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【学校インタビュー】~児童の自発的な利活用によるデジタルシフトを目指して~ノートルダム学院小学校のデジタル・シティズンシップ教育に迫る

2021年からDQ Worldを用いたデジタル・シティズンシップ教育に取り組むノートルダム学院小学校の荒川教頭と坪田教諭にお話を伺いました。

トピック1## 導入背景


[サイバーフェリックス]
ノートルダム学院小学校様のICT教育の現状とDQ Worldを導入するまでの流れについて教えてください。

[荒川先生]
やはりきっかけには、新型コロナウイルスの蔓延で児童を登校させると命の危険があるという状況になり、命を守りながらも学びを止めないという大前提の中で、ICTを活用した学びへの移行を急いだということがあります。2020年2月末に一斉休校になりましたが、5月の連休明けには一応曲がりなりにもオンライン授業ができるような環境を整えることを、各学年に1人いるICTの先生の集まりの中で決めました。それ以前に、すでに3~4年前から4年生以上は1人1台iPadを導入して学習に取り組んでいた土壌があったこともありますが、ICT担当の先生方の踏ん張りなしには成し遂げられなかったことです。

[荒川先生]
その後、利活用ということで日常的にICTを使えるステージに段階を上げるというのが次の大きな目標になったのですが、デジタル・シティズンシップの本などを読むと、やはりその段階では色々なトラブルや困った状況が起きるらしい。けれど、将来的に子どものためになることを信じて突き進んだ結果、今では休み時間に使わせるのはやめておこうや、利活用するために何に使うのが一番いいのか、などということをそれぞれの先生が授業を通じて考えながら前に進めていると思っています。

[荒川先生]
ただ、ICT教育を進める中で、脳にどんな影響があるのか、など検証できていない部分がたくさんあるので、やはり保護者も教員も健康面をすごく心配するんですね。そういう部分で責任を持てるのかと言われるとやはり非常に悩ましいと思うんですけれど、使わないでいいのかと言ったら、世界はもうそういう仕組みではなくなっています。なので、生きていくために必要だとなったときに、ではどう必要な力を身につけていくのかという指針がほしいと思うんですよね。

[荒川先生]
そんなときに、デジタル・シティズンシップという言葉に出会って、先進的にやっているヨーロッパやアメリカのプログラムを調べてみたところ、デジタルの部分だけじゃなくてシティズンシップ自体の方がむしろ大事だなということを思い出しました。道徳、宗教、人との関わりといった非認知能力を育て、市民社会をどう作っていくのかということを考えるシティズンシップ教育を行う上で、一つの道具としてデジタルがあります。なので、言葉的にはシティズンシップが先に来るべきだなと僕自身は思いますが、GIGA構想の中のデジタル化という部分は、先生たちも身につける必要があるので、両方を扱えるということをプラスに考えました。

[荒川先生]
DQ Worldを用いたデジタル・シティズンシップ教育は、学校教育という仕組みの面で、やはり一つの決まったカリキュラムがあって、それに沿って進めると一定のデジタル・シティズンシップの学びが進めていけるという部分が良さだと思うんですね。子どもたちが実際にどういう手順で学んでいくといいかという見通しが立って非常にわかりやすく、また今在学している児童のために、卒業までに何ができるという時間感覚で考えたときに、すぐ学習を始められる即効性は魅力的だなと思いました。

トピック2## 授業実践、スケジュール決めについて

[荒川先生]
今年は、2学期から学習を開始しました。外枠は決めたけれど、実際に時間割に落とし込んでやっていこうというマンパワー的な部分では、やはり見通しが少しつきにくかったというのがありました。けれど、今回の取材が入ることで、「ここまでにやるよ」という仕切りができてとても良かったと思いますね。

[坪田先生]
最近、学校の方針として休み時間はiPadを使わないでおこうというルールができたタイミングもあり、今回デジタル・シティズンシップの1つ目のスキルであるスクリーンタイムを授業で扱えたのは、5年生の児童にとって良かったかなと思っています。実際、子どもたちはDQ Worldのプラットフォーム上で、楽しく疑似経験をしながら学べていると感じています。

