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与える人になりたい‥。

与える人になりたい。

そう思って幼稚園の先生になったけど
気が付けば小さくて可愛らしい子ども達から沢山の愛を貰っている‥。
与えるつもりで行ったのに毎日たくさんの『愛』を貰って家路に着く。

「お待たせしました、おはようございます。みなさん順番にバスに乗りますよ。」

「せんせい、おはよう」
「おはよう、あっくん、バスのステップに気をつけてね。」
「はづきちゃん、座る席は、後ろの席の窓際からよ。」
「いつきくん、バスの中は、座って下さい。」子ども達を座席に座らせた後
路瑠はクルッと向きを変え、バス停の保護者のみなさまに
「それでは、いってきます。」と頭を下げバスの昇降口の扉を閉める
幼稚園バスは園児を乗せて走り出す。次の停留にもその次の停留所にも、
園バスを待っている親子さんがいる。

黄色いバスは人気者で、お母さんから離れ難くてちょっぴり不安そうな
子どもの気持ちを和らげてくれる。
くるま好きな子どもにとっては、毎日が『特別な黄色いバスに乗れる日』
バスに乗れる時間が待ち遠しくてワクワクしてる。

年長組のおませさんにとっては、バスの時間がお手紙交換タイムだったり、楽しいおしゃべりタイムだったり。
 
そして、バスの中で聴く紙芝居タイムも人気。
路瑠は紙芝居を手に持って

「さあ、お話するよ。立つとあぶないからお耳だけ聴いてね」と言って、
読み始める。
子ども達の声で騒がしかったバスの中も、路瑠の読む紙芝居を聴きたくて、静かになる。

紙芝居は『お爺さん』『お婆さん』『子ども』おまけに『動物達』の声も使い分け、表情、息遣い、抑揚‥どれも子ども達の気持ちを捉えて離さなかった。
路瑠も子ども達が物語の世界に惹き込まれていく様子がとても嬉しかった。
路瑠の声と眼差しは、子ども達に優しく向けられている。


園庭や園舎では元気いっぱいの子ども達、
ヒーローやプリンセスに成り切って、ポーズを決めてあそんでいる。
「何やっているの?」と子どもの輪に入っていきたくなるが「せんせいあっちいって」と近寄ると照れてしまうから、そっと見守るのが大事、子どもはイメージを広げてあそんでいる。

お洒落に夢中な子どももいる‥今日の素敵な髪飾りや小物を見せあっては微笑み合う。
こっちではバックに付けているキーホルダーを見せ合っては、
「俺の方がカッコイイ!」「いや、わたしでしょ!!」と顔を寄せては
一生懸命に自慢し合っている姿も可愛らし。
 
アイドルの曲を口ずさみ振り付けを完璧に真似して踊っている子ども達や
側転をマスターしたい子ども達、どちらもクラスの部屋を広く使って
自主練習中。
 
中には、おませさんもいて
「せんせい、好きな人いるの〜」とからかう子ども達も
きっと自分に好きな子がいるのだろう、だから先生の話をちょっと
聞きたい‥プチプチのプチ恋愛相談のようで、それもまた愛おしい。


『与える人になりたい』そう思って幼稚園の先生になったけれど

気が付けば小さくて可愛らしい子ども達から沢山の愛を貰っている‥。

与えるつもりで行ったのに毎日沢山の『愛』を貰って家路に着く。

与える人になろうと思ったのに
与えようと思ってない純粋な子ども達から、
せんせい『大好きよ』のメッセージを貰っている。


きっと
与える人になるために大切なことは、
頑張ろうとすることではないのだなぁ‥。

また、『与えるものが無い』と嘆くこともないのだなぁ‥。

私達はすでに持っている。
それは『持ちものの数』ではなく、
すでに自分自身が『持っているもの』に気付き感謝すること。


私たちは、『持っていない』と思っているけれど『沢山のもの』を持っている。
友と共に喜び微笑みあい。
平和を祈り、
いつも寛容でいて
人と自分に親切に

見ていないところで小さいながらも善意を行い
自分の気持ちに誠実になる。

日々柔和に過ごし慎む心を忘れない。

 ”愛は寛容であり、愛は親切です。また人をねたみません。
愛は自慢せず、高慢になりません。礼儀に反することをせず、
自分の利益を求めず、怒らず、人のした悪を思わず、不正を喜ばずに真理を喜びます。
すべてをがまんし、すべてを信じ、すべてを期待し、すべてを耐え忍びます。
愛は決して絶えることがありません。”
                  コリント人への手紙第Ⅰ 13:4〜8                             

路瑠は完璧な保育士ではない。
出来ないことを数えれば、切りがない。
今ある、自分で満足し自分に出来ることで
『何かを与えているかなぁ』と喜び。
小さいことに感謝して、絶えず子ども達の成長を祈る。
そんな、保育士(人)になりたいと思っている。


第14話

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