【学校インタビュー】データ駆動型教育を目指して―姶良市立帖佐中学校のデジタル・シティズンシップ教育に迫る
今回は、EdTech導入補助金2022を活用してDQ Worldの実証導入に取り組む鹿児島県姶良市立帖佐中学校様にて、辻校長(写真左)、寺地教頭(左奥)、数学科の有村教諭(写真右)、体育科の田原教諭(右奥)にお話を伺いました。DQ Worldの導入経緯から授業実践、そして今後新しい情報モラル教育を通じて目指す学校の姿まで、GIGAスクール構想第2段階のデータ駆動型教育へのアップデートを図る帖佐中学校の挑戦をお届けします。
トピック1## DQ Worldを導入するまで
[サイバーフェリックス]
DQ Worldを導入する以前の帖佐中学校でのICT教育についてお聞かせください。
[辻校長]
現在、帖佐中学校では、AIドリルなどを導入し、GIGAスクール端末を文房具のように使えている印象です。昨年9月からは持ち帰り運用も始めました。
[有村先生]
私は、数学担当ですが、昨年までは主として先生方がタブレットを使って、子どもたちは教室前面の大画面テレビを見ていたのですが、本年度は、1人1台のタブレットを運用しながらロイロノートなどで意見を共有したり集約したりするなど、各教科での活用が増えてきているというのが今の状況かなと思います。
[田原先生]
私は体育担当ですが、昨年度は授業の様子を撮影して、Teamsを使って動画蓄積し活用していたのですが、ネット環境や時間の問題で、授業中に運動する時間が減ってしまうという課題がありました。今年はカメラ機能だけで撮って後でアップするとか、様々な手立てをとりながらやってるんですが、まだまだ子どもたち向けにうまく動画を撮ってそれを活用するというところまではいけていません。活用できるアプリをポンと子どもたちのタブレットに全員入れるのが難しいのが原因の一つだと思います。
[寺地教頭]
去年私が授業を参観した時は、動画などを教師側が見せるだけとか、先ほど有村先生からあったように大画面に映し出してということが精一杯かなという状況でした。今年度は、一人一台の活用が進み、生徒から「先生こういう使い方がありますよ」とか、「実際こういうふうに使ったら便利なんじゃないですか」というような声も上がるようになりました。タブレットをつかいグループ活動をする場面も増え、グループの意見を一気にみんなで共有することができるというような活用の仕方が、広く使われるような感じになってきたと思います。
[田原先生]
QRコードでGoogle formsを使うことが増えて、出欠関係や授業のグループ分けなど、職員側にとっても働きやすい環境っていうのには繋がってるかなと思います。
[サイバーフェリックス]
かなり学校全体としてICTの活用をするようになってきた印象なのですが、帖佐中学校様でデジタル・シティズンシップ教育を必要と感じていらっしゃる理由であったり、DQ Worldをその中でも選んでいただけたきっかけなどはございますでしょうか?
[辻校長]
一つは新しい学習指導要領の新しい三つの資質・能力を育てるための「学習の基盤となる資質・能力」に「情報活用力(情報モラルを含む)」があります。
すなわち、現行の学習指導要領を進めていくには、1人1台端末の整備ももちろん大事なんですけれども、それに合わせて情報モラル教育もしっかりやることが必須ということになります。
情報モラル教育というと、これまで「危ない」とか「何が起きるかわかんないぞ」など、例えば、「お化け屋敷型情報モラル教育」と表現されるような面があり、例えば、タブレットの持ち帰りを推進しようとすると、先生方の中に、持ち帰って何かあったらどうするんだなどの心配の声が起きる状況がありました。しかし、これからは、こうした情報モラル教育を、新しい時代の情報モラル教育にバージョンアップするのが必要ですよ、ということを帖佐中学校に来てすぐにプレゼンさせてもらいました。
しかし、情報モラルの指導は必要だという理解はしていても、具体的に何を指導したらいいのかが明確でないという課題がありました。そんな時、デジタル社会に必要な8つのカテゴリーを示したDQ Worldを導入することで、新しい情報モラル教育に移行できるんじゃないかと思いました。「鹿児島市で導入している”DQ World”という教材があるんですが、皆さんどうですか」と提案をし、ではやってみようということで研修を始めたんですね。
[サイバーフェリックス]
辻校長が帖佐中学校に来られる前は情報モラルでの取り組みであったり、そういったものは何かされておられましたでしょうか?
