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賢治先生の北海道修学旅行 3日目 5月20日午後 札幌 北大植物園博物館

宮沢賢治の花巻農学校教師時代の北海道修学旅行復命書を読み解いています。
復命書はこちらです。
https://plaza.rakuten.co.jp/kenjitonou/diary/202102150000/

一行31名は、1924(大正13)年5月18日夜に花巻を出発。

https://note.com/cxq03315/n/nd4673f954098

鉄道と青函連絡船を使って函館、小樽と見学し、この間車中泊2日の強行軍です。5月20日午後1時40分ついに、札幌に到着。
北大植物園内の博物館を見学しました。

(引用開始)
先づ博物館に入る。道産の大なる羆熊の剥製生徒等の注意を集む。されど本博物館は特に鳥類標本完備せるを以て特にその部を観察せしむ。その多くは亦岩手県に産するものにして既に形状習性を知れるもの茲に初めて学名を得たるなど効果大なりき。
(引用終了)


植物園内の博物館で、最初に生徒の注意をひいたのはヒグマの剥製でした。
北海道と岩手県に共通する鳥の学名を知ったり、学習効果が高かったようです。

(引用開始)
階上のアイヌに関する標本並に札幌附近雑草の標本亦よき教材なり。後者は、しらねあふひ、ちごゆり、はくさんちどり等殆んど岩手山の二三合目の植物にして、実に之等二地が花巻と比較して年平均四度位低温なること及植物の垂直水平両分布を説明するものなり。芝生に出でて休息し更に観覧するものもあり。
(引用終了)


ここで「アイヌ」「標本」というと、北海道大学最大級の不祥事、いわゆる北大人骨事件を思い出します。

北大人骨事件
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E5%A4%A7%E4%BA%BA%E9%AA%A8%E4%BA%8B%E4%BB%B6

しかし、アイヌの墓を盗掘し違法に保管したた人骨事件は、文学部が中心で、人骨発見場所も古河記念講堂であり、植物園の博物館は、まず無関係と考えられます。


現在の展示のように、アイヌの衣類、儀礼用具、狩猟用具などを見学したのでしょう。写真は植物園のホームページです。

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https://www.hokudai.ac.jp/fsc/bg/g_n_peoples.html

また、植物標本は、岩手県の高山植物が、北海道の平地に生えていることがよくわかり、気温と植物の分布について勉強になったようです。


写真はWikipediaよりシラネアオイです。

画像2


(引用開始)
本日は前二夜車中に在りて疲労せるを以て更に多くを企てず夕刻まで茲に止まれり。園丁よりローンモアを借りて交々芝生を刈りて遊びなどす。閉園に近く去りて道庁構内を通り旅館に帰る。
(引用終了)


なにしろ花巻を出てから約40時間、車中泊2回、ですから疲れるのも当然です。無理に移動せず、北大植物園に留まるのは良い選択でしょう。

しかし、若い、27才の賢治先生と、16才前後の生徒たちは、なんと芝刈りをして遊びはじめます。
疲れているのに元気なことですね。列車の固い座席で凝り固まった体は運動したほうがほぐれるのかもしれませんが。

前回書いたとおり芝生に感激しただけに、自分たちの芝生を管理することを想像して、芝刈りもしたくなったのかもしれません。

ローンモアー(lawn mower)は、やさしくいえば芝刈機です。手押し式芝刈機は、1830年イギリスで発明されました。

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イラストはWikipediaから。
1900年代はじめにはガソリンエンジン式ローンモアーも発明されましたが、この時代にはまだまだ高価で特殊な機械でしたから、もし植物園にあっても部外者には触らせないでしょう。きっとイラストのような手押し式だったのではないかと想像しています。

植物園が閉園するまで遊んで、北海道庁の構内を通って、札幌駅前の山形屋旅館に向かいました。

次回、賢治先生と生徒たちは、夜の札幌に繰り出します。「ビュウティフル サッポロ」!

https://note.com/cxq03315/n/n2c3ad816aa37


#宮沢賢治 #稗貫農学校 #花巻農学校 #修学旅行 #農業教育 #札幌 #山形屋旅館 #植物園

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