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【ライブアイドル】2022年女性アイドル良曲9選

2022年、コロナ禍になってからライブアイドルオタクに復帰した自分も、これで出戻り3年目になりました。
自分のライブレポを振り返ってみると、ある時期に特定のグループに集中したかと思えば何カ月か後には全く違うグループばかり書いていたり、偏りと飽きがモロに出ているのはどうにかならないものかと反省しているのですが、その繰り返しの結果昨2021年からは観るグループが徐々にシフトしていきました。
今回は、暮れに差し掛かっているということでライブアイドルのジャンルに限定した「個人的2022年楽曲大賞」を書いていこうと思うのですが、取り上げるグループで去年と被っているのは1組しかいないのが、移り変わる興味を象徴しているかのようです。

全部で9曲。
あらゆるライブアイドルを知っているわけでもなく、自らの歴史の思い入れとインスピレーションを重視して選んだ9曲です。


◆アップアップガールズ(仮) / アルストロメリア

これまでにない曲だなという直感がありました。

アップアップガールズ(仮)、通称アプガは自分がコロナ前から知ってる数少ないグループです。
ツアーがあれば遠征に付いていくこともありましたし、大規模フェスでも一目瞭然なメンバーカラーの上に白で大きく「(仮)」と書かれたTシャツは、なんだか看板を背負っているかのようで誇らしくて好んで着ていました。
オリジナルメンバー7人で活動していた頃なのでもう6,7年も前のことでしたが、当時のアプガに対してあったのは攻撃的でアッパーなイメージ。
運動量が多く、アスリートばりのトレーニングを欠かさないと怪我してしまうくらいの振り付けの激しさもさることながら、ノンストップでの長時間ライブや富士山山頂でのパフォーマンス、現体制では特撮に使われる爆破演出に囲まれながらのライブなど、とにかく「無茶なこと」が多い。
限界に挑むアスリートのような無謀さとアプガはセットでした。
ライブは戦であり、ライブハウスは戦場だったのです。
もちろん観客も無関係ではなく、フリコピして声を出して...と、メンバーが煽るがままに盛り上がっていくといつの間にかアプガTは汗で濡れ、息は切れて思わず膝に手をついてしまいます。

あれからしばらく経ち、自分がライブアイドルから離れて戻ってくる間にメンバーは大きく変わりました。
オリジナルメンバーは関根梓さんのみになり、2021年頭からは7人のメンバーが加わって8人体制となりました。
ただ、だからといって根幹が揺れ動くことはありません。
自分が新体制のアプガを観たのは発足からちょうど一年の「NPP2022」でしたが、顔ぶれが一新されたところでおとなしくなるわけもなく、引き継がれた楽曲と熱いステージがそこにはありました。

もっともそのとき一曲だけ、何か違うなと感じた曲がありました。
それが、当時新曲として披露された「アルストロメリア」でした。

印象的だったのがこのフレーズ。
「強いハートはこのもろい心臓の下で待機しているんだ」
弱さを認め、膝をつきながらも上を見つめているような歌詞に、攻撃あるのみだったこれまでのアプガ像にないものを感じたのです。
初見の曲で歌詞も分かりません。
でもラスサビのこのフレーズだけは、文字が形を帯び、まるで3Dのように目の前に飛び出して来たのを覚えています。

「痛みを恐れず 抱きしめた...」
ラスサビ直前のパートは8人のコーラスです。
ここは腹の底から響いてくるような低音で、低く低くかがむからこそ高く飛べるのだと説いているように聞こえました。
アプガの曲でここまでの低音は聴いたことがありません。
曲名にある「アルストロメリア」は「持続」「未来への憧れ」「エキゾチック」などという花言葉がつけられた、スイセンの一種です。
地を這い、深々と根っこを下ろす様子がタイトルに反映されているのでしょう。

なんだかこの一連の歌詞に、厳しいアイドル戦国時代をサバイブし、ようやく抜け出したと思ったらコロナで命ともいえる声出しを奪われるなど、葛藤や苦悩を抱えて10年以上生き続けてきたアプガというグループの生きざまが凝縮されているような気がしました。
「音と心を乗せて届けたいと思います!」
MCで叫んだ関根梓さんの言葉も思い出されます。

自分のオタク史を振り返りながらじーんとなったこともあり、このような印象的な歌詞が2022年一発目の個人的楽曲大賞を決定づけたのですが、他パートも素晴らしいです。
ギターの音を先頭に、前夜の予感を感じさせるイントロ。
Aメロの工藤菫さんの歌いだしではバスドラに合わせて足を刻みたくなり、ここはいつものアプガっぽいと言えそうです。

聴かせどころであり泣きのフレーズは古谷柚里花さん(2番では関根さん)が歌うBメロ。「聖者が目指したその場所へ(傷口癒しながら染み込む)」の「場所へ(込む)」のファルセットは、音が止んでそれまでのメロディーとの対比で柔らかさや美しさがあります。
浮動する音程をコントロールするだけの歌唱力があり、歌声に儚さを込められる二人の存在感が光っていました。

「この足でまた踏み出せるように今キツく紐を結んで行くよ」
サビのリズムに合わせて拳を振るところでは、注目したいのが入りの足です。
ダンスショットがYouTubeに上がっていて非常に分かりやすいのですが、左足を上げて勢いよく下ろしつつも床に着いたときにはピタッと止まっています。
ここが流れないのがすごい。
止めたことで行き場を失ったエネルギーは8回ぶんの腕の振りに発散され、動作のつながりが意識されています。


◆翡翠キセキ / 曖昧、愛

MV大賞があるならば、この曲ではないかと思っています。

楽曲大賞含め、一曲についてじっくり書くときはあらゆる情報が材料になります。
音源を聴きこむだけでなくライブで観たときの感情を思い出し、MVなどの動画が上がっていればそこから何か得られないだろうかとイメージのヒントを探します。
インタビューがあればさらにやりやすくなります。

9月2日にリリースされた翡翠キセキの「曖昧、愛」を知ったのはツイッターからでした。
自分が好きな透色ドロップの同事務所ということもあり、ファン層も被っているので放っておいても情報が入ってくるのです。
リリース当初からかなり話題になっていたように思います。
自分も誘われるように音源を聴きに行った結果メロディーに惹かれ、もっと知りたいし書きたいという思いからMVを覗きました。
あくまで感想を引き出す補助のつもりだったのですが、面白いことに回数を重ねるごとにハマっていったのはメロディーよりも映像でした。

現在位置を書くと、新体制になって数カ月のグループです。
2021年6月の結成から4人→3人となって2022年5月には2人卒業、7月の4人加入によって5人組となりました。
新メンバー4人とも加入当初はまだ10代で、恐らくアイドル経験も過去なかったようです。
図式的に言えば、年上で場数を多く踏んだオリジナルメンバー・仲谷水伶さんを頂点とした実力差があるのかなと単純に考えていたのですが、4人とも加入して間もないころのMVとは思えないほど躍動していました。
5人の個性がこれでもかというくらい伝わってきます。
カメラが切り替わるたびに主役が変わっていくようでした。

