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『ホームカミング』シーズン2 (2020)   なぜ『超音速攻撃ヘリ エアーウルフ』を観ているのか?

2018年(日本では2019年)にリリースされ、絶賛されたシーズン1。元々2シーズン分の発注がされていたといわれているが、シーズン1の主演だったジュリア・ロバーツは今シーズンには出演しない。

ゴールデン・グローブ賞の作品賞と女優賞を逃したジュリア・ロバーツがヘソを曲げてしまったのだろうと想像しているが、結果としてサム・イスメイルが演出から手を引いてしまった。いちおうシーズン2演出のカイル・パトリック・アルバレスもサム・イスメイル路線を引き継いでいるのだが、全く及ばない。それほどサム・イスメイル贔屓ではない私でも、シーズン1のイスマイルの映画オタクっぷり、とくにデ・パルマへのオマージュが楽しめたし、パイナップルの使い方ひとつとってもヒッチコックのような完璧主義、悪く言えば粘着気質が画面から伝わってきたのだ。

イスメイルが拘り抜いた楽曲も映画ファンにはたまらなかったのだが、オリジナルの音源の使用許可を得る手間が大変だったと聞く。シーズン2では、なんとなく「バーナード・ハーマン」チック、どこかで聞いたことある映画音楽に似てる音楽で済ませており、ずいぶん手を抜いた感じだ。


〈以下、物語の核心や結末に関する可能性あり〉

シーズン2のエピソード4で、シーズン1最終話のポスト・クレディット・シーンと繋がってくるのだが、シーズン1のダイナーでのエンディングが秀逸だっただけに、ジュリア・ロバーツが出演しないなら、続編に直接的な話のつながりを持たせる必要はなかったのではないか?とくにシーズン1エンディングのダイナーのシーンの解釈に、いろいろとロマンティックな想像をめぐらせた人はガッカリするかもしれない。あの結末は、元の性格は残したまま、忘れたいトラウマと治療期間の出来事だけキレイすっかり忘れてしまうという奇跡の薬が完成間近だったのに、自分がその実用化を潰してしまったことに主人公が気付いたのである。グリア・ガースン主演の『心の旅路』、ヒッチコックの『 白い恐怖 』、フランス映画『悪魔のようなあなたな』ど、記憶喪失という題材は映画やTVドラマと相性が良く、ハズレが少ない。シーズン1はスリラー作品の教科書になるような高い完成度だった。
しかし、シーズン2では陰謀のスケールも小さく、大げさな結末以外は普通のこじんまりとしたサスペンスである。釣りに行くという場面では、「これは絶対、陽の当たる場所のオマージュっぽくなるな」と期待していたのが、空振り。VA(退役軍人省)の件は『ブラック・サンデー』のオマージュ。アメリカの役所(アメリカに限らないかもしれないが)は、大体あんな感じである。

劇中でガイスト・グループのオーナー、レナード・ガイストがいつも『超音速攻撃ヘリ エアーウルフ』のパイロット版であるTV映画『エアーウルフ 砂漠の空を制圧、ジェット機774区間を撃破する超音速攻撃ヘリ』をヴィデオで観ているのだが、この映画では、エアーウルフの開発者であるモフェット博士自らが、お披露目会で軍の高官など招待者や関係者達をエアーウルフで攻撃して殺傷してしまうのだ。これは勿論ホームカミング シーズン2の結末の伏線になっているのだが、評価も人気も低い『エアーウルフ』シーズン4(新エアーウルフ 復讐編)とホームカミング シーズン2が重なってしまうように思えてならないのは皮肉である。

これならウォルター(ステファン・ジェームス)を絡めず、スピンオフ的な続編としてDOD(国防総省)の下級官吏(シェー・ウィガム)を主役にした本格スリラーにしたほうが良かったろう。

ところで、ブンダ大佐役のジョーン・キューザックはジョン・キューザックの姉。Bundaというのは東欧系の姓のようだ。なんとなく実在の人物である、CDC(疾病予防管理センター)の副局長、アン・シューカット少将を連想してしまった。

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さて、作品の評価とは関係ないが、米軍の地上部隊では40年くらい前からメートル法を採用しており、とくに狙撃兵はヤードではなくメートルを使う。米軍の元狙撃兵の自伝などでは読者に分かりやすいようヤードを使っていたりするので、脚本家か原作者が勘違いしたのだろうけれど、この点はアメリカでも追々、ツッコミが出てくるだろう。

また、"a hundred and ten" が字幕では「時速110キロ」となっていたが、普通に考えるとキロ(メートル)でなくマイル。





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