[坪田先生]
「先生、今DQ Worldやってもいいですか?」と休み時間にも言ってくるくらいなので、子どもたちなりにポイントを集めたりできる教材の仕掛けにはまって学べているのはすごくいいかなと思っています。一方、授業でも子どもたちに伝えたように学校でできることと家でもできることは、分けて欲しいなというのが担任としてはあります。そういった部分を、DQ Worldで子どもたちが自分のスクリーンタイムを計算して感覚的に覚えたり、一つのカテゴリーごとに授業で振り返ることで、何を学んでいたのかもう一度頭の中で整理したりできるのもいい点です。

[坪田先生]
今後も月に1回ずつくらい授業をできたらいいかなとは先生同士で話し合っています。今回は僕がキーノートで授業の流れを全部作って、他のクラスの先生に共有するという形で進めましたが、今後各担任がデジタル・シティズンシップの授業準備をするというのはすごくハードルが高いと感じています。

[坪田先生]
また、今日の授業でも「君たちの方がデジタルネイティブやからね」と伝えましたが、子どもたちの方が知ってることが多すぎることもあって、例えばこれから前で授業する立場が逆転してくる可能性も十分にあるかなと思います。教科書だとある程度、先生の方が知識的には知ってることが多いですが、デジタルに関しては、やはり触れている回数が多い子の方が知っていることも多いので、長期間で準備をして授業をやっていく必要があるのかなと思います。

[サイバーフェリックス]
DQ Worldを導入する他校では、子どもたちがDQ Worldを家庭などで事前に学習してきた上で、授業でそのゾーンについて発表するという反転学習形式で実践しているところもありました。今後こうした授業展開の可能性はありますでしょうか?

[荒川先生]
反転学習やプロジェクトベースドラーニングを実際に他の科目で取り入れてみて、やはり先生は知識の宝庫になることをゴールにするのではなく、ファシリテーターとかコーチとしての役割の意識を持つことが重要だと感じています。なので、デジタル・シティズンシップの授業はプロジェクトベースドラーニングとすごく親和性があるというか、そういう授業になるとより良いかなと思いますね。

トピック3## 教職員の意識の変化と期待すること

[サイバーフェリックス]
今回DQ Worldを導入したことで、教職員の方のICT活用に対する意識において何か変化があったことはありますでしょうか?

[坪田先生]
そうですね、もう少し活用を進めないとわからないかなというのは実際あります。バタバタしたスタートだったので、もうあと1、2ヶ月したら少しずつ出てくるのかなとは思います。

[荒川先生]
今回、坪田先生が頑張って作ったベースに基づいて次に各担任がチャレンジするところで、マインドセットの変化が起きてくると思います。専科がやるという考えではなくなって、自分ごとになるので、それをまた期待するところでもあるんですけどね。

[荒川先生]
それから、低学年のデジタル・シティズンシップというのもこれから大事だなと思っていて、6年間で繰り返し学習の機会を作っていけると子どもたちの学びはすごく良くなると思うんですね。今は、DQ Worldのカリキュラムを、5年生と6年生の2年間でやっていこうとしていますが、4年生までの基礎固めをどうしていくかというところで、まとまったスケジュールなどが出てくるとありがたいかなと思いました。

[サイバーフェリックス]
低学年と高学年での繋ぎというところでは、戸田市の学校で、1、2、3年生で児童生徒向けのワークショップを実施して、小学4年生からDQ Worldに取り組むという方法で基礎固めをしていた事例があります。また、今後DQ Worldにふりがなをつけられるアドオン機能をご紹介していくので、より低学年からDQ World自体を導入頂けるようになると思います。授業という側面でも、小学校低学年、高学年、中学校などレベル分けをした指導案を開発中ですので、そちらも是非活用頂けたらと思っています。

トピック4## 子どもたちに目指してほしい姿

[サイバーフェリックス]
今後DQ Worldでの学習を通じて、ICTの使い方という視点で子どもたちにこうなってほしいというビジョンはありますでしょうか?

[坪田先生]
今回のスクリーンタイムの授業もそうですけど、やはり自分でコントロールしていくしかないものなので、iPadを使うべき時間を判断して、休み時間は自制心を持ってしまえるなど、そういった判断をしっかりできるようになっていってくれたらいいのかなというふうには思いますね。他にも、国語の授業で感想文を書く場面で、ここは自分の思ったことを本音で書いてもいいよというと、SNSで出てくるような言葉を書いてくる児童もいるんです。そういうときに、やはり本音であっても「後から公開してみんなが見れるものということを理解して、言葉を選ばなあかんな」という判断を子どもが自然にできればすごくいいのかなと思っています。子どもたちが学んできたことをどこかで一つでも日常的な場面で見られたら嬉しいですね。

