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プレミアリーグでの個人コーチの活用事例(Lee Skyrme: サウサンプトンB)
こんにちは。4日後に一時帰国する吉田です。先週末、ウェールズサッカー協会のナショナルコーチカンファレンスが2日間にわたってオンラインで開催されました。その中でいくつか個人コーチの活用に関するプレゼンテーションがありました。また最近のトレンドとして、チームとして個人コーチを採用する流れが出てきているので、情報として共有したいと思います。
今回は、イギリスのトップレベルでの個人コーチの活用、また彼らがチームの中で個人を成長させるためにどのような考え方を持っているのかについて2回(または3回)にわたって紹介していきたいと思います。
今回カンファレンスで個人コーチとしての話をしてくれたのは、
Lee Skyrme (サウサンプトンBチーム個人コーチ)
Rhys Carr (シェフィールドユナイテッドU23個人コーチ)
の2人です。
今回の記事ではまずはLee Skyrme氏のサウサンプトンBでの取り組みについて紹介したいと思います。
Plan(計画)
サウサンプトンのBチームの目的は、
”ファーストチームの環境、トレーニング、プレースタイルに慣れる機会、彼らの強みを最大化して高いレベルでコンスタントにプレーする機会を選手に与える”ことで、”ファーストチームへのスムーズな移行、そしてその後のキャリアで活躍してもらうこと”
だと決められています。またHolistic development (全人的、プレーヤーとしてだけではなく、人、リーダーとしての成長)も重視しているようです。
その手段として、IDP(Individual development plan、個人成長プラン)も活用されており、またトレーニングの負荷もコンディショニングコーチと協力して管理しています。
興味深かったのは、IDPの構成です。3つの重要なエリアとして、① the Must haves (トップレベルに到達するため、コンスタントにプレーするために必須のスキル)、② Super strengths(試合で使われるために必要な強み)③ Key actions(チームに居続ける、ゲームの中での自分のポジションの役割)が何であるか、それらをもとにIDPを決めているとのことでした。(下の画像参照)
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/53328660/picture_pc_57e519d51d04ce26c28ee0983f78e64e.png?width=1200)
そしてこれらのプランは全てファーストチームのプレースタイル、ゲームモデルに沿って決められています。あくまで目的はファーストチームでコンスタントにプレーすることなので、この繋がりがとても大事になります。
例として、1人の選手のIDPを見せてくれました。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/53327410/picture_pc_c902c315e6ac9d64929b59b6e1fadb2d.png?width=1200)
求められるプレーがどのようなもので、それらをどうやって習得していくのか、ということが書かれています。この例では
①レッドゾーン(どこなのかは詳しくは分かりません、ファイナルサードかな?)でのスピードアップ ②カウンタープレス ③ゴールを決める
という3つが提示されていて、それぞれが先程の3つの重要なエリアのどれにあたるかというのも記載されています(右側のチェック欄)。
Do(実行)
練習のサイクルは、1週間というよりも、ゲームからゲームというサイクルで構成しています。プレミアはミッドウィークに試合があることもしばしばなので、自然かもしれません。練習の種類としてはグループ(ユニット)での練習、個人練習があり、またその練習の中でもGame led practice(チームでのプレー、ゲームモデルにフォーカスした練習、ファーストチームの練習に近い)とIDP led practice(IDPをもとにした個人、ユニットでの練習)があります。そしてそれぞれの練習のバランスはゲームに近づくにつれて変化していきます(下のグラフ参照)。
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/53327780/picture_pc_2d2fa2ddd91f1660e26d69f1b818f288.png?width=1200)
週の初めは個人、ユニットでの練習の割合が多く、ゲームに近づくほどチームとしての練習の割合が増えます。そして真ん中の Extra’sは、練習後の居残り練習のようなものらしいです。この練習ではタフなメンタリティ、疲労を受け入れることを学ぶためのものです。一見、根性論にも見えますが、このメンタリティは身体的、精神的にタフなプレミアリーグで、ファーストチームでプレーし続けるために欠かせないものだとSkyrme氏は強調していました。こればかりは効率の良い練習だけでは学べないことなのかもしれません。
グループ(ユニット)練習
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/53327468/picture_pc_d2e96f16786b39d296b24facdba70b4a.png?width=1200)
FW2人とMF1人でパスを繋いでからのフィニッシュ。
チーム練習
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/53327487/picture_pc_2a93350a917b65fb207a8ba5972cc89a.png?width=1200)
ゴールを3つ使ったゲーム。Skyrme氏はセンターバックと一緒に動き適宜フィードバックを与えます。
例を見てもわかるように、練習は特に目新しいものではなく、それぞれの選手のIDP、ニーズにあった練習になっています。練習で最も大事な点は、ファーストチームのプレー原則、ゲームの中での振る舞いが練習の中でどれだけゲームに近い状態で再現されているかということだ、と言っていました。また、セットプレーの練習でも、ファーストチームとコミュニケーションをとって、その選手がファーストチームに入った時に担う役割をBチームでも与えているとのことでした。
Review(振り返り)
次に、どのように振り返りをしていくのかについて。振り返りの大きな目的は3つ。
①ディスカッションを通した学びと成長 ②自分のプレーの振り返り、評価 ③選手自身の自己認識と求められているプレーの理解を高める。
この過程で大事なのは、全てのコーチングスタッフ(分析官、心理士、コンディショニングコーチ)が選手のIDPについての理解があることだそうです。また、選手が主体となって、自分の練習や試合での映像、スタッツを見て、自身のIDPに沿った意見を出し、他の選手、スタッフとディスカッションをしていくことを重視しています。このようにする目的としては、選手自身がどのようなプレーが良くて、どのようなプレーを改善しなければならないのか、どうすればファーストチームに入れるのかということを客観的に考え、理解するチャンスを与えるためだそうです。ここで最も大事な点は、忖度せず、正直に話を進めるということ。それをサポートするために、客観的な視点が得られる映像やスタッツが重要になってきます。正直な話をすることで、スタッフはプレーヤーをいつでもサポートするという姿勢を示し、信頼関係を築く事ができる、と言っていました。
またIDPは6試合サイクルで振り返り、必要であればアップデートしていくという流れのようです。
まとめ
今回紹介したサウサンプトンBの取り組みで1番自分の中で興味深かったのはIDPの3つの重要なエリアの話です。
チームに入るために何が必要なのか、そこに居続けるにはどのような強烈な強みを持てばいいのか、ということを考えること、そしてスタッフがそれをサポートする仕組みができれば、チームとしてだけではなく、チームの中での個人の成長につながっていくと思います。実際のところ、サウサンプトンのようなトップレベルのクラブでないと、全てのプレーヤーがコーチとともに個人練習などを行うのは不可能に近いと思いますが、個人で目標を決めてそのために何をしなければならないか考える、というところまではどのチームでも取り組むことができるのではないでしょうか。
次回はシェフィールドユナイテッドU23での個人コーチの取り組みについて紹介します。もしご興味があれば、告知しますので、Twitterアカウントのフォローよろしくお願いします。読んでいただきありがとうございました!
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