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『アップロード ~デジタルなあの世へようこそ~』(2020)   『トータル・リコール』オマージュのアマゾン・オリジナルの風刺コメディ版『ブラック・ミラー』

ただのサイファイ・ダーク・コメディでは無く、フィリップ・K・ディック的であり、『ソイレント・グリーン』的でもあり意外と深い。
基本的にはコメディだが、大企業や利権が絡むスリラー要素はアマゾン・オリジナルの『ホームカミング』的でもある。

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オンラインゲームのバーチャル・リアリティ空間とその追加課金システム、ECサイトやWebサービス会社のカスタマー・サーヴィス、スマホの基本プランやデータ通信料金、タワーマンションのフロア差別などのメタファーであり、風刺なのだ。そういう意味では、毒の弱い『ザ・ボーイズ』と言えるかもしれない。

ちょっと前田美波里似のアンディ・アローの感じが良く、カナダのトム・クルーズことロビー・アメルより、アンディ・アローが主役と言っていいだろう。ビル・プルマンに似ているケヴィン・ビグリーは『アンダン〜時を超える者〜』に出ていた。イングリッド・カナーマンはメイジャー作品のメイン・キャストは初めてのようだが、本作品でブレイクするだろう。ジェシカ・タックはお金持ちの奥様の印象が強いが、今回は珍しく庶民的なお母さんを演じている。

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『サンセット大通り』、『ロボコップ』、『ブレードランナー』等のオマージュが散りばめられており、私のようなオマージュ探し好きにはたまらない。カスタマー・サーヴィス担当者が「エンジェル」なのは、『素晴らしき哉、人生!』の影響だろう。

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脚本家が意識しているかどうかは不明だが、庶民の家庭の出の青年と富豪の娘の婚約者という設定は『陽のあたる場所』そのままである。

交通事故、病院で目覚める青年。記憶喪失、召使い付の豪華な生活。しかし美女に上手く利用されているように思えてならない…。やがて、取り戻した記憶で判明する事実。これってアラン・ドロン主演の『悪魔のようなあなた』(1967)にも良く似ている。

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エスタブリッシング・ショットで、やたらドローンが飛んでるのはAmazonオリジナルだからだろう(エレクトリック・ドリームズのオマージュでもある?)。HBOの『ウエスト・ワールド』のような世界よりも、こういうデジタルの世界のほうが早く現実になりそうだ。

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