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地域経済循環率が最下位の奈良県。スポーツで地域経済を活性化するには。

スポーツで地域貢献、最近よくこんなことを目にする。果たして、スポーツで地域に貢献するとは一体どういうことなのだろうか?このあたりを今回は考えてみたい。

よく言われている地域貢献

スポーツと関連した地域貢献はいろいろあるが、

  • 健康増進

  • スポーツの普及、育成

  • 交流人口、関係人口の創出

  • 地域経済活性化

といったところが代表的なところ。まあまあ直感的にも分かりやすそうだ。「健康増進」はスポーツで体を動かし云々、「スポーツの普及、育成」は、スポーツを通じて地域とつながり、文化と人材育成を云々、「交流人口、関係人口の創出」は、イベントなどで地域をアピールして云々。この3つは、比較的長期の課題に挑戦するもの。

この中で、分かりやすそうに見えて曖昧なのが「地域経済活性化」。短期的でいかにもらしい数字を出して、それをゴリ押しで納得させようとする傾向があったりするのでちょっと厄介。今回は、この辺りを少しエグッてみたい。

地域経済活性化、誰がHappyなのか?

イベント開催してメッチャ人が集まったし、参加者たちが地域にお金落としていったから界隈の人たちは潤ったでしょ?特に事故もなく開催できたし大成功や!

ってこれ、ホンマに大成功なんだろうか?

私は自転車乗りなので、地方のサイクルイベントなどに行ったりするのだが、明らかに地域が疲弊するようなイベントもいくつかあった。

というのは、人口数千名の集落に数百人の人たちが一気に押し寄せ、明らかにその地域で参加者の宿泊や飲食はまかなえないキャパオーバー状態。

結果、参加者は、近隣の地方都市で宿泊し、宿泊先周辺で飲食している。ほとんど、主催地域にお金が落ちていない状況。

一方で、地域の人達はイベントを楽しんで帰ってもらおうと、おもてなしを地域総出で提供し、沿道で一生懸命に応援したりしてくれる。全てボランティア。

イベント開催前後では、交通渋滞と駐車場問題で生活は麻痺、開催後には大量のゴミ問題などが発生する。

こうしたイベントに対して、広域自治体の報告書を見ると、「広域での経済効果は〇〇億円!」と書かれ、小さく主催地域の赤字は補助金で補填と…。内訳までは記載されていないので想像ではあるが、消費の大部分を占める宿泊、飲食、移動は、東京資本の大手ホテルチェーンや飲食店であったり、特定の公共交通機関だったりするのだろう。

これって労働力の搾取やん…。イベントの目的は?と心で呟いていた。

こんな状況、地域の人たちHappyなん?こんなイベント続けられるん?大丈夫なん?と余計な心配をしてしまう。

地域の人たちにとってどういった状態がHappyなのか?静かに暮らしている集落の人たちのところにガヤガヤと上がり込んで、労力と生活を乱してしまっている。地域の人はこの1日を本当に望んでいるのだろうか?

もっと地域の人のペースでもっとHappyにできないものか、そんなことを考えさせられることがある。

地域経済への貢献

端的に言えば、地域経済に貢献するためには①地域内でお金が循環すること、②雇用が生まれること、の2つが最低限揃う必要があると自分の中では整理している。この2つがうまくサイクルして初めて地域経済へちょっぴり貢献できたと言っていいと思っている。

あるイベント開催中にお土産屋さんで月の売上が10倍になったと喜んだ。でも、売上の大半が東京から仕入れたものだったら、結局は東京へお金が流れてしまうため、地域としてはあまり嬉しくない。

利益の部分がちょっと循環するやん。

そうかも知れないけど、そもそも量が少ないし、田舎の人は貯蓄が好きだから溜め込んじゃうかもしれない。

したがって、ビジネスとして地域経済に貢献したいと思うのであれば、事業を通じて地域にお金が循環する仕組みが必要だし、その循環を大きくして雇用が生まれる可能性を秘めている必要があると思う。

