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新緑のもみじ

ドンッという大きな音と同時に放り投げられる‥ドカッと打ち付けられる体‥空に浮かぶ意識‥。
「何かわるいことしたかな‥」
目に映る青空、何故か遠くにある新緑のもみじの葉の葉脈まではっきりと見えている。
もっといい人生を贈りたかったよ‥あなたに‥子どもに、夫に、親に‥。
もうずっと前から目も霞んでいて
仕事も続けていけるか不安の中で過ごしていたから‥解放された‥ごめん。
いつまでもつかわからない身体だった
家族を支えるためがむしゃらに頑張ってきたけれど
仕事を続けることが怖かった、本当は見せかけだけの張子の虎、自信なんてないの‥。
主人が病で倒れてからは子ども達のためだけを考えて生きてきた‥。
障害を負った主人と結婚生活を続けてきたのも
母と同居を決めたのも全部わたしの都合
家族のために働き出したから、子ども達が学校から帰ってきた時にわたしが居てあげられないのが悲しかった‥せめて障害の父親でもいいから居て欲しいと願った‥。
慣れない仕事でくたくたになって帰宅する夜‥洗濯、掃除、主人の介護までしていたら今度はわたしが倒れてしまう‥独り暮らしの母を呼んだのはそんなわたしを助けて欲しかったから‥。

子ども達を大学まで行かせてあげたい
もう貧乏は嫌だ‥だからもうひと頑張りしたかった‥。

新緑のもみじは幼かった時の息子の掌、お日様に透かして可愛く揺れている。
新緑のもみじがわたしの記憶をフラッシュカードのように呼び覚ます。
あなたを真ん中にしてその手を握ってあげれなかったパパの麻痺した手
「もう歩けない」とダダをこねる息子を抱き上げれなかったママの腕
その時わたしは車椅子を押すのに精いっぱいだったから‥ごめんね‥。

新緑のもみじが、わたしの顔を撫でるようにそっと揺れる‥気にしないでいいよママ‥。

ねぇ教えて、突然の出来事に君は怒っている?
人生の歯車が狂っちゃうから?

うつむいてしまって泣いているの?
心にポッカリ穴が空いた様だから?‥。


あのね、看護師さんが教えてくれたんだぁ
わたしの耳はね最後まで聞こえているんだって‥
君の話を聞いてあげるよ‥愚痴でも何でもいいからねぇ‥だから最後まで話しかけてくれる‥淋しがり屋のわたしのために‥。

あとはきっとうまくいく‥人生って何とかなるもんだよ‥ほら、わたし達家族凸凹だったけど、いつも何とかなったでしょ‥。

ごめんね‥本当はもうギリギリだったんだ‥霞んだわたしの目は、あなたの顔を磨りガラス越しに見ているようで、時折はっきりと見えていなかったの‥

お願いね‥最後は「よくやった」と褒めてくれるかな?‥小柄なママは頑張ったんだから‥。

そして大きくなったあなたの掌で、優しくわたしの頬を温めて‥
楽しかったよって送り出して‥。

ありがとう‥。




詩みたいなもの
散歩しながら一瞬スローモーションのように見えた景色、
思いついてその場でスマホに打ち込んだ文章
目の不調はノンフィクション
70歳まで働ける職場だけど60歳で退職したいと思っているわたし(笑)









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