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【イベント開催報告】災害リスクとの共生を考える〜2018年西日本豪雨からの復興と教訓に関する パネルディスカッション〜(2023年10月11日)

こんにちは🌞ファンドレイジング&サポーターエクスペリエンス担当の南原です。
CWS Japanでは、今年7月に"Lessons from Mabi-Five Years of Recovery from the 2018 Western Japan Flood"にて西日本豪雨の復興過程で得られた教訓をレポートとしてまとめ、出版しました。それを契機に今回10月11日に「災害リスクとの共生を考える」をテーマに2018年西日本豪雨からの復興と教訓を取り扱ったオンラインイベントを企画・開催しました。
その開催報告として、当日の様子やお話をピックアップしてお伝えさせていただきます。

▼イベント概要はこちら

▼また出版したレポートはこちらからご確認いただけます。

なおYouTubeでアーカイブ動画の配信を行なっていますので、ぜひご覧ください。



10月13日「国際防災の日」に先んじて、今回の調査・レポートの意図(ショウ・ラジブより)

グローバルに活動を展開するCWS Japanですが、海外の現場で「日本の教訓を知りたい」というリクエストをさまざまな方からいただきます。しかし日本の教訓は多くが「日本語」で発信をされているため、実際には学びをうまく届けられないこともしばしばありました。

当イベントのモデレーターでCWS Japan理事長 ショウ・ラジブ ©CWS Japan

開会の挨拶では、CWS Japan理事長のショウ・ラジブから、そういった学びを発信する上での言語の壁、だからこそ今回の西日本豪雨にフォーカスした調査レポートでは、あえて英語での発信を重視した点、そして今回はゲストをお招きし、教訓を振り返りながら、こういった対外発信の意味についても考えていくことが述べられました。

2018年西日本豪雨の振り返り(サンギタ・ダス氏より)

次に、本レポートの調査・執筆の取りまとめを務められたサンギタ・ダス氏から西日本豪雨の振り返り、そして7月に出版されたレポートのまとめをご発表いただきました。

2018年西日本豪雨の概要(発表資料より抜粋)
5年レポートのまとめ(発表資料より抜粋)

5年を経過することで、ソフト・ハード両面での対策が進んでいることがわかりました。ソフト面では防災に関する意識の高まりが見られると同時に、ハードのみに依存しない対策の重要性も示唆しさされました。

「ビルドバックベター=より良い復興へ」(原副市長より)

倉敷市副市長の原孝吏はら たかし氏からは、ご自身が地域の住人であり、復興を推進してきた立場から、地域の歴史・水害の教訓、復興における新しい技術の活用、そして人と人とのつながりの重要性ついてお話をいただきました。

倉敷市副市長 原 孝吏氏 ©CWS Japan

地域の歴史と水害の教訓から学ぶことの重要性
倉敷市は長い歴史で多くの水害に見舞われており、実際に明治時代に水害への対策が行われました。そこから100年をかけて当時描いた治水の姿の実現を進められています。これらの歴史から学ぶことの重要性について触れられました。

最新技術の利用可能性を模索すること
また今回は最新技術、特に地理情報技術とドローンを活用し、災害後の状況を効率的に評価し、復旧と復興計画にいち早く反映できたことなども挙げられました。こういった新たな技術が災害復興の文脈で使えるということも今回の学びであったと言います。

人との繋がりと協力の重要性
最後に強調されていたのが、復旧と復興における、人とのつながり・協力の重要性です。他の地域や国からの協力も受け入れることで「ビルトバックベター=被災以前と比較して、より災害に強靭きょうじんな地域を作る」の考え方を導入し、公園事業など新たなことに取り組まれているとのことです。

多くの方が復旧に携わるなかで、人と出会い「勇気をもらった」と語る原氏。災害発生当時、復興本部に従事されている際に、説明会の場で、調査を実施したサンギタ氏と出会ったことも振り返り、真備での経験が英語で海外に発信されていくことの重要性を改めて感じられたと言います。

「地域コミュニティのつながり、ニーズの可視化が災害復興にあたって重要」(神原先生より)

次にお話くださったのは、神戸市看護大学 基盤看護学領域 災害看護・国際看護学分野 教授の神原咲子かんばら さきこ先生です。神原先生ご自身は、18歳まで真備で生まれ育ち、現在もご両親が真備にお住まいで、真備とのつながりをお持ちであるという視点も合わせて、人々が役割を超えてつながり、支え合うことの重要性についてお話をいただきました。

神戸市看護大学 基盤看護学領域 災害看護・国際看護学分野 教授 神原咲子先生 ©CWS Japan

地域のハブになる人が支え合いのネットワークを作っている
災害発生当時、ご両親がLINEを通した連絡をしたり、ご自身で直接お声がけをしながら、近隣の方を避難させた、というエピソードが語られました。現地に支援に入る存在は「外部者」であり、こういった地域「内部」のことは「内部」の方しか知らない、という視点の重要性の理解が進んだと言います。

多様化するニーズ。多様化する支援のあり方。
また同様にこういった「内部」から発するニーズに対して「外部」が適切な支援を届けることが重要である、という考えに立ち、ニーズを可視化するために「いまから手帳」を作成しました。住民一人ひとりが悩みやニーズを溜め込まずに手帳に書き出すような取り組みです。悩みを溜め込まないようにする、というのは被災者の方々のセルフケアにも繋がる効果があったそうです。一人ひとりニーズが異なる現場では、ニーズオリエンテッドな支援(ニーズをもとに設計・考案された支援)が重要であり、支援のあり方も多様であるべき、という視点が共有されました。

支援を根付かせる上での地域コミュニティ内のつながり、ニーズの可視化の重要性
そして、そういった支援が終わった後、きちんと支援が根付くためには、コミュニティのなかでのつながりがしっかり強化されることでニーズが明確になること、その上で外部の支援を求められる体制を構築できることが重要性であると語られました。

「真備町は私にとって大きな教室」(サンギタ・ダス氏より)

今回、実際に調査を実施した立場からの学びについて、サンギタ氏からお話いただきました。真備町の人々の温かさに触れながら、学びを深めることができ、まるでこの地域全体が自分にとって「大きな教室」であったようだ、というご意見を伺うことができました。文献調査ではなく現場におもむいて、定期的に人々の声に耳を傾けることで、多様な情報を収集し、取りまとめていった過程を知ることができました。

今年7月に発刊したレポートの取りまとめを行ったサンギタ・ダス氏 ©CWS Japan

教訓は発信することが極めて重要(ショウ・ラジブより)

防災の教訓をいかに次世代につないでいくか?については議論が絶えません。最後にCWS Japan理事長ショウ・ラジブから、改めて中長期的に学びを深めていくことの重要性と、その学びを発信していくことの重要性が語られました。

終わりに

今回のイベントは、災害からの復興を追った5年にもおよぶ調査の振り返りの機会でしたが、原副市長から「人の復興はこれから5年、10年かかると思う」とお話があり、まだまだ終わっていない、むしろこれからまた新たな学びの蓄積となって未来につながっていくのだと感じました。
教訓の発信はCWS Japanの活動の柱でもあるので、改めて活動の価値を考えるきっかけとなりました。

イベントの本編はYoutubeからご覧いただけますので、ぜひこの機会にご覧になってみてください。

アーカイブ配信のご視聴はこちらから

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(文:ファンドレイジング&サポーターエクスペリエンス担当 南原隆之介)


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