吸い込まれそうな黒目の真白さくらさんに、口を大きく開けて責め立てるような守屋風香さんの感情は「怒」に満ちています。
山本舞奈さんはメンバーの中で唯一引いた演技で、たった一人不安を抱えているようです。
冷めて刃物のように鋭い仲谷さんの目つきだったり目線の流し方。
左から右にずれていくカメラよりちょっとだけ早く動くのがポイントです。

そして何よりもの衝撃が、最年少のメンバーでした。
朝海いちかさん。

腕や手を小道具かのように扱い、「甘い誘惑になんて~」でニヒルに笑ったかと思えば瞬きの間に目から光が失われています。
この切り替えの早さたるや。
口角をわずかに上げる表情も上手く、10年近く前に見た東京女子流の「Limited Addiction」という曲での新井ひとみさんの表情を彷彿とさせました。
ただ物ではない。
4分弱で重々理解しました。

初めて観たときは、どうして皆重々しい表情で歌っているのだろうと思ったものでしたが、回数を重ねていくと中途半端な表情では成り立たないと思うようになってきました。
曖昧ではいけないのです。

ただ、何回もリピートしたくなる理由は果たして5人のスキルだけなのでしょうか。
繰り返して観ながら考えてみると、カット割りの秀逸さも光るのではないかなという結論に行きつきました。
考えてみれば非常にシンプルなMVの構成です。
場面は渋谷に各人散らばって撮影したであろう屋外のリップシーンと、ライブハウスでのダンスショットという2種類のみ。
後は冒頭など少しの雑踏シーンがあるくらいです。
画面右側には2行の歌詞が縦書きで置かれているというもので、考察しがいのあるストーリー性が盛り込まれているわけでもありません。
となると、特に表現力が要求されるリップシーンの役割は山場を作るうえで重要なはずです。
どんな表情で過ごすかということはもとより、それぞれの表情を変えていくタイミングも、適当でいいわけではないでしょう。

何かを撮ろうとすら思ったことがない素人の自分が出来栄えをあれこれ論ずることはすべきではないのでしょうが、「曖昧、愛」のカット割りは素晴らしいなと思いました。
例えば山本舞奈さんがアップになる「気休めメディスン...。効果ないでしょ!」。

諦めたように目線を落とす山本さんの表情も良いのですが、それを捉えるカメラもまた秀逸です。
山本さんが目線を落とし切る直前、まぶたがぴくっとなるところで次の場面に切り替わるのですが、落ちきってしまう様子を見せないところに奥ゆかしさや想像をかきたてる余白がありました。
削ったのは1秒にも満たないでしょうが、その1秒を削って全てを明らかにしないのが良かったです。

仲谷さんの外でのリップシーンからダンスショットでの顔アップになるところも絶妙で、繰り返し見るということは「見ていられる」と同義なのだなと実感を深めました。
アイドルのせっかくのビジュアルを出さないわけにいかないから仕方なく...といった消極的な動機ではなく、シンプルながらも構成が練られ、5人が良いところに配置された映像作品でした。

最後に、耳を通して感じる曲そのものについて。
前体制と引き合いに出して恐縮なのですが、4人もの新メンバーをむかえてグループが生まれ変わると聞いたとき、一番気になったのが歌声でした。
白松さんや神谷さんが居たころの前体制3人の翡翠キセキはまず歌声が特徴的で、中低音が良く響いていました。
お腹に効いてくる幅広の音は他グループではなかなか味わえないものです。
特色あるこの歌声が新体制でどうなっていくのか。
しかも新メンバーはかなりの若手と聞きます。
メンバーが総入れ替えなら別物のグループとして受け止められたのでしょうが、なまじ仲谷さんが残るだけに、歌声だけで言えば仲谷さんだけが浮くような感じになるのかなと思っていました。


気がかりまじりで聴いたのがこの「曖昧、愛」だったわけですが、流石にメンバーが変われば色は変わっていました。
ユニゾンなどはかなり違います。
ただ、少しアングラな翡翠キセキらしさみたいなものは保たれているように思いました。

配信ライブを観ても、全員がインパクトの強さを意識しているからなのか既存曲でも違和感がなく、既に5人での翡翠キセキがちゃんと形を持っているように感じました。
余計すぎる心配だったようです。
ただ、ここまで書いておきながら恥ずかしい話なのですが、自分はまだ新体制の翡翠キセキを生では見たことがありません。
曲を聴きこむことで愛着も大分湧いてきました。
近いうちに行ければなと思います。


◆夢みるアドレセンス / アクセラレーター

翡翠キセキ同様、「夢アド」もメンバーをがらりと入れ替えて新体制となったばかりです。
初めて聴いたのが、5月12日の新体制お披露目ライブ。
この日に新曲として初披露されたのが「アクセラレーター」でした。
いわば、新体制8人の船出を飾る曲です。
11月には、夏フェスの時期に発表した「夏が来たぜ!!」との両A面シングルをリリースしました。


バンドサウンドが軸にあり、中でもギターがワントップでメロディーをリードしていく流れは、グループのこれまでの曲でもみられました。
「夢アドらしいな」というのが第一の感想です。
和製英語である「アクセル」の正しい英訳「アクセラレーター」がタイトルになっているだけあり、障害物があろうがそれを蹴散らしながら前へ前へと速度を速めていくようです。

冒頭を歌うのは、前体制からいる鳴海寿莉亜さんと日比谷聖來さん。
「全部捨てても叶えたい夢がある いつまでも覚めないアドレセンス」
ライブアイドルとして戦ってきた経験みたいなものを感じます。
歌声はたくましく、まずこのパートだけで固い意志みたいなものが伝わってきました。
そのあとを継いでいくのが新メンバーです。
生で聴いたとき、現体制が夢アド史上一番歌が上手いのではないかと感じました。
冒頭の2人もさることながら、新メンバーがすごい。
なかでも特筆したいメンバーが2人います。

まずは最上真凪さん。

最年少の大学生メンバーで、大学生活もかなり忙しそうです。
最上さんはこの曲で落ちサビや重要なパートを任されていて、鳴海・日比谷ペアの後のAメロ歌いだしやサビ頭、そして落ちサビにアウトロ直前の最後のフレーズなど、これら全てをセンターで堂々と歌っています。
歌声は軽々と出ているような感じで、変な引っかかりがなく耳を通り抜けていくところが魅力だと思いました。
ルッキズムに抵触しそうで声を大に言えるものでもないですが、ビジュアル的にも「これからどうなっていくんだろう?」と成長曲線を想像させるという意味でもセンターが適任な気がしていて、そうした期待は内外からかかっているのでしょう。
メンバーカラーは赤。
かつてのセンター・荻野可鈴さんがまとった色です。
夢アドにとってのエースカラーは、主人公感のある赤なのかもしれません。

そして柊木まあやさん。
柊木さんは最上さんに増して脱力して、それでいて音をしっかり捉えている印象を受けました。
音量的にも物足りなさがありません。
「とっくに覚悟決めてるはずなのに」
落ちサビのこのパート、どこにも力を入れずに難しい高音を出していて、聴いていて気持ちが良かったです。

柊木さんで印象に残っているのが、8月28日開催のアットジャムEXPO。
3日開催の最終日でした。
一言でいえばその表情にあります。
力の入る「アクセラレーター」で他メンバーの顔がこわばっていく中、柊木さんだけは脱力した笑顔を崩しませんでした。
( ̄▽ ̄)←こういう顔文字に似ているとファンから言われ、本人としても自覚があるようなのですが、まさしくこの顔つきでした。
アイドルの見せる表情は何パターンかに分けられると思うのですが、そのどれにも当てはまりません。
型破りの笑顔でした。
それでいながらライブでも崩れない上手さがあるという印象です。