[坪田先生]
ちょうどこの前した5年生の国語の授業でカレーライスっていう単元があるんです。子どもがゲームをしてて約束を守らず、お父さんにコンセントをぶちって抜かれたっていうような物語なんですが、ちょうどスクリーンタイムの授業とタイミングがあったので、他のクラスでは「カレーライスのことや」と子どもが関連づけて話していたということがありました。こういう形で、関連のある教科のトピックのタイミングに合わせて、DQ Worldの題材を選ぶというのもいいかなというふうに思っています。DQ Worldは8つのデジタル・シティズンシップスキルごとに分かれていて選びやすいと思うので、そうして授業中に、DQ Worldでこんな動画が流れてたよね、と繋げていけたらいいなと思っています。

[荒川先生]
現時点では、iPadをより良く使うということに子どもたちの意識がまだいかない現状だと思っています。例えば、靴箱が綺麗だったクラスを発表する美化委員会という組織がありますけど、どのクラスだったかという結果だけ言うんですよ。だけど、本来なら何を基準にどう調べて、こうなりましたっていうデータを伝えていくということを子どもたちにはしてほしいと思うんですね。

[坪田先生]
その手段として、iPadでスプレッドシートを使ってデータを入力してグラフを作って、というふうなことができるじゃないですか。今までタブレットがなかった時代とは違って、さらに結果を視覚的に見せることができたら子どもたちは納得しますよね。それから判断のポイントが何かわかるから、どうしたらより良い靴箱になるのかっていうことも考えられますよね。こういった何か思考を巡らすようなことにICTは使えるんじゃないかと思っています。

[坪田先生]
他の先生にもまだ言ってないことですが、今休み時間はiPadを使わないとしているのは、必要な事として仮定して作っているルールというふうに僕個人的は捉えています。なので、こうした利活用をするので休み時間じゃないと時間がないからという場合には、iPadの使用を禁止にはしなくてもいいと思います。子どもたちが自分たちでICTの良い使い方を選べたり、何か思考を巡らせたりすることが利活用の核だと僕はイメージしているので、次の段階としては、そういうふうな学校生活を自発的に送れるようになってほしいですね。

トピック5## デジタル・シティズンシップを始めたい学校へのメッセージ

[荒川先生]
DQ Worldが伝えてくれているのは、未来は明るいよというメッセージだと思います。冒頭でも話したシティズンシップという自分もみんなも幸せに生きていこうよという意識が含まれていて、すごく楽しそうじゃないですか。そんな難しいことからじゃなくて、何か楽しい気持ちでハッピーな感じでそうした学びに向かえるものと捉えています。

[坪田先生]
僕もDQ Worldは、社会に出たら当たり前になるルールをしっかり押さえられていれば、ICTは楽しく使えて、プラスに働くものだなと子どもたちに分かってもらえるもんやと思います。やっぱり、指導しようとするとどうしても駄目駄目と言ってしまいがちなので、DQ Worldの中では、一定のルールに基づいて子どもたちが自発的に学んでいけるのがすごくいいかなと思います。

[荒川先生]
これから始める学校の先生方も、まずはゲーム感覚で楽しんで、体験してみたらどうでしょうか。デジタル・シティズンシップについて完全に理解しようとしてから関わるんじゃなくて、全然知らなくても、ちょっと教えてという感じで関わっていけるのがいいんじゃないかなと。僕みたいにデジタルに縁のない世代の先生たちでもハードルが低くなっていいんじゃないかなと思いますね。

[サイバーフェリックス]
ー--ありがとうございました!


~最後に~
DQ Worldでの学習を始めた児童に話しを聞くとこんな感想を教えてくれました。DQ Worldが家庭と学校でのバランスのとれた端末利活用のかけはしになることを願っています。

\\ DQ Worldでの学習を始めた児童の声 //
◎「こういうゲームを自分も将来作ってみたい、こういう仕事をしてみたいと思いました。DQ Worldをやって、正しいインターネットの使い方がわかったので、また次に繋げていきたいなと思いました。」
◎「保護者と一緒に時々やってます。”ここ大切にしいや”とか横から口を入れてくれるので、お母さんと一緒に使い方をもう1回考えることができました。」


DQ WorldをクリアするともらえるDQステッカーをお届けした様子
サイバーフェリックスのスタッフとの撮影の様子

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