[有村先生]
昨年は、「情報モラル講演会」という形で外部講師を呼んでオンラインで情報モラルの講演を生徒向けに1時間、全学年で実施をしていました。また、道徳で授業をしてはいましたが、情報モラル教育をしなきゃいけないってのはわかってはいるんですけど、どんなふうに教えたらいいかを考える機会もあまりありませんでした。
[サイバーフェリックス]
現在、帖佐中学校様で、端末の使用に関するルールであったり、そういったものって何か決まったものを設けられていたりされますか。
[田原先生]
基本的には、授業で学習用具として使うというのが基本ベースなので、休み時間等は端末を準備してても開かないで待っておくであったり、授業の先生の指示があってから端末に電源を入れるであったり、そういう運用の仕方をしてますね。
また、今タブレットを使った授業の課題というのも増えてきていて、昼休みにその課題をしたいとか、そういう生徒がいた場合はその教科の先生の目の届くところとか指示を受けて、するようにしています。教室で勝手に端末を出してしていいよっていうところまではまだ今の現状行ってないところですね。
[辻校長]
現状、全国でも中学校によっては、本校と似たような感覚なのかなと思うんですけれども、元々GIGAスクール構想では、ご存知のように文房具のように使って日常的に家庭も含めて、シームレスに使うというのが目的ですよね。そのためには、あまりルールで縛るのは適切でないとは思っています。
トピック2## DQ Worldを導入した際の教職員の反応
[サイバーフェリックス]
先生方の目線から、辻校長からDQ World導入のご提案があったときに、どういうふうに感じられましたか?ツールを入れることでもっと負担が増えるんじゃないか、であったりどういうふうに受け入れられていたのかっていうところをお伺いできたら幸いです。
[寺地教頭]
意外と子どもたちは、ゲーム感覚だと取り組みやすいのかなと思っていて、実際、私も最初見た時は、「すごい!やってみよう」と思ったのが率直な感想です。ただ、実際に授業で使っていく中では、「もう少しこうだったらいいのにな」というのがあるようです。その部分について田原先生どうでしょう?
[田原先生]
私も一応活用してみて、やはり1個1個の動画などの学習項目を完了するのに時間がかかるというのがあります。子どもたちに取り組ませるのは問題ないのですが、他の先生方には、行き当たりばったりでやってみようという提案ではなかなか難しく、1度授業を見に来てくださいと言ってもなかなかで、各先生方にはなかなか浸透できていないというのが現状です。簡単に先生方が教材の内容を理解できる資料などがあるといいのかなと思っています。
[有村先生]
生徒に導入する前に、まずは一度使ってみてもらおうと思って、研修の中で先生方に全員アカウントをお配りして、多少時間がかかっても体験してもらう時間をとったんですね。その中で、ゲーム感覚な部分が教育とうまく繋がるのかなと心配される先生方もいらっしゃったんですけど、自分としてはゲーム感覚で進めていける部分はすごく子どもたちにとってはやりやすいだろうなと思い、面白そうだなというのが第一印象でした。
[有村先生]
それから、情報モラル教育というと、先生方にそれぞれ知識があるかというと、自分も含めてなかなかわからないことが多くて。指導される先生によってどうしても差が出てきてしまうんですけど、DQ Worldだったら、物語ベースで「大人がやってもこれよくないなとか、気をつけないといけないな」という要素がすごく含まれているので、同じ土台に立ってどの学級でも指導ができるというところはすごくいいなと思った部分ですね。
[サイバーフェリックス]
他の学校様からもそういった声をいただくことはあります。パッケージでご共有しているDQ World学習項目集というもので、一つのミッションに対して1枚で学習内容が書いてある簡単な指導案のようなものを見ていただくのをお勧めしています。
また、DQ Worldのアカウント内で、8つのスキルのマークが上のバーに並んでいる部分があります。そこ押していただくと、ゾーンごとの要点のミッションに飛んで見ていただけるようになっているので、こちらの機能も少しお役立ていただけるかもしれません。
トピック3## 保護者との連携
[サイバーフェリックス]
DQ Worldを導入する際に、保護者様にご案内されたり、そこで課題があったりとかいうことはございましたでしょうか?
