ひび|2024.03.30
目が覚める
きょうは、ちゃんと朝のうちに起きようとおもっていた
でも毛布の柔らかさがここちよくて
すこしだけこのまま、まどろんでいることにした
いつもはまた目が覚めてしまったことにうんざりして
新しい一日が始まるのがイヤで
閉じこもるような気持ちで丸まっていることが多いのだけれど
きょうはすこしだけ特別だから
いつもよりもずっと、しあわせなまどろみ
*
街をあるく
びっくりするくらい春めいている
いろんなにおいがする
人がたくさん、あるいている
ブルゾンを羽織ってきたけれど、ちょっときょうは暑すぎたな
いつもの道で聞こえた、ホケキョの声
そういえば春から夏にかけて、いつもこの場所でうたっている子がいたな
でもきょうはまだアップの途中というか、発声練習中というか
ホケキョの細かなパーツごとにとぎれとぎれ、ちょっとずつ歌っていて
「ホーホケキョ」が完成しない
急にあったかくなったもんね
そんな突然本番、いけないよね
うたは準備が大事
かなり近くにいる気がしたから、じっと眺めてみる
生垣の枝葉のあいだ、ぴょこぴょこ動くちいさな影
きみだね
いつもここでうたっていたのも、きみなの?
やっと顔がみれて、うれしいな
いつものように井戸水を汲む
珈琲豆を買う
ちょっと奮発して、おすしとお酒も買ってかえる
お風呂掃除のついでに自分の汗も流してさっぱりしたら、さっき焙煎してもらったばかりの豆を挽いて、珈琲を淹れる
火が入って間もない、油分がにじまずカラッと香ばしい豆
気持ちがいい
ちょっと迷ったけれど、あんまり暑いから氷をたっぷりいれて、アイスでのむ
ぽつぽつと、いろんな人からおめでとうの言葉をもらう
もうだれかに祝ってもらうようないのちでもないよなって、そう思ってこの数年は静かにしていたけれど、ことしは素直に喜んでいる
相変わらず早く終わんないかなって、底の底ではそうおもっているんだけどね、変だよね
でもうれしいね
きょうくらいはね
いいよね
去年の秋口に買って、そのまま着れずに押し入れで眠っていたおニュウのTシャツに袖を通してみる
ゆったりと肌触りが良くて、やさしいみどり
きもちがいいな
ごきげんだな
*
31歳のわたしはきのうで役目を終えたから
きょうから先は32歳のわたしが、引き継ぎます
おつかれさま
よく生きたね
どうやらまだ終わらないみたいだからさ
きみにもらったものを持って、もうすこし歩いてみるよ
*
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