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家系ラーメンの話

それを初めて見たときは、読み方すらわからなかった。

家系と書かれたら、普段からよく食べてますみたいな人でない限り「かけい」と読むのではなかろうか。家系ラーメン、かけいラーメン。
調理者たちは全員血族集団で子々孫々に伝えられしレシピは門外不出。いわばラーメン界におけるケンタッキーフライドチキンのような、そんな扱いかと思ってしまう人も多かろう。

ちょっと奥さん!聞きました?
あそこの家系のラーメン屋さんなんだけど…3人いる息子さんが全員店を継がないって言ってるみたいで、店主も頭抱えちゃってるみたいなのよ!このままじゃ後継者を外部に頼むしかないって凄く悩んでるんですって!俺の家系もここまでか…って毎日漏らしてるみたいで…

本当に家系ラーメンは大変だ。世襲制が破綻したら家系じゃなくなってしまうわけだ。となれば何系になるんだろうか。外部系ラーメンとかになるのか。

しかしながら読み方も違えば、血族経営限定ラーメン屋でもない。

「家系(いえけい)ラーメン」

それは横浜家系ラーメンとも言う。なるほど、横浜さん家が始めたラーメン屋さんなのね。じゃない。そういうことじゃない。

みんな大好き電脳辞書ことWikipediaによると、1974年創業の「吉村家」(神奈川県横浜市)を源流とするラーメン店の店舗群、あるいは「吉村家」に類似する濃厚な豚骨醤油ラーメンのジャンルを指す名称とのことだ。
その特徴は豚骨や鶏ガラから取った出汁に醤油のタレを混ぜた「豚骨醤油ベース」のスープ、太い中華麺と鶏油に、ホウレンソウ、チャーシュー、海苔のトッピングで構成され、麺の硬さや油の量、味の濃さを好みに応じて調整してもらえるのが一般的である。と書いてある。

Wikipediaって本当に助かる。もちろん情報の真偽判断は必要なのだが、ここまで分かりやすく書いてくれていると度々表示されてはしつこく消えない寄付のお願いにも応じてみようかという気がしてしまうものだ。
しかしながら食べ物をテキストベースで説明するには限界がある。見たこともないものは、自分の知っている情報をかき集めて想像することしかできない。

牛丼ってどんな食べ物?

「えっ… 牛丼知らないって何…?逆に怖いんだけど…吉野家とかすき家とか知らない?えっ…知らないの?本気で言ってる…?いや、別に変わったこともないよ…読んで字のごとく牛丼、牛の丼だよ…なんだよお前牛丼知らないって…気持ち悪いなあ…」

もし僕が本当に牛丼を知らない人だったとして、この回答を受けたらばきっと正解とは程遠い想像をするであろう。

牛の丼?


ラーメンの話をしていたのに牛丼の話になってしまった。

何が言いたいかというと家系ラーメンを説明するに、豚骨醤油で太めの麺で鶏油が浮いていて、と話すことは出来てもそれを知らない人にはイメージがしづらいということだ。

ビジュアルを見て、すする音を聞いて、匂いを嗅いで、舌で味わって、スープが身体に染み渡るまで、五感で受け止めなければ理解したとは言えない。

五感は仏教では、五根(ごこん)とも言う。「眼耳鼻舌身意」般若心経にもある一節だが、意識の「意」を加えることで六根(ろっこん)となる。

さて話も長いし脱線するし、そろそろ話を締めくくろうと思うが、今回は家系ラーメンの話だ。その特徴や魅力を伝えようと思ったが、やはりテキストでは限界があるので、実際に最寄りの家系のラーメン屋に足を運んで欲しい。その上で感じて欲しい、家系ラーメンの素晴らしさを。そして射抜かれて欲しいそのハートを。

僕はとうにやられてしまっている。初めて出会ったその日のうちに、家系ラーメンは僕の心をlock on(ろっこん)していたのだから。


本当にしょうもなさすぎてこんなこと書いていないで時間を有意義に使うべきだと心から思う。

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