夢アドは、コールありの時代に自分がライブを経験した数少ないグループです。
一時期通っただけに、「ステルス部会25:00」などで声が出せない(最近はコール可が増えつつはありますが)ことに割と大きな消化不良感を抱えていたのですが、一方でコールがどれほどアイドルの歌声を支えていたのかということに気付かされました。
声もなく、しんとしたフロアに響く歌声は、なんとも思わず「日常」を享受していたあの時からは考えられないほど無防備です。
それで露呈されるのが真の実力、地肩ということになろうかと思うのですが、取り上げた2人のみならず新メンバーはコールなどに頼らなくても十分なほど一本立ちしていました。
上から目線な物言いになってしまいますが、過去のライブを思い返してもこれほど安心して聴いていられることはなかったのではないかと思います。
いや、なかったのではというよりありませんでした。

アイドル戦国時代と言われる頃から第一線で走り続けてきた夢アド。
近いところ、あるいは遠巻きから見ていて感じたのが、このグループは常に曲の話題性で頭一つ抜けながらここまでやってきたということです。
「アイドルレース」「ファンタスティックパレード」「くらっちゅサマー」「サマーヌードアドレセンス」...有名アーティストからの提供ソングや往年の名曲カバーなどを交えながら非常にウケが良くて踊りやすい曲をリリースしてきました。
アイドルファン的にはグサグサと刺さってくる「メロンソーダ」は時に他アイドルの生誕祭でカバーされるほどの人気曲です。

ただ、個人的にはそうした状況に少しばかりモヤモヤしていた部分がありました。
曲のしみ込みやすさや「夢アド」という看板だけが先行しすぎて、カバーされるわりに今の夢アドが語られることも、注目されることも極めて少ない感じがしていたのです。
現役グループの曲がそうした機会でカバーされることは、フェスティブやわーすた、あるいは白キャンなど他有名グループでもたびたびあります。
あるにはあるのですが、夢アドはかれらとは違って曲の話題が現体制への注目の遥かに先を行っているような気がしていて、それが残念でした。
今に全くスポットライトが当たっていない。
それだけオリジナルメンバー5人や、その後入った山口さんや「メロンソーダ」のヒロイン・山下さんらの威光が大きすぎるのかもしれませんが...

そこにあってリリースされた、8ビートに合わせて拳を振る「アクセラレーター」は、なんとなく溜まっていたモヤモヤを吹き飛ばしてくれる感じがしました。
カバーされることは想定していないでしょうが、頻繁に出てくる「アドレセンス」というフレーズだったりそれに合わせた「バイ夢」のポーズは、夢アドでしかできません。
お披露目の時に着ていた真っ白な衣装は、過去から解き放たれ、まっさらになった今ここから歴史を創造していくという意志の現れだと思っています。

収録の両A面SGリリースにあたっては、かなり前から気の遠くなるような過密スケジュールでリリースイベントが組まれていました。
ビラ配りで掲げた10000枚という目標枚数しかり、止まったら押し戻されていく流れに逆らうようにあえて身を置く経験をすることで、ちょっとのことではびくともしないグループになろうということなのかもしれません。
それら全てを背負った「アクセラレーター」はグループを大きくするためのサプリメントでもあり、あるべき姿でもありました。
これは全くの推測ですが、おそらくメンバーはリリースイベントで何度となく歌う中で、ファンに向けて力強いこの歌詞を歌っている一方で、その言葉が自らにもどんと響いてきているのを感じていたかもしれません。
加速していく夢アドは、2023年からも非常に楽しみです___

こんなテンプレ的な文で終わりにしようかとおもっていたのですが、ある違和感をまだ消化できていないことにふと気が付きました。
そういえばこの曲、不思議な歌詞です。
ライブに行っていないのでさほど耳にする機会もなく、サブスク配信もCDリリースまでなければ未だ歌詞はどこにも転がっていないので腰を据えて考えることがなかったのですが、どうやらこの曲、「夢に向かって加速していこう!」だけがテーマではなさそうなのです。

引っかかるのがこうしたフレーズ。
「どうして揺れ動くの恋心」
「君の胸に飛び込みたいよ できるなら今すぐに」

全部捨てても叶えたい夢があると言っている裏側では、こうした実に恋愛的な感情を引きずっています。
勢いの良さに隠れてほとんど気が付きませんでした。
その意識のもとに歌詞を聴いてみると、夢と恋とがカードの裏表をひっくり返すがごとく行き来していることが分かります。

夢アドとして決意を語る一方で、全く関係ないところに特別な「君」がいる。
そうなると「いつまでも覚めるな アドレセンス」という言葉も、夢アドが末永く続きますように、というグループに対する願い以外の意味が含まれているように感じます。
アイドルの設定を通しながらティーンの恋愛を描いた「メロンソーダ」とも繋がっているのか、などと考え出すとよく分からなくなってきました。
ただ一つ言えそうなのは、この曲はどこに光を当てるかでまるで対極の顔を見せるのだろうなということです。


◆SUPER☆GiRLS / Summer Lemon

2010年のメジャーデビューから12年。
メンバーの卒業と加入を繰り返し、第5章となった今でも、当時から根付いている「スパガ=夏曲」の公式は健在でした。
冒頭、指を滑らせてオクターブを通過する「グリッサンド」の音が聴こえてくるだけでなぜだかテンションが上がります。
始まってもいないのに、楽しさは保証されたようなものだとここで浮足立ってしまいます。
理屈とかではなく嗅覚的なものでしょう。

「Lemon! Come On! Lemon! Come On!」
ブラス調のメロディーに乗った明るいコールを耳にすれば嫌でも目線が持ち上がり、メンバーが9人と多いだけに祭りが始まった気がしてきます。
伴奏はこの上なく小気味のいい4ビート。
その中心となるドラムは出すぎず黒子としてリズム隊に徹します。
浮足立つ曲調の中だと、淡々としたこの音がメトロノームより正確な気が(打ち込みなので正確なのは当然なのですが)してくるから不思議なものです。

全員が参加する主旋律で倍音っぽさを出したり、「wow wow wow…」と合いの手を入れられるのは、人数の多いスパガならではでしょう。
その声は、バックに流れるブラス隊のようにも聴こえてきます。

作詞作曲は杉山勝彦さん。
坂道グループに始まり数々のアイドルに楽曲を送り届け、実績あるクリエーターに弱いアイドルオタクからは尊敬のまなざしで見られている存在です。
恐らく、杉山さんの中では受けるアイドルソングの方程式が確立されているのでしょう。

