賢治先生の北海道修学旅行「農村景観改善と白樺」
宮沢賢治は、北海道修学旅行復命書で、農村景観の観点から、「田園を平和にする」植物として、ドイツトウヒ、白樺、ヤマナラシ、オニゲシをすすめました。
「而して之を救ふもの僅に各戸白樺の数幹、正形の独乙唐檜、閃めくやまならし赤き鬼芥子の一群等にて足れり。寔に田園を平和にするもの樹に超ゆるなし。」
前回はドイツトウヒに関係する作品を調べました。今回は白樺の出てくる作品を見てみます。
賢治は、修学旅行の2年前の1922(大正11)年6月27日岩手山の近くに出かけ有名な詩「岩手山」を書き、その日に白樺が出てくる詩「高級の霧」も書きました。
(本文開始)
岩手山
そらの散乱反射(さんらんはんしや)のなかに
古ぼけて黒くえぐるもの
ひかりの微塵系列(みぢんけいれつ)の底に
きたなくしろく澱(よど)むもの
(本文終了)
(本文開始)
高級の霧
こいつはもう
あんまり明るい高級(ハイグレード)の霧です
白樺も芽をふき
からすむぎも
農舎の屋根も
馬もなにもかも
光りすぎてまぶしくて
(よくおわかりのことでせうが
日射(ひざ)しのなかの青と金
落葉松(ラリツクス)は
たしかとどまつに似て居ります)
まぶし過ぎて
空気さへすこし痛いくらゐです
(本文終了)
白樺に景観を明るくする効果を期待した賢治ですが、ここでは、まぶし過ぎる状態になっているのが面白いと思います。
画像は、神楽坂らせん様の写真を使わせていただきました。
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