ライブレポ「KEYTALK 4密サウンドでSUTEKI HOME 〜甘い甘い蜜のよう〜」2010-2014

「ここでこの曲来たかぁ」
一人で観ており共有する人も居ないのだが、画面を観ながら何度も口をついて出た。

9/26(土)、KEYTALKのオンラインライブ「4密サウンドでSUTEKI HOME~甘い甘い密のよう~2010-2014」が行われた。ワンマンライブでは初の試みである。

「4密」とかけた部分もあろうが、「甘い甘い蜜のよう」とインディーズ曲「PASSION」のサビからとった歌詞の一節がサブタイトルになったり、タイトルについた2010~2014という年号からは、KEYTALKデビュー時からメジャーデビュー後数曲までのいわゆる「初期」の曲を示唆しているんだろうな、という予想は大方の意見だったと思う。ここでの初期は便宜上、このタイトルが示す2010~2014年のこととします。

そうは思っていたものの、「本当に初期の曲ばかりで固めたライブをやるのかな?」と個人的には疑り深くなる部分もあった。というのも、ここ数年はメジャーデビュー後の曲、それもKEYTALKを有名たらしめたいわゆる「お祭り曲」でセットリストが占められることが多く、初期の曲はアクセント程度に披露されることはあったものの、そればかりをやるイメージがまるで持てなかった。

けれども、個人的にはこの初期の曲を多用してくれることを切望していた。僕は2016年からKEYTALKを好きになった新参だが、KEYTALKを好きになり曲をどんどん掘っていくと、インディーズ時代の曲にぶつかった。それはKEYTALKを知ったころの彼らのイメージとは遠いのだが、これもこれで新たな一面を見せてくれるものだった。

むしろ、僕としては好みが初期の曲へとどんどんシフトしていった。いまライブでやる曲ももちろん良いのが、もっと初期の曲を生で聴きたい。そう思うようになった。KEYTALK関連のYouTube動画のコメント欄についた、初期を懐かしむコメントに対しては、新参ながら心でグッドボタンを押すようにもなっていた。

そのため、今回発表されたのオンラインライブのタイトルが示唆することには期待の面も大きかった。むしろ、疑り深くなっていたのは、初期の曲が半分くらいしか演奏されなかったらぬか喜びに終わるので、過度な期待はよしておこうという思いからだった。

果たして、やってくれましたね、すべて初期の曲。
ライブとしてはおおよそ4つのブロックに分かれ、各ブロックの合間にメンバーのショートムービーが繋ぎとして流れていた。本当にショートムービーと言った具合で、1分くらいだったとは思う。メンバーの休憩もかねたであろうこの時間、かなり短かったのにも関わらず1時間ぶっ通しで披露してくれたメンバーには感謝しかない。コースターあたりでは喉が心配でしたが。

ブロックごとに色の違いも出ていたかと思う。最初のブロックでは個人的に、KEYTALK自身がインディーズ時代に演奏していたライブハウスにいるかのような感覚を想起させられた。照明もポツポツでまだ全体像が分からない、けれども4人がかなり狭いスペースでひしめき合うように演奏していることは想像できる。オレンジに点滅する照明も、光の効果をまんべんなく使うようなライブハウスの中を思わせる。色味としては、「フォーマルハウト」とよく合っていた。夏が過ぎて秋に向かう中、この上なく合う曲である。よく見るとメンバーの衣装も秋っぽくなっている。

続くブロックからやっと照明が強くたかれ、全体が見通せた。ここになってようやく、メンバーがなん畳か、くらいの狭い所で「密」になって演奏していることを認識した。ここからのブロックでは背景のスクリーンに歌詞が映し出されたり、過去のMVが映ったり、「a picture book」ではももクロさながらのダンスショット(2020 ver.)が流れたりしながら、「観る」ことにも飽きさせないような仕掛けが多かった。

前稿でも書いたのだが、映像の効果は、KEYTALK以外にも従来のライブでは使われることがままあるが、正面のおいしい位置から見ないとその効果を十分に味わうことができないと思っている。その点、配信であれば映像の妙を真正面から目でとらえることができる。これは配信ライブの良いところだろう。

それにしても、「PASSION」は何度聴いても良い。
小野武正が演奏するギターの、泣くような音に、首藤義勝の細く高い声が重なるのを聴くと心が震えるような感覚になる。

泣き出した空は 甘い甘い密のよう

なんでかは分からないが、サビのここなどでは泣き出しそうにもなる。

義勝の細い声がある種のエフェクトとなるような曲は何もこれだけではないのだが、僕にとっては初期の象徴という曲のような気がしてならない。今回のタイトルにも「PASSION」の歌詞が使われていた理由には、上記したようなことがらに加え、「初期曲の象徴」としてPASSIONがぴったりだったからなのではないだろうかと邪推してしまう。

「PASSION」を筆頭に、「エモい」と形容されることが多いKEYTALKの初期曲。僕も別の言葉で表現したいのだが語彙が乏しくてそれ以上言えない。そんな名曲たちを、アーカイブもない一夜限りの配信として贅沢にも観ることができたのは、この上なくうれしい。
もしかしたら、アーカイブがないだけでのちのちDVD化するのかもしれないが、今の所ではそれも分かりようがない。希少な体験ができたことを喜びつつ、来月行われる「後半組」のライブを待ちたい。

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