ソロで抜かれるMVのリップショットを意識した上で「飲み途中の」「躊躇もせずに」という歌詞をさりげなく入れる事もすごいのですが、天才的な「発明」だと思ったのが、レモンと「悶々」の語感を組み合わせたこと。
それだけでなくじれったそうな語尾の「~だもん」とも重ねています。
間奏の「mon mon」から、サビで連発される「だって好きだもん 君が好きだもん」「ホント好きだもん」など終わりが「~もん」で統一されたフレーズからは、みずみずしさやのビジュアルや勢いだけで何とかするような青春感、さらには爽快感など様々なものがやってくるような気がして、そのどれもが見事にマッチしています。
レモンはそのシンボルなのだと刷り込まれるわけです。
加えてここのフレーズは一拍目のアクセントが意識されていて、「だってきだもん 君がきだもん」、太字にしたここの踏み込みかも強く、気持ちよさがあります。
自分が思うに、「Summer Lemon」でいうところのレモンのビジュアルは、レモンジュースでも半分に切ったレモンの切り口でもなく、まるまる一個の果実。
やや大げさな話ですが、この曲を知る前と聴きこんだ後ではその辺のスーパーに並んでいるレモンに対するイメージまでもが変わってしまうような気もしました。

スパガはいつも、シングル表題曲に対してMV一本のみではなくダンスショットやソロショットなどいくつかの動画を作っています。
「Summer Lemon」では「Recording ver.」を見つけました。
9分割の画面の中に、ヘッドフォンをしてマイク越しに譜面を見ながら歌うメンバーの横顔が映し出されています。
始まってすぐに右上を見てしまいました。
そこにいるのは坂林佳奈さんです。
坂林さん、歌いながらカメラ目線になったり、オーバー過ぎる身振りをつけたり、ただレコーディング中の横顔だけ見せてもつまらないだろうと4分弱でのサービス精神がすさまじい。
手を振ったときにぶつかったマイクスタンドは揺れて、シュールです。
概要欄には#かなぽんおちついて のハッシュタグがつけられていました。
コメント欄でも9割方は坂林さんの話題です。
ユニゾンの田淵みたいな落ち着きのなさに終始気を取られてしまいました。


◆群青の世界 / However long

2022年1月の頭にリリースされたこの曲も、手がけたのは杉山勝彦さんです。
初披露は、個人的にここ1年のベストライブに入ると思っている、昨2021年12月のワンマンライブ兼ツアーファイナル「Blue Symphony」東京公演のアンコールです。
今回取り上げた8組のうち、去年も書いたのは群青の世界のみでした。
ある種当然のことながら、ここで取り上げるグループのほとんどは、自分がその時ハマっている(た)グループです。
2年連続で入っているのは、のめり込み過ぎず、しかしツアーや定期公演はしっかりと追いかけるという程よい距離感を保てている結果でしょうし、とりわけ群青の世界はそうした見方を最後までしていたいので、来年も大事に観ていきたいところです。

「ガタゴト 電車の隣に座ってる君」
絡まった糸を解くようなイントロの後、水野まゆさんの歌い出しで始まるこの曲。
歌詞は、杉山勝彦さんがメンバー5人(当時)に個別に話を聞き、それぞれから引き出した言葉に着想を得て紡がれていったそうです。

恐らくですが、水野さんにはじまり4人のソロで繋いでいくABメロでは、自身の発した言葉なりニュアンスが何かしらの形でそれぞれのパートに入っているのでしょう。

冒頭に続く言葉は「Bye-Byeの駅まで もう5分も残ってない」
後に出てくる「君の駅告げる車内放送」など含め、表面的にすくい上げると恋愛ソングの雰囲気も感じるのですが、「あなたにとってアイドルとは?」「ファンとは?」などと杉山さんから訊かれたであろう質問の回答がこの中に入っていることを思うと、「共依存しながら 売り物じゃない季節を君に捧げたい」などという歌詞の真意を考えてみたくなります。

共依存。
一宮ゆいさんが、面談で実際に語ったフレーズだそうです。
ファンとはどういう存在?
その前には恐らくこんな質問があったのでしょう。
この3文字を、自分はこのように捉えました。
互いに互いを必要として認め合い、その関係性が脆いことも分かった上での付き合いがアイドルとファンという関係なのだと。
ライブでは水野さんの1Aの歌いだしからクラップが発生するのですが、当たり前のように発生するクラップと、それを耳にしてテンションを上げていくクラップは依存関係に近い共同作業だと思います。

そんな目線に立つと、2番Aメロ「終点」も俄然気になってきます。
一緒に乗っている列車の終着駅という意味だけではないのかもしれません。
アイドルとファンの脆い関係そのものが終わってしまうピリオドなのだとも、考えられなくはないでしょうか。

「どれほど君が好きか」
「み」の音で最高音を迎える、個人的にはハイライトのサビラスト。
声に出したい、綺麗な日本語です。
1番、2番、ラスサビ、アウトロ直前と、ソロだったりユニゾンだったり担当する人がまちまちで、ここの響きがそれぞれ違っています。
1番の水野さんはやや詰まり気味の独特の声質で、ほんのり切なさや青さが伝わってきます。
2番は横田ふみかさん。
横田さんは「君」のフレーズを大切に閉じ込めるかのように、後味を残さずスパっと切る歌い方です。
かたやラスサビの工藤みかさんは、ほどよい揺れを残しているように聴こえました。
出てきた歌声を波形にしてみればビブラートよりももっと細かく上下動をしているでしょう。
耳の奥に触れてきます。

振り付けにも注目してみます。
「君」のところでは、やや下に曲げた指を指すポーズ。
ステージからおろす指の先には、フロアがあるはずです。
少し巻き戻して「君が足りなくて 足りなくて」には、フロアに向かって伸ばした手を手繰り寄せるような振り付け。
こうした動きを観ていると、やはり歌詞で語っている内容はファンに向けてのものもあるのでしょうし、まさにそれを動きでもって表現してくれているのだと、勘違いにも似た思いを抱いてしまうわけです。

サビに高音が多く、耳に残りやすい曲だと思います。
耳鳴りのようないやな残り方ではありません。
頭のあちこちをフレーズが跳ね返りながら次第に消えていくような、良い残響です。
濁ったところがなくて抜けるような青。

青にまつわるあれやこれやを一手に引き受けた群青の世界というグループは、青春を通してグループとファンとの関係を語りながら、気持ちの良い青を届けてくれます。


◆Peel the Apple / 夏、恋はじめます

7人組アイドルグループ、通称「ぴるあぽ」の一曲です。
初披露は7月の2周年イベントですが、2022年12月現在ではまだ音源も公開されていません。
他にも同時期に初披露された曲は何曲かあり、それらの音源も未公開なので恐らく現在展開中のツアーが終わったあとにアルバムなりEPにまとめられるのかなと思っています。
(と書いていたら配信ミニアルバムとしてリリースされました)
したがって楽曲大賞の候補としては外れてしまうのかなとは思うのですが、来年に持ち越すのもな...と思ったのでここで紹介してしまいます。

若くて新鮮さを蓄えたグループにしては珍しく、ほのかに懐かしさと切なさを感じるような曲だと思いました。

「夏、恋はじめます」という通り、これから始まる季節を前に「友達以上 恋人未満」を壊したい心情が全編に渡って描かれているのですが、興味深いのは、歌詞の上ではまだ何も始まっていないということです。
「花火」だとか「浴衣」、「海」なんていうフレーズは出てきて、何の気なしに聴くと場面の転換をしたのかなと思ってしまうのですが、実のところ一人称での心の動きだけで、浴衣を着て花火を見てという出来事は起こっていないのです。

