのようなビートニクを思い浮かべる読者もいるだろう。だが、それだけでなく、フランス文学や日本文学においても、ドラッグと密接な関係の作家・作品たちを挙げることができるのだ。薬物絡みの事件で騒がしい今、“麻薬文学”の近現代史をひも解きながら、その真価を問いたい。

J・コクトーがアヘン中毒の解毒治療中に綴った『阿片』には、このような奇怪なデッサンも……。

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出版不況の「犯人」!? 新潮社が図書館に敵意表明!



 TSUTAYAの参入とその「挫折」から、近年注目を集めている図書館。かつてと比較して、居心地のいい図書館は増えてきているようだが、新潮社の佐藤隆信社長が、15年の全国図書館大会で「増刷できたはずのものができなくなり、出版社が非常に苦労している」と、図書館に対して敵意を露わにした発言をしたことが話題となっている。

 出版社だけでなく著者、書店などの指摘から、図書館における貸出が文芸書の販売冊

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