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ひび|2024.02.26




生活にすっかり疲れている。


晴れた嵐。窓の外で唸る風。暴れ狂う洗濯物。それでも、おそるおそる外に出てみて思ったより寒く感じないのは、二日ぶりの陽射しのおかげか、それともきのうの羽田の凍りつくような雨の厳しさを身体が憶えているからか。青空に梅が映える。


淡々とはたらく。いい仕事はしたとおもう。褒めてもらっても、心はもうあんまり動かない。契約を更新するために判をおす。またしきりに褒めている。何も感じない。この人たちは、何もわかっていないだけだ。8,000円昇給する。


暗くなってからビルを出ると、おひさまがおちたせいかさすがに冷える。身体が浮くようなものすごい風が、ビルの間を暴れ回っている。目の前をスタスタ歩いてゆく制服姿の女の子。スカートのプリーツの端っこからダークブラウンのローファーまでのラインを、一糸纏わぬ素肌の脚がしろく結んでいる。カワイイは、キアイだ。


家の玄関を開けて、ごはんを食べ、ふうと一息つくともう立ちあがれないくらい力尽きている。でも、〝生活〟はそれを許してくれない。こまごまと、いろんなことがわたしを追い立ててくる。よれよれになりながら〝生活〟をこなし終える頃には、もうきょうは終わりを迎えようとしている。無為だなとおもう。そうしているあいだにも、決めなきゃいけないこと、片付けなきゃいけないこと、大小さまざま積まれた山がぐらぐらとわたしを威圧し続けている。わたしはついてゆけない。ほんとうは、もっと自分のペースで暮らしたい。生活に、すっかり疲れてしまった。





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