一人だけで盛り上がっているのを自覚してでしょう。
いよいよ私変です」なんてフレーズが出てくれば、最後の歌詞は「まだ言えない I love you」。
ラスサビ前の黒嵜さんによる「彼女にしてください!!!」も、前後の文脈からすれば頭の中でのリハーサルということになります。
行動の動機は無限の想像力だというのが痛いくらい伝わってきますし、「曖昧、愛」同様同様ある程度の余白を残しておいてくれることでこちらの想像も膨らみます。
恋愛ものを読むときの、結末を知るまでのワクワク感がラストまで絶えませんでした。

そしてメロディー。
重さを感じるピアノから始まる旋律は、Bメロ「友達以上 恋人未満」から歌詞もあって歌謡曲感と切なさが押し寄せてきます。
後にも書きますが、「彼氏って呼べないのが苦しいから
サビ直前のこの歌詞を歌うのが、か細さのある歌声の松村美月さんだというのがぴったりだと思いました。

何かが弾ける音がしてサビへ入ります。
夏 私は恋をはじめます
ソロや複数人でのハモリしかなかったABメロから一転して、全員参加のコーラスとなるサビは声質が一気に変わります。
単なるソロの足し算以上に音が広がっていく印象を受けたのですが、上から重ねた「ララー」みたいなハモリやうっすら聴こえるストリングスのような甲高い音が、全体の音を奥深いものにしているのかなと感じました。
メインとなる要素だけではなくて、添え物が他では変えられない良い味を出しています。
このパートの魅力は、音源を何回も繰り返し聴いて「こうじゃないかな?」と気付いていったわけですが、ただ「なんか良いな」と思っていた聴き始め当初には分かるわけもなく、気付いた時にはもう曲やグループにハマっていたということなのでしょう。

コーラスと、それに味付けする他の音によってサビは非常に爽やかです。
湿気のまざったべたついた風というより、さらっとした気持ちのいい風が吹き抜けました。

「友達を卒業します」
この曲は音を一度ずつ動いていくようなメロディーが多く、サビのこのフレーズもそのような動きで下がっていくのですが、その下り方が特徴的でした。
階段を下りていくような、きっぱりとした下り方ではなく、区切りが曖昧なままふわっとフォールしていくイメージです。
それを念頭に置いて聴いてみると、ここ以外にも1サビ終盤「タイミン」の語尾や2B「海が見えたなら告白!!」の「見え」などで見られました。
ピアノで例えれば直前の鍵を押しながら(あるいはペダルを踏みながら)次の音の鍵も押すような感じで、はっきりしない音の動きが未だ決心のつかない心情にも見えます。

最後にメンバーの配役について。
この曲は、次作のセンターをかけて行われたたあっちむいてほいのメンバー対抗戦「第2回天下一林檎会」で優勝した黒嵜菜々子さんがセンターを獲得した曲でした。
ここまで聴きどころみたいなものを色々と書きはしましたが、何といっても「夏、恋はじめます」のハイライトはラスサビ前で黒嵜さんがいう「彼女にしてください!!!」というセリフ以外にありません。
黒嵜さんにとっては初センターのご褒美であり、フロアにとってみてもセンターで受けた人などは射貫かれてしまう強いセリフです。
華もあって知名度も高い(自分は黒嵜さんからぴるあぽを知りました)黒嵜さんはタレントぞろいのぴるあぽでも異彩を放っていると思いますし、なぜいままでセンター曲がなかったのかと不思議に思ってしまうのですが、センター曲だからといっていたずらに黒嵜さんをセンターに置き続けないところに配置のこだわりも見た気がしました。
場面ごとに、考えうるベストなメンバーを置く。
他のメンバーを立たせながら、最終的に黒嵜さんがフィーチャーされるような構成がありました。

冒頭のフレーズは低音で、ここは低めに強くてちゃんと音が落ちきる黒嵜さん。
先に書いた、「彼氏って呼べないのが苦しいから」は松村さん、佐野心音さんの歌う「呼ばしてDarlin’」は少し特殊なパートです。
息がつまって苦しそうな声の佐野さんの歌声は、悲痛な叫びのようでこちらも苦しくなる感じがあります。
この記事を書こうと思った時には公式からの音源がなく、どうしたものかと思ったのですが、ほどなくしてタイミングよくダンスショットの動画が上がりました。
経験者でもないので語る資格はありませんが、いちばん安定感を感じたのは浅原凛さんでした。
ぶれない体幹はお手本のようで、2Aのソロやセンターに来たときには頼もしさがありました。
誰よりもそばで いろんな角度で」ここは切ない声の松村さん。
こうした配役がことごとくハマっていて、「このパートはこのメンバーしかありえない」という必然性みたいなものが固まっていくのを感じていました。


◆MuMo° (ミュウモード) / ダイヤの翼

2019年6月に「タートルリリー」としてデビューし、メンバーの卒業や加入を経ながら3年半活動してきましたが、2022年11月に事務所移籍とともにグループ名を「MuMo°」に変更しました。読みは「ミュウモード」です。
3年以上やってきたグループで、メンバーが一新されたわけでも方針が一変したわけでもないのに改名するのはなかなか思い切った決断だと思います。
熟考の末に生まれたグループコンセプトはこうあります。

Mu(ミュー)というのはフランス語で「良い」という意味を持ち、Mo°は、mode、流行りを意味しており時代の流行にのれるよう衣装や楽曲の幅、こだわりをもち、常に良いものをお届けし、流行になるグループを目指しています。

名前こそ変わりましたが、清濁入り混じったライブアイドルの世界で、元タートルリリー、現MuMo°は少し変わった立ち位置にいるなと思っています。
安っぽさや俗っぽさからは一歩引き、侵されない領域を守り続けているような、そんな印象があるのです。
他とは一線を画すという点では、たとえば専用劇場をもってそこだけでほぼすべてのライブを完結させるだとか、ビジュアルとしては完全にアイドルながら自らを「ガールズユニット」と定義することでいわゆる「地下アイドル」的な対バンには出演せず、かわりにアーティスト気質(地下アイドルがアーティストでないという意味ではありません)の人達と付き合いを深めるだとかいくつかやり方はあると思うのですが、MuMo°はそのどちらでもありません。
平日休日問わずライブアイドルの対バンに出演してはいるのですが、その中でもペースを乱されることなく、常に落ち着いた雰囲気が漂っています。
この世界に踏み込むと時に感じる、やかましさや雑多な感じとは無縁です。

そのイメージが固まったのが、自分にとっては「ダイヤの翼」でした。
今回取り上げる曲の中では唯一、人からの紹介で知った曲です。
別グループつながりで知り合った方からリリース当初のMVを送っていただき、これが入り口となって他の曲を知り、そこからMuMo°のライブに行くようになったのですが、初めて観たときはちょっとした衝撃でした。
「ライブアイドルにも”まだ”こんなグループがあるんだ」

当時は結成から2年半くらいという頃です。
2年以上やっていれば色々見えてくるところもあるはずなのに、少しもスレたところがないように思いました。
一つには、メンバーの大人びたビジュアルだったり、闘志や競争心を分かりやすく表には出さない振る舞いなどがあるのでしょう。
そしてもう一つが、曲や衣装、プロモーションの仕方など、メンバー5人を活かす魅せ方にあるのだと思います。
初めて観たMVにも関わらず、それらの結晶が「ダイヤの翼」なのだと妙に納得してしまいました。
撮影されたのは、有楽町オルタナティブシアター。
現在は閉館したホール会場での、無人の席を前にしたパフォーマンス風映像がMVに仕上がっています。