[辻校長]
保護者には、5月にPTA総会というのがあるんですね。その中で、学校は今年こういうふうに教育を進めていきますよという学校経営方針を校長がプレゼンするんですが、その中でDQ Worldを用いた新しい情報モラル教育のことを取り上げました。
[辻校長]
ご家庭では、学校から指導してくださいと伝えてもなかなか何を言っていいのかわからないとか、そもそも子どもたちのインターネット使用の実態がどうなのかというのもよく分からないわけですよね。なので、今回DQ Worldを導入することで、ゲーミフィケーションで学んでいく話とか、個人のスコアを共有することによって、保護者の方からの声かけや指導もやりやすくなりますということをお伝えしました。
私たちが一番期待してるのは、データ駆動型の教育を進めていくということです。DQ Worldでの学習データを保護者と共有することによって、「ネットいじめは駄目だよ」などという漠然とした指導でなく、根拠を持って情報モラルの指導を行いたいと考えています。実際は、まだ8つのスキルの全ての学習が完了していないので、まだデータが出てきてはいないのですが、もう少し活用が進むと次に進めるのかなと思っています。
[有村先生]
そうですね。まだDQ Worldの学習時間が十分に取れていない状況ですが、ゆくゆくは学習結果のレポートを出して、保護者にも子どもたちが学んだことや、インターネット使用の現状やそれに対して子どもたちがどんなふうに考えてるのか、もしくは事前に実際トラブルが起きてしまってるとか、そういうところをうまく発信できればいいのかなと思います。
トピック4## 授業での活用
[サイバーフェリックス]
ありがとうございます。現時点でのDQ Worldの活用方法についてお伺いできますでしょうか?
[田原先生]
中学校3年生は、子どもたちがやっとアカウントをもらって、1時間ぐらい使ってごらんという段階で、授業形態ではまだ進めていません。
[有村先生]
1年生も同じように、アカウント配った時に、それぞれ学年で1時間ぐらい時間をとって触れました。また、担任を持ってる学級の方だけは、学活と道徳で実際にフリーで使わせたり、道徳の教材として一部分を切り取って活用したりしています。
2年生の授業も1年生で自分がした授業と同じもので、ソーシャルメディアでのプライバシーを守ろうというDQ Worldの学習テーマの1つを取り上げて実施した形になります。プロフィール画像など自分がSNSに上げる情報でどういうところを気をつけないといけないのか、というのをDQ Worldと絡めながら、道徳の時間の中で子どもたちに考えさせる時間をとったところですね。
[サイバーフェリックス]
プライバシーのソーシャルメディアのところを取り上げた前後で何か生徒の姿勢であったり発言などといったところで、やってよかったなと思う成果などはございますでしょうか?
[有村先生]
前後でアンケートをとったりとかはしてないんですが、ここを取り上げた一つの理由として、少し前に学校で撮った写真を生徒が自分のSNSにあげたという事例があったんですね。この授業をして以降は今のところ似たような事例は出てきてないので、少し効果があったのかなと感じる部分ではあります。
[辻校長]
今後、何かの授業に位置づけて進めるのか、自由に進めるのかというバランスはおそらく先生たちの悩みどころだなと思うので、他校の事例などを見ながら活用を進められるといいのではないかと思います。
トピック5## 帖佐中学校が目指す児童、保護者、学校のビジョン
[サイバーフェリックス]
現時点で1時間~3時間くらいお使いいただいているとお伺いしたのですが、個人レポートは生徒10名が1ゾーン完了するごとに、各ゾーンごとのレポートが出るようになっています。データの共有というところも、すでに少しずつ進めていただけるのではないかというふうに考えておりました。
[サイバーフェリックス]
最後に、データ駆動型教育を通じて帖佐中学校が目指す児童、保護者、学校のビジョンについてお伺いできますでしょうか?
[辻校長]
データ駆動型教育というのはGIGAスクール構想の第2段階という位置づけになってるんですけれども、今後は学校や学級の単位で8つのスキルの習熟度がどのような状況にあるのかをという状況把握をして、次のアクションを動かせるようになるというところに非常に期待しています。
DQ Worldのデータがレポートで保護者と共有できるというところは非常に素晴らしい点ですので、先生方と連携をして、まずは実際に1回やってみようと思っています。保護者との連携を通じて、子どもたちには、適切にICTを活用できる大人になってほしいと思っています。
これまで、学校は「教える」ところだったんですが、「生徒が学び取る」学校に変わっていく必要があります。自主学習がベースのDQ Worldでの学習を通じて、子どもたちが自分に合ったスペースで学んでいくということを大切にしたいと思っています。一人一台端末を導入する目的の一つが学習の個別最適化ですので、そういった意味でもDQ Worldのようなアプリは他に見当たらないというふうに思っています。
今デジタル・シティズンシップ教育は、様々な場で話題になってるようですけども、この忙しい学校の中でですね、手軽に入っていけるものとしてはこのDQ Worldは非常に可能性を秘めているので、今後も活用推進していきたいと思います。
[サイバーフェリックス]
ー--ありがとうございました!
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