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ひび|2024.05.02
今まさに訪れようとしていたお店からオーナーが出てきて、目の前で鍵を閉めて出かけてゆくのを見てぽかーんとしてしまった。(そんなことある?)って口の中でちいさく呟いて、所在なくそのままどこへゆくともしれずうろうろしてしまうくらい動揺した。あまりにも見事すぎて。一度伺ったことはあったけれど、またじっくり見にいきたいなあとずっと思いながら予定がことごとく合わず、たまのチャンスにはピンポイントで臨時休業だったりして、でもきょうこそは、ようやく、……と思っていたから尚更。しかも勿論きょうはちゃんと、平常の営業日なんだ。いま、わたしがいる今だけ、なのが、ほんとうにすごい。
家を出てあるきながら、服の生地のあいだをとおってゆく風のすずやかさに感動しつつ、でも駅に着いてもなおどこへどう足を運ぶか迷い続けている、きょうはそんな日。手ごろな古本が欲しいなとおもって阿佐ヶ谷でおりるも空振り、鶯谷では降りるべき出口を間違え、谷中では冒頭の奇跡に驚愕し、とぼとぼ帰路につく中央線は予想外に混んでいてげんなりして、それならと黄色い緩行線に乗り換えるべく御茶ノ水で降りたらこっちも人人人、しかも中野どまりの電車だった。きょうは、そんな日だ。よくわかった。ダメになっているときは家でおとなしくしていたほうがいいんだ。オフィスで、デスクに座っていることすらもう無理だと力尽きた四月の終わりから、まだ二日しかたっていない。早すぎたんだ。
それでも、さいごの悪あがきに入った高円寺「ヤンヤン」では、ほしかった嶋田翔伍さんの『たやさない』の「Vol.01」と「02」をみつけた。これで既刊3巻までがそろった。階段も前回よりはうまく昇り降りできたし(でもやっぱり下りはほんとうに怖い)、店内にかかっていたのは大好きな浮さん『あかるいくらい』だったし。すこしだけ、気を取り直す。
落ち着きたい。はやく落ち着きたい。ああ、助けてほしい。だれかに、助けてほしくてしようがないけれど、だめだ。だれにも助けられないし。いまは、じっと耐える。耐えよう。
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