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日記ふうエッセイ【ひび】

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#小鳥書房

【日々】屈託なく生きたい|二〇二三年三月

二〇二三年三月二日  福永武彦『草の花』を読み切る。終盤に入ってページを繰る手がとまらなくなって、仕事の休憩時間をめいっぱい使って読んだ。弁当も読みながら食べた。そして本を閉じてのこるのは無力感。人はどんなに求め合っていても、ごくわずかなすれ違いで交わりえない。つよい愛は失うことをおそれ、過度に高潔な愛は目の前に具現するその愛の対象をおろそかにする。どうしてそのわずかの、ほんとうにわずかの差異をあわせることができないのだろう。苦しい。  つまるところは、こういうことなのか

【日々】迷い走る、多摩川・谷保・阿佐ヶ谷・江古田|二〇二三年一月

二〇二三年一月十一日  駅前の井戸はまだ水が出ないようだ。年明けから、ポンプの故障とかでずっと水が汲めないでいる。それを尻目にちょっと急ぎ足で、新小金井駅へ。この駅はなんでもない街中を歩いていると突然現れるのが良い。住宅街に埋もれている。ひっそりと、ある。西武多摩川線を使うのはこれで二度目だけれど、なんだかたまらなく好きな路線だ。なんでもない営みの中をちいさく走る単線。人がいなくてガラガラ。古い車両の座席はふかふか。いい。  終着・是政までのわずか数駅を乗り通したら、多摩