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水性の午後|2024.07.27




土曜日、中野「水性」にいた。


くすりのせいか頭はぼんやりしている。ほんとうは呑んじゃダメなんだけど、つい開けてしまった缶ビールが心地よくからだにまわっている。いまは名付けようのない自由な空間になっているこの場所の、以前の姿を伝える「クリーニング」の古びた看板が、かわいい編みものたちの展示の向こうにみえている。じいこさんの編みもの。彼女が声をかけてくれなければ、きっとわたしはなんとなく中をなめただけで逃げ帰っていただろうとおもう。おかげでわたしはこの、知る人の誰もいない場所で落ち着いていられている。


きょうは〝お祭り〟なんだそうで、編み物たちのほかに本や工作のコーナーもある。奥のカウンター側におかれたテーブルでせっせとうまれてゆく水ヨーヨーたち。おむつがぽてっとぶらさがった坊やたちが涼しそうなかっこうでそこかしこを走り回っている。夜には主催のOsonoさんによるライブもある。


iPadからフジロックの配信が流れている。観られないとおもっていた折坂悠太のステージ。

Osonoさんの坊やがよじよじと膝の上をクライムする。おもわず抱きとめた両手が、やわらかくて大切なこのからだを壊さないようにきゅっと集中している。人生でまだあまり、使ったことのないやさしさ。

かざはりさんが坊やたちにかけることば。やさしい音色。大きなからだからたっぷりやさしさが注がれている。

のぞむさんのちいさくてかわいくて、宝物みたいな本。

Osonoさんの目の醒めるような身体表現。内と外。振動。水の音。



帰り際、つちやりささんが手のひらをあげてニッコリ笑う。わたしは一瞬ぽかんとしたけれど、すぐに自分も手のひらをあげてぱちりと合わせた。ハイタッチ、ずいぶん久しぶりにした気がする。水底で澱み続けるわたしに、じぶんなりの泳ぎかたを考えることを促してくれた本『Swimmers』をつくった彼女に、会いたくてきょうはここにきた。わたしと同じように、本に導かれてりささんに会いに来たみほさんとも手のひらをあわせて、微熱の残る街へ戻っていく。またどこかで、同じようにハイタッチできたらいいなとおもう。家路をたどるあいだぢゅうずっと、おみやげにもらった水ヨーヨーが歩調にあわせてたゆりたゆり、その重みをゆったり跳ねかえらせて踊っていた。











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