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日記ふうエッセイ【ひび】

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#福永武彦

【日々】屈託なく生きたい|二〇二三年三月

二〇二三年三月二日  福永武彦『草の花』を読み切る。終盤に入ってページを繰る手がとまらなくなって、仕事の休憩時間をめいっぱい使って読んだ。弁当も読みながら食べた。そして本を閉じてのこるのは無力感。人はどんなに求め合っていても、ごくわずかなすれ違いで交わりえない。つよい愛は失うことをおそれ、過度に高潔な愛は目の前に具現するその愛の対象をおろそかにする。どうしてそのわずかの、ほんとうにわずかの差異をあわせることができないのだろう。苦しい。  つまるところは、こういうことなのか