地域循環共生圏

これ、難しい言葉でいうと、地域循環共生圏って言われるもので、環境省が中心にやっている。

この動画が地域循環共生圏をとてもわかり易く説明してくれている。環境省なのでエネルギーのことを後半は言っているが、現在、地域で所得が流出しているものを内部循環に変えていこうというのが本質なので、その方法は無数にあるはずだ。

地域経済循環分析

地域経済循環分析は、市町村ごとの「産業連関表」と「地域経済計算」を中心とした複合的な分析により、「生産」、「分配」及び「支出」の三面から地域内の資金の流れを俯瞰的に把握するとともに、産業の実態(主力産業・生産波及効果)、地域外との関係性(移輸入・移輸出)等を可視化する分析手法です。

環境省

上の動画の中で出てきた地域経済循環分析を難しく書くと上記の通り。簡単に言うと、いろんなデータを使って、地域内のどこでお金が生まれ、流入して、どこで流出しているのかを見えるようにする分析って感じ。

この分析をすることで、流出している穴を見つけて、そこに効果的な施策を講じたり、穴は小さいので流入を増やせば、より豊かになるよねー、じゃ、どうしよう、みたいなことが言えるようになる。

上記のサイトから都道府県や市町村単位での分析ができるようになっているので、興味がある人は試してみてください。

奈良県の地域経済循環率は最下位。

地域経済循環分析の中で出てくる地域経済循環率とは、生産(付加価値額)を分配(所得)で除した値で、地域内で生み出された所得がどの程度地域内に循環しているかを把握するものであり、地域経済の自立度を示すものだ。

この値が低いほど地域経済の自立性が低い、つまり、他地域から流入する所得に対する依存度が高い、地域経済が回っていない、地域外で消費している割合が大きいということが言える。

企業の本社が多く存在する例えば東京都港区などは、極端に生産(付加価値額)が多くなり地域経済循環率が大きくなる。一方で、都市近郊のベッドタウンなどは、他地域からの分配(所得)が多くなるため、値が小さくなる傾向がある。

下表は47都道府県の地域経済循環率をランキングしたものだ。トップ3は東京都が群を抜いた状態で大都市圏が並ぶ。

地域経済循環率 都道府県ランキング

さて、私の住む奈良県はどうだろうと調べてみると、なんと47都道府県中最下位。大阪のベッドタウンが多いとは言え、ちょっとダントツのビリやん。これは…。

2018年 奈良県地域経済循環マップ

この値が低いから絶対的に悪いと言うわけではないが、長期的に見れば、いろいろと改善の余地があると言えそうだ。地域経済の自立性が低いと言うことなので、経済的変動や大規模災害などがあった場合、地域経済への影響が大きく出やすいということも考えられるためだ。

奈良県の場合、所得からの支出が地域外へダダ漏れ、地域として稼ぐ力(産業)がない、ちょっと観光などで地域外からの流入はあるものの、他地域からの投資はマイナス。なるほど、奈良県は人材が流出すると言われる訳だ…。数字だけ見ると、これは未来がない。

分配のセクションでは所得が増加している。これは、おそらく大阪の企業に勤務して所得を得ている人たちが多いためだろう。なのに、支出で地域外へダダ漏れ状態になっているため、生産への還流が大幅に少なくなる循環。

奈良の地域経済を少しでも良くするのであれば、地域での消費を増やすということが必要になってくる。すなわち、イオンなどの大手首都圏資本の店舗ではなく、地域資本の店舗でいかに消費を増やしていくかや、地域資源を活用している店舗の利用を高めるなどということも検討に挙がる。

スポーツで地域経済に貢献するということ

はい、話がちょっと外れてきたので話を最初に戻すと、スポーツで地域経済に貢献するためにはどうすればいいのか?どのような規模でどのような地域で活動するかによってやり方は大きく変わってくる。

地方の集落での自転車イベントと都市型のプロサッカークラブの興行では、地域性も規模も、アプローチする主体も変わってくる。

検討の際、地域経済の循環という視点で地域の課題から捉え直してみると、短絡的に無理なイベントを華々しく開催して地域をかき乱すこと以外にも、もっと長期的にもっとスマートな糸口が見えてくるかも知れない。

スポーツの特性を活かし、地域の経済循環を生み出すような方法。少し考えてみようと思う。


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