ホールは400を超えるキャパなだけあって、小さなスタジオとは奥行きも高さも広さも明らかに違います。
引きの映像やメンバーの背中越しの映像などでそれを実感するわけですが、ステージの上でマイクを持って踊る5人はそのスケールに負けていません。
大きなステージで堂々とした...という言葉を当てはめるとそれっぽいのですが、表情を観ると自信だけではなく、なんだか少しだけ不安や硬さも抱えている気がします。
「みんな陰キャだから」とメンバーはよく自称しますが、垣間見える控えめな部分もまた良いキャラ付けになっているのではないでしょうか。
合成した笑顔を自信満々に振りまくより、ほんのちょっと素が(素と言い切っていいのかは分かりませんが)見えるほうがこのグループに合います。

内心不安が勝っていたとしても立ち姿やダンスしている姿は綺麗で、バックステージの足元や天井から照らしてくる綺麗な光との相性も良いです。
カラフルな虹色になったり白一色になったりと色合いは激しく変化していましたが、どの色のパターンにもマッチしていました。
照明を贅沢に使った鮮やかなMVは、もはや曲の付属品ではなく単独の映像作品のように見えましたし、そう見せるのが狙いなのだと思います。

特に綺麗だなと思ったのが、落ちサビ。
咲間羽衣さん(この当時は有川奏絵さん)が「例えばあなたが翼を失くしたのなら」と歌い、「僕の羽を...」を佐伯鈴さん、辻菜月さんへとスイッチしていくまさにその一瞬(下MV 3:26)は、カメラがステージ下から煽るような画になっています。
規則正しく天井に並んだから散乱して降り注ぐ白い光と、咲間さんが佐伯鈴さんの方に伸ばす腕の動き、そして腰を下ろしている他の4人とが一つの画角に収まっているのですが、ここには惹きつけられました。

映像の美しさだけをあげつらいましたが、曲のみを聴いても魅力が多いです。
大きな鐘の音からはじまるメロディーからは、恐らくストリングスなど一切使われていないはずなのにオーケストラ的で荘厳な雰囲気が伝わってきます。
リズムはゆったりとしているような体感でしたが実際はさほどでもなく、動きに惑わされて遅めに感じていたようです。
この基準も曖昧なのですが。
面白いなと思ったのが拍の取り方(リズムの乗り方)でした。
リズム隊の中でメインに聴こえてくる楽器がサビまでにかわるがわる出てきて、ハイハット?の8ビート→同じく8ビートをバスドラ→鍵盤→4ビートのバスドラ、とかなり多様です。
(ここのくだりの表現は楽典的に合っているのか分かりません。)

先ほど映像の美しさで挙げた、落ちサビの咲間さんのソロは音としても素晴らしく、サビの随所で聴こえてくる鉄琴のような音と咲間さんの細めの声が地続きとなっているように聴こえました。そのあとを継いだ佐伯さんと辻さんは、歌い手が変わったと一目では気付かないくらい上手く「僕の羽を」と繋ぎ、最後は清藤恵さん。
分けてあげるから」一見控えめなグループですが、清藤さんが強めに歌ったここのフレーズからは確たる意思を感じました。

個人的には、この曲で一番カタルシスを感じるポイントは、サビラストのフレーズ「僕らが広げた」の所でした。
ファルセットを混ぜながら出される「く」のところの音が、思わず目をつぶって浸ってしまうほど綺麗です。


◆透色ドロップ / だけど夏なんて嫌いで

数カ月に一回のペースで重大な単独ライブを開催していて、今年は全国ツアーへと規模を広げた透色ドロップ。
節目となるライブをコンスタントに行いながら、そのプロモーションとしてSNSや街頭ビジョンに動画広告を打ち出し、その中に次に控える新曲の一部分をBGM的に挟みこむというやり方で、この1年以上に渡って絶えることのないライブシリーズを作り続けてきました。

フィジカルなCD販売は、2020年4月の結成以来一度もありません。
割とリリース時期がコントロールしやすいであろう配信のみですが、だからこそ新曲を出すタイミングにはこだわっている印象で、ツアーの直前やファイナル(重要ライブ)の前など、ファンの関心が特に集まり、記憶に残りやすいタイミングでのリリースが目立ちます。
何もない時に公開することはまずありません。
印象的な時に公開してくれると、そこに思い出やエピソードがくっついてくるもので、曲を聴けばその周辺の時期のことを自ずと思い出します。
自分はこの曲が今年のザ・ベストだと思っているのですが、ここには曲に対する純粋な評価だけでなく、思い出というフィルターがかかっている部分も大いにあるのは認めざるを得ません。

だけど夏なんて嫌いで」は「恋の予感!?」とともに、今年5月に梅野心春さんが加入して新体制となって初めてリリースされた曲でした。
配信リリースは東名阪福ツアー「目に見えない大切なもの」の直前、MVは少し遅れてツアー中の解禁です。
サビでのフリコピのキャッチーさからたちまち人気曲になりました。
自分なんかは鍵盤とツリーチャイムのイントロを聴いただけで鳥肌が立ってくるくらい毒されてしまいましたが、ファンの方の中にはそういう人もある程度いらっしゃるのではないでしょうか。

透色ドロップは消え入りそうな儚さを綺麗な音やダンスで表現することに長けたグループだと思っています。
この曲でもその魅力が出ていて、砂浜をさらっていく白く泡がちな波が思い起こされるイントロ、『ジャン』と弦を弾く音が聴こえてくるような竿隊の音などは刹那に感じるもので、決して長くは続きません。
ラストのフレーズ「消えた」の音は引き潮で、祭りの後、跡形もなかったように消えてしまいます。

極めつけはサビの音。
それまで影の部分を残していたヴァースからサビ前にかけては、いよいよやってくる高揚感を待ち構えるような時間です。
予感通りサビで転調して明るい雰囲気に変わっていくのですが、手を芝刈り機みたいに上下させる楽しい振り付けの裏で聴こえてくるのはストリングスの対旋律の音。
会場や音響によっては結構ストリングスの音が強調されて聴こえてくることがあります。
そういう時、不思議な心境の変化が起こるのです。
なぜか分かりませんがうら寂しいような感覚。
ライブでパフォーマンスするときのメンバーの表情には明るさしかありません。
それなのにすきま風が吹いたような切なさが襲ってきます。

この曲とともに駆け抜けたといっていいような初夏のツアー「目に見えない大切なもの」のファイナル公演、アンコールで「だけ夏」を披露したとき、佐倉なぎさんが感極まっているように見えました。
それもサビでの手を振る、曲の中で一番晴れ晴れとしたパートのときです。
もっともこれは音で感情が乱されたからではないでしょう。
動きにやや余裕があってフロアを見渡しやすいサビでツアー各地での記憶がよみがえり、色々思うところが抑えられなくなってしまったのかなと思うのですが、自分はサビでその心境に至る気持ちがすごくよく分かります。
夜明けカンパネラ」でも、ストリングスを使って切なさを演出していました。
聴きこめば聴きこむほど、この音が主旋律と同じくらい大事だと思えてきます。
透色ドロップは楽しさのなかに切なさを差し込むのが実に上手いです。

