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世界の難民の現状|「難民」のほかにいる「人道支援を必要としている人びと」と、新たな「難民」とは

こんにちは🙂イガラシゴーです🐧
毎年6月20日は「世界難民の日」ということで、先週は私たちが実施している「難民との協働」の取り組みについて紹介しましたが、今日は「難民」そのものについて、最新の状況も踏まえながら、説明していきたいと思います。


「難民」とは?

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、2023年に全世界の難民の総数は3,000万人を突破し、2024年現在、その数は3,600万人を越えたと言われています。これは世界第2次大戦以降最悪の規模に膨らんでいます。

皆さんは「難民」と聞くとどのような人を思い浮かべるでしょうか。戦争や紛争の影響を受けて、命からがら祖国を逃れてきた人たち。人道支援を必要としている人たち。そんなイメージをお持ちの人も多くいるかと思います。

UNHCRでは、下記のとおり説明されています。
「1950年UNHCR事務所規程、1951年難民条約、1967年難民議定書において、難民は、人種、宗教、国籍、政治的意見または特定の社会集団に属するという理由で、自国にいると迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れ、国際的保護を必要とする人々」

ここでいう狭義の「難民」とは、社会・政治的事由により国境を超えて他国に逃れ、保護が必要だと所定の条約・規定等に照らし合わせて認められた人々とも言い換えられます。

「難民」のほかにいる「人道支援を必要としている人びと」

ここで狭義の「難民」を離れて、そのほかに「人道支援を必要としている人びと」とはどのような人がいるでしょうか。

国内避難民

英語でIDPs(Internally Displaced Persons)といいます。難民が「国境を超えて」逃れた人びとであるのに対し、自国内で逃れている人びとを指します。

法的立場の弱い国外ではなく自国に留まっている人ということで難民より有利な立場かと誤解されることもありますが、迫害を受ける自国を脱出するだけの手段や方法を得られない、より弱い立場であるという場合が多くあります。前述のUNHCRのデータによると2024年の「難民」は3千6百万人超であるのに対し、IDPsは6千2百万人を超えています。当該国政府自体が迫害を加えている場合は、外部からのIDPs支援が難しいというのも特徴的です。

庇護ひご希望者

英語でAsylum Seekerといいます。狭義の難民が国連や各国受入政府など公的認定を受けているのに対し、現在人道危機状態にあるが、こうした認定を受けておらず、これを求めている人たちを意味します。

難民認定の有無を問わず、人道危機に直面している人々には、基本的人権に基づき支援を受ける権利があり、こうした人々を迅速に保護し、適切な支援が受けられるようにアクセスを確保することも人道支援の重要な役割の一つです。

帰還民

自国に戻った難民はすぐに元の生活に戻れるわけではありません。紛争や社会的荒廃により、生活基盤を失い、元いたコミュニテイも消失している場合もあります。また、人によっては難民として何十年も自国を離れていた人や難民として逃れた先で生まれた人もいます。

こうした帰還民の新たな生活のスタートを支え、より確実で安定した復興を支援することも人道支援に欠かせない一つの側面です。

2023年に急増したパキスタンからのアフガニスタン帰還民 ©︎Léo Torréton/IOM

無国籍者

難民として逃れた先で生まれ、自国でも避難先の国でも国籍を取得することが叶わないなど、そのほかさまざまな理由から無国籍者となっている人びとが世界には500万人弱います。

こうした人々は法的にもさらに弱い立場になっており、庇護を申請する際も公的文書がないことから、かなりの不利益が生じています。

受入コミュニティ

自国を離れた難民の大多数は、その近隣国にいます。例えばアフガニスタン難民の最大の受け入れ国は隣国のパキスタンとイランになっています。

しかし紛争や戦争当事国の近隣国も社会的・経済的課題を抱えている場合も多く、さらに難民が物理的に流入する国境付近は、その国の首都から離れインフラが遅れていたり、経済的にも脆弱な地域であることが多くあります。

そうした難民を受けいれるコミュニティを支えることも、人道支援が果たす役割の一つとなっています。

新しい「難民」?

狭義の「難民」とは、1950年代から1960年代にかけて定められた条約等に照らし合わせて社会・政治的事由から逃れた人びとでした。しかし、地球規模課題は刻々と変化しています。例えば、海面上昇に伴い沈み行く大洋州の島国の人びとなど、気候変動や環境の変化などにより自国に住めなくなり、逃れた人びとは「環境難民」として認められるのでしょうか。

経済の崩壊などにより、飢餓に直面した貧困状態の人びとが自国から逃れようとすることを「経済難民」として認められるのでしょうか。

性的マイノリティを含むジェンダーなどに基づく差別が、法的または社会的構造として存在する国から逃れる人は「難民」なのでしょうか。

守れる命を守るために

人権に対する考え方や地球環境の変化を受けて、支援の対象者の定義やアプローチの仕方も見直されています。CWS Japanは「難民」という言葉の定義にとらわれることなく、一人ひとりの人間と向きあい、誰一人として必要としている支援から取り残されることが無い世界が実現できるように活動を続けていこうと、「世界難民の日」を目前に改めて想いを巡らせました。

柔軟で、きめ細かい支援を届けるためには、皆さまの理解と温かいご支援が必要です。今後とも引き続きの応援をお願いいたします。

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※CWS Japanに対する寄付は税控除の対象になります

(文:プログラム・マネージャー 五十嵐豪)

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