私が価格を上げ続けるわけ

こんにちは。cymboです。

当cymbo malletsは定期的に商品価格を上げています。そこにはいくつか理由があるので、少し纏めてみます。

①クオリティが日に日に上がっている

②複数のプロジェクトを抱えるための時間の確保

③納期と健康の問題

④新規参入問題

①クオリティが日に日に上がっている

ウチでは割と頻繁にモデルの廃番を行っています。

それはスマートフォンなどを思い浮かべていただければわかりやすいと思うのですが、毎年良いハードがソフトが開発され今まで最上なものが、最上だったものに変わります。iphone5よりiphone12のほうが現代に必要な要素がよく考えられた上で採用されていると思います。

それと同じです。要は私の中でもう古いのです。物が悪いというわけではなく、寧ろ良いです。ただ当時思っていた良いという概念と今思う良いという概念にずれがあるのです。なので不要だと思うものは徹底して消しています。また売り上げが出るかどうかという問題もあります。作っても単価が低く、売り上げに繋がらないのであればもっと効率の良いものを作ったほうがいいので消します。

大きい声で言ってはいませんがシャフトのコーティングや研磨はずっと研究・変更しています。物凄く時間も手間もかかりますが、価格は据え置きにしていました。見た目だけではなく、使い勝手や耐久性に大きく貢献するため新モデルから価格はしっかり上げようと思います。

また、今現在思っている良いという感覚は幅広く使えることです。最近はそういう撥が自然に出来上がるのですが、それを据え置き価格で売ると困るのは私です。だって他の撥が要らないわけですから。実際、全然撥にお金を使わないプロの奏者に「このフランネルは5万円とってもいい。3ペア分の仕事ができる」と言われたことがあります。3ペア分なら75000円じゃないかと思いましたが、これは黙っておきましょう。

結果的に余すことなく技術を使い、時間をかけ相応の金額をいただくのが結局売り上げも良いです。

②複数のプロジェクトを抱えるための時間の確保

過去に拙作が1万円台の時、平均して30ペア程度のオーダーを抱えていました。当時はまだ学生の時分で月に1回東京に来て、営業や色んなオケに回って製品のテストをしていただいたり。そして田舎へ帰って学生の傍ら、マレットの製作をしていました。一番忙しいときは30ペアのオーダーを抱えて革製品の依頼を複数件抱えながら卒論を書いていました。人生史上一番忙しかったことと思います。残念ながら今は体力的にもそんな無理はききませんし、輸入関係や楽器製作、ヴィンテージマレットのレプリカ製作、新作開発、他の楽器製品製作、スタジオ経営、レッスン斡旋など色々なことに時間を割きたいのに、結局既存のマレットを製作するというのは極めて機械的な作業であり、非人間的であると過去に感じました。また、これは経験から言えることなのですが、そのような時間のない状態でクオリティは上がらないです。ずっと過去のベストな自分と向き合うことになるので、慣れはするかもしれませんがそこに向上の余地はあまりにもないと私は思います。

これは私の持論ですが、全く関係なさそうに見える事柄こそ知の金脈だったりします。なので私が割く時間の最優先にマレット製作というのはありません。勿論還元ということを考慮してのことですので、ないがしろにしているわけではありません。

③納期と健康の問題

これはシンプルです。

もし

安くする

→いろんな人が買えるようになる

→オーダーが増える→納期が長くなる

→全然届かない(実際過去に半年ほどお待たせしたことがあります。その節は大変申し訳ありませんでした。)

また

オーダーが増える

→働きづめになる→健康を害する

→リタイア

となります。

このあたりのバランスをとるためにも値上げは必要です。

④新規参入問題

これもまたシンプルです。

儲からない業界に新規の製作者は増えないし、雇用も増えない。

業界は衰退する。以上です。


そもそも論

日銀の物価上昇率の年間目安は2%です。

日本国内だけで考えても物価はあがることを望まれています。

それに加えて、日本は輸入に依存する部分が大きいので、海外為替や海外の物価上昇率をも考慮する必要性が出てきます。

消費額というのは給与や生産額に大きく影響していきます。

価格が下がるというのは、サービスの質があげれず当座が必要な時だけです。

色々書いてきましたが、他社との差別が計れているうちは相場はあまり考慮しなくてもいいと思いますし、価格は上げ続けたほうが世の中に良いこと思います。

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