ツアーファイナルに限らず佐倉さんはいつもこのあたりで泣きそうになっていたのですが、最近ストーリーでその真意がわかりました。
佐倉さんはこの曲を「ファンと自分」との関係に置き換えて捉えていて、既に離れてしまった人のこともよぎりながら「今だけは忘れないで」と願っているのだということです。

うっすらと聴こえた対旋律が重なる「僕なんて」のメロディー、あるいは「流れ落ちる汗が」というフレーズに加わるキラキラとした音。
これらは華やかに耳に入ってはくるのですが、どういうわけか苦さも一緒にやってくるような気がします。

サビでもう一つ書いておきたいのが、振り付け。
1番でいうところの「焦がれてる」というたった5文字のフレーズにあてた動きなのですが、それに合わせて5回、ハンドベルを鳴らすように左右の拳を軽々と叩く動きを初めて観たとき、「この動きしかない」と思いました。
他の動作では替えの効かず、鐘の音をモチーフ(だと勝手に思っている)としている透色ドロップらしい動きです。
それこそ「カンパネラ」からのつながりも感じます。
振り付けは天下の槙田紗子先生。
初めて観たのが「目に見えない大切なもの」ツアーの福岡公演でした。
音と動作の答え合わせをしたときの、綺麗にピースがハマった感覚が忘れられません。

MVには、橘花みなみさんが田舎道で自転車をこぐシーンがあります。
自分がアイドルに目覚めてから間もないころに観たのが「言い訳Maybe」のMVで、緑を裂いていくように進んでいく自転車に懐かしさを覚えてしまいました。
自転車が出てくるアイドルのMVは跳ねるというのが持論です。


◆透色ドロップ / 衝動

ラストはこの曲。
他グループが1曲のみの紹介に対し、透色ドロップからは2曲選びました。
絞り切れなかったからそうしたわけですが、それだけこの一年(特に下半期)は透色ドロップ一色だったのだろうなと思います。

もっともこの曲、配信リリースは2021年の11月24日で、区分け的には去年の楽曲大賞の候補曲でした。
リリース当初から聴いてはいましたが、真価に気付いたのは少し遅れて年明けだったので今年の曲として書きます。

「衝動」について書くにあたって、リリース当時の透色ドロップに対しての自分のスタンスみたいなものを明らかにしておいた方が良いと思ったので、字数を割かせてください。
2021年11月、そのころの自分はツアー各所についていく今ほどこのグループに密着しておらず、興味の度合いでいえばむしろ落ち着き気味でした。
duoで初めて観て「曲良いな」とサブスクに流れつき、今はなき新木場スタジオコーストでの「アンサー」2番の瀬川奏音さんと見並里穂さんの表現を目の当たりにしてまさしく衝動的に特典会に並んだのは夏のこと。(瀬川さんは当時卒論で生物の研究をしていて、近しいことをしていた自分がシンパシーを感じたというのもありました)。
当時の詳細はそれぞれのライブレポに書いています。

どのグループに対してもほとんど特典会なんて行ったことがなかった去年の自分にとっては、ステージに押された勢いで初めましてをしたのは事件と言ってもいいくらい大きな出来事でした。
そのまま”透色に染まる”こともあり得ましたし、実際10月開催だったTIFの日程を決める時にも何割かは透色ドロップの存在がありました。
しかしながら、新木場での衝撃からさして間をおかず、訳あってライブアイドルから少し遠ざかってしまいます。
チケットを買ったのにTIFにも行きませんでした。
メンバーの顔と名前も一致し、「ネバーランドじゃない」のフリコピもできるようになっていて熱が上がり始めていたのに、せっかくの熱もぬるめに、いや、特に思い入れもないこの時期はほとんど冷め気味になっていました。

訳あっての「訳」というのは、自分がライブレポを書くきっかけを与えたグループの事実上の解散を目にしたことでアイドルの見方が揺らぎ、しまいにはネガティブな感情が湧いてきたというものなのですが、図らずも少しばかり冷却期間をおいたことで頭を冷やすことができ、結果として今でも楽しくアイドルを追いかけられているのか、はたまたアイドルの短い旬を逃さないためにさっさと切り替えておかないといけなかったのか。
どちらの選択がベターだったのかは今でも分かりませんが、少なくとも透色ドロップについて言えばこの選択は間違いでした。
頭を冷やすには時間を置きすぎました。

TIFのみならず12月の単独ライブ「透き通る衝動」も「なんとなく」で見送ってしまい、他の対バンライブに対してもその気になれず、そうこうしている内に年をまたいでしまっていました。
久々に長袖を着たな、なんて思っていた新木場から、気が付けば4カ月ものブランクが空くことになったのでした。

数回ライブに行って「興味ある」程度のグループでの4カ月は、かなり致命的だと思います。
そのまま時が流れ、透色ドロップという存在が自分の中で薄くなり、しまいには「たくさんあるうちの1グループ」と引き出しに眠ってしまう可能性だって大いにありました。
何か決定的な引き金があったわけでもなく、ただ自然な成り行きのように足が遠のき、ご無沙汰になってしまう例はこれまでにも数知れずありました。

薄くなりかけていた関心が戻ってきたのは、2022年の1月10日、成人の日に渋谷ストリームホールにて開催された対バンライブでした。

ライブに定評あるグループぞろいの対バンです。
透色ドロップが出ているからという積極的なモチベーションではなく、タイムテーブル的にちょうどいいから久々に観ようかという程度だったと思います。
自分は午前中なん組か見たあと中抜けし、夜の透色ドロップから再度戻ってきたのですが、4カ月以上ぶりに観たステージに、夏に感じた「このグループは何かが違う」という感覚を思い出しました。
既に何回か見ていたわけで、食らったような衝撃は今更ありません。
しかし、確かに残る感触がありました。
これから先、観ていかなければ損だと。
この時のライブレポを引いてみます。
冷めた文体ですが、新木場より明らかにステージが上がった感じを受けていました。

ライブで接して意外性を感じるのが、心配になってしまうほど入り込んだメンバーの表情です。
(中略)
衣装は、ここ最近新調された、落ち着いた色のタータンチェック柄をしたワンピースの上に、明るめの色のパーカーを羽織っています。
パーカーがひっくり返って頭に乗っかるほど動き回るわけではありません。
その分メンバーは大げさとも言えるほどに顔つきやジェスチャーといった、振り付けでは決められていない細かい所作に神経を通わせています。

目線を全く動かさず、大きな目を見開いた花咲りんかさんの表情は特に印象に残りました。
あるいは「ユラリソラ」での絶望的なダンス。

そして、何より惹きつけられたのがラストに披露された「衝動」でした。
音源を聴いた当初からいきなり惹かれていたわけではありません。
楽曲大賞として取り上げる曲になるという感覚もありませんでした。
ただ、聴いていくごとに手触りがフィットしていき、生で見ることへの期待が高まっていることは感じていました。
音源とライブは時に別物になります。
果たして、ストリームホールで初めて観た「衝動」は音源以上でした。
その詳細はまた後半に書きますが、心配になるほど曲に入り込んでしまう透色ドロップならではの曲だと思いましたし、制作側の意図に応えるパフォーマンスだったと思います。
高画質のアーカイブ映像が1カ月近く残されていて、何度も何度も見ました。
そして繰り返しているうちにもう既に、もう一度見たいという欲求が顔を出してきます。

こうしてめでたく透色ドロップへの関心を取り戻したわけですが、いくつかの時の運にも触れておくべきでしょう。
これらがあったから今も首根っこを掴まれているようなものです。
まずはセットリスト。
この日のセットリストは、「衝動」含め端的に言えば笑顔をほとんど抑制した曲ばかりでした。

1 ユラリソラ 
2 孤独とタイヨウ 
3 ≒ 
4 君が描く未来予想図に僕がいなくても 
5 衝動 

2回しのライブ1本目だった白金での対バンは「キュンと。」や「夜明けカンパネラ」など、楽しく可愛らしい曲を並べたのに対し、真逆といっていいセットリストです。
透色ドロップの魅力はフロアを沸かせる楽しさと、映画のワンシーンのような重厚感との2面性にあると思っているのですが、当時の自分からしてみれば、両方のいいとこどりをせず、25分間ただ重く苦しい空気に徹したこのセットリストだったからこそ興味が中途半端な状態でも入り込めたのだと思います。

あとこれはあまり喜ぶべきものでは決してありませんが、この直後にコロナ第何波かが襲いだし、以降フルメンバーがなかなか揃いませんでした。
近くに控えていた生誕祭も延びた記憶があります。
感染者だけでなく、グループとしての活動もストップした時期もあったかもしれません。
いずれにしても、ソロや個人の目立つところが少なく、それぞれがそれぞれにもたれかかって全員で総合芸術を作り出している透色ドロップにとって、一人欠けるのはかなり大きな問題です。
何気ない対バンの一日ですが、この日は7人が万全の状態で集まった、貴重なライブだったのです。
揃った状態を観られたのはかなり幸運でした。

それから最後に、再燃し始めたころに都合よく次の単独ライブ「瞬間的記憶」開催が発表されたこと。

これから観ていこうと思った時に、次に行くべきライブが明確に提示されているかどうかはかなり重要です。
この時はちょうどそれがありました。
成人の日の対バンから「瞬間的記憶」までは再びブランクが2カ月程度空くこととなりましたが、アーカイブを見漁って熱を取り戻していたこのころにはもう関係ありませんでした。
あの4カ月のブランクの間に見ておくべきだったなと思いつつ、3月5日を迎えます。
「瞬間的記憶」は自分にとってはなかなか心がえぐられるようなライブで、様々な見方が変わった一日だったのですが、「衝動」に絡めて書こうとすると恐ろしい長さになりそうなので省略します。
一つだけ残しておきたいのは、「衝動」に真正面から向き合おうと思った決定打がこのライブだったということです。

どこかのライブレポの中でさらっと触れるのではなく、まとまった文として書きたい。
その思いで、1年間温め続けてきました。

メロディーや歌詞など、曲そのものについて書いていきます。
水面を打つ雨粒。
本格的に降り出す前の、何滴かを数えられるくらい小ぶりの雨のようなピアノからこの曲は始まります。
互い違いのフォーメーションで、その場に腰を下ろしていたメンバーは一人ずつ立ち上がり、目線は落とし気味。
3月5日に観たときはなぜだかこの場面で涙が出てきました。
次のフレーズで内側を向いて円を作った7人は、顔に手を当ててかがみこむような動作の後、外側を向いて手を返します。
一連の動作は、安直に言えば花びらがひらいたような、と表現できるでしょうか。
絵を眺めている感覚すらあるほど芸術的なのですが、それだけではなくキャンバスに吸い込まれそうなシーンでもあります。
当事者感と自分は呼んだりしますが、イントロのパフォーマンスにそれを感じました。
この間の雰囲気を支配するのは、ずっしりとした重さ。
緩やかな空気は一掃されます。

不穏な空気のまま最初のパートに入ると、ドラムのドンドンという音が聴こえてきました。
第一の見どころは、ここでの花咲りんかさんと天川美空さんによる「白い扉 叩く音がする 聞こえるでしょ?」ドアを4回ノックし、耳に手をやる振り付けです。
歌詞とメロディーとをつなげた振り付けを、背中合わせでしている花咲さんの表情には差し迫ったものがありました。
その次のフレーズで場面は展開します。
今は走り出せ」面白いのが、サビ前のこのフレーズの伴奏が1番と2番で違っていること。
弱い自分をおいてただ駆け出せばいい」と歌うサビの言葉を信じられるようになったのか、2番のほうが細かく、そして速く刻まれています。
重低音が多めのこの曲ですが、シンバル系の音が目立ち始めるサビでは一筋の光が差し込みます。
良いなとつくづく思うのが、「迸った希望の予感をただ確かめていけばいい」。
首を振り、言い聞かせるようにミックスっぽい歌声で歌うところは非常にきれいです。

鍵がかかったままの部屋で育っていく鬱屈とした感情が、外に向けて次第に晴れていくというのがこの曲の中心を走るテーマなのかなと思いますし、1番から2番にかけて速くなるサビ前の拍動はまさにその象徴なのだと思いますが、それでも不安は完全に解消されたわけではありません。
振り切ろうと突っ走るのだけれどもつきまとわれているような感じは依然としてあります。
2番が終わり、間奏では細かなピアノの音とともにメンバーが作ったアーチを花咲さんが駆け抜けていくのですが、そのアーチは初めから用意されていたわけではありません。
他の6人は二人一組で2列を作り、花咲さんはその間を通っていきます。
しかし、二人組が繋いだ手は下におろされています。
花咲さんが列の後ろから前に向かってくぐり抜けていこうとする直前になってようやく腕が持ち上がるのです。
きっと、通り抜ける時の視界は腕で塞がれて暗いままだったはずです。

自分はこの曲を共感にも似た思いで聴いているのですが、何に感じ入っているのかはいまだに説明が出来ません。
ただ、一つあるとするならばこれかもしれません。
冒頭で書いた、当事者感を生むような表現によってステージからなる仮想世界に否応なしに連れ込まれ、4分半にわたる心情の変化を疑似体験させられているのだということです。
不安気な感情は、ラスサビ前の「降り出す雨が祝福してる」によって一旦は解決したかに見えます。
こぼれるツリーチャイムと、一拍目を激しく打ち鳴らすリズム隊。
胸を打つ仕草をするメンバーもいました。

ピアノで始まったこの曲は、最後もピアノです。
手をつないで輪になって外を向いた7人がその手を解いたとき、表情にはかすかな希望を感じました。

初めと違って顔は上向きです。

端折った部分もありますが、これが「衝動」の4分半に起こる出来事でした。
長々と書きながらふと気づいたのですが、自分が一年越しに書いてみたいと思っていたことは、曲の魅力というよりも、音楽が鳴っているその時間に目の前で何が起きているのかという写実的な記録だったのかもしれません。
これはいままで書いてきた曲紹介のなかでも初めて得た感覚です。
温め続けるとこんな形で孵化するのだと、勉強になりました。


以上が今年の個人的良曲選でした。
今回は特に自分語り多めになってしまいましたが、25000字に迫ろうかという評をここまで読んでいただけたということは、何かしら面白いと思ってもらえたということだと思っていますし思いたいです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


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