えっ、そうなの?



 家庭科って、裁縫とか?料理とか?家事ができるようになるんでしょ?

それは少し前のお話で。
実は、現代の家庭科教育は生きるそのものについて学べます。
 
生きるそのものって?命とか?
そうです。命についても考えます。ほかには?生きるために必要なお金とか?
そうです。お金についても学びます。考えます。あとは?人生とか?
そうです。人生、自分ならどう生きていくのかを考えます。
 
時代が移り変わり、人のライフスタイルも考え方も価値観もテレビの内容も議論される内容もすべてが移り変わっていく中で、生きやすくなった人もいれば生きづらい人もいます。
 
多様性という言葉をよく耳にする現代社会において、自分と向き合えるのは家庭科の授業です。
 

どんなことを学ぶのか

高校の家庭科では何を学ぶのか。
まずは、自分のこれまでの人生について振り返ってもらいます。
高校生は15~18歳の人たちですが、1日も休まず毎日自分の人生を生きています。

そりゃあ、色んな事があるでしょう。


自分年表というものを作り、生まれてから小学生の間、中学生、そして現在の高校生の自分についてプラスやマイナスだけでは表せられないような心境を踏まえてグラフを作ります。
すると、あれ意外と自分はマイナスな事とかなかったな。これだけのマイナスがあったけど今はプラスだな。あんまりずっと心境の変化はないな。まずこれだけでも自分と向き合える時間です。
 
そして、今後あと何年かすれば社会に出ていかなければならない時が来ますが、そのときの自分はどうなっていたいのか考えます。二十歳になってもまだ学生かな、もう働いているな、一人暮らししているな、新しい家族がいるかもな、など将来をぼんやりと考えます。
高校2年生という心も体も大人と子どもの間にいるような青年期において、このような自分の将来や人生について考える時間が、いつあるでしょうか。誰もが考えられるように設けられているのが、学校という場であり、
家庭科の授業の時間なのです。
 

人生を捉える

その後、単元ではライフステージにおける誰もが直面する発達課題や、
人々の頭の中に自然と刷り込まれてつくり上げられるジェンダーや
近年話題になっている男女共同参画社会、
仕事や働くということ、家族についてなど、
社会に出ていけば誰も教えてくれない、

だけど、もしかしたらそれに関する問題に直面する可能性もあるような分野について正しい知識を得て、自分なりの考えをもつ、というような時間をつくります。


また、自分と向き合ったあとは、隣にいる自分とは生まれも育ちも異なる他人との意見交換をします。何がわかるか。それは、自分は自分なりの考えがあるように、他人にも他人の考えがあるということです。

言ってみれば、これは当たり前のことです。

しかし、頭ではわかっているようでも実際に他人の意見に耳を傾けようとする姿勢を大切にしている人はどれだけいるでしょうか。人が話している中で、割り込んで自分の話をしてしまっていませんか?人の嫌な気持ちになるようなことを言ったりやったりしていませんか?他人に思いやりをもって接していますか?

これは、誰かから「あの人にはこう対応するといいよ」と言われても、それは自分の生き方でしょうか。実際に今隣にいる他人と自分が向き合って話さなければ感じられるものも感じられません。

大きなテーマ

家庭科教育の大きなテーマは2つあります。それは自立と共生です。
話は長くなりますが、共生というのは字の通り共に生きるということです。自分がいて他人がいて、他人がいるから自分がいて、それを踏まえて共に生きていく、それを練習していくのが家庭科教育です。
 
現代における学校教育では、試験に合格する、高校卒業後の進路を目的とした教育が重要視されていますが、果たして本当の意味で生きる力は育まれているのでしょうか。
もちろん、卒業後の進路こそ人生を左右することもあるので勉強も大切です。

より豊かに生きるために

しかし、今後一人の人として生きていくために最重要なことは自分で考えて、自分で実生活を豊かにしていく力ではないでしょうか。
現代はスマホを使って色んな人とつながっていろんなことを発信して、世界が広がって、できることも広がって、あれ、生きやすい世界になってきたのかな…。


ちょっと待って。

色々なものやことが予測不可能になり、物があふれ、選択肢が増え、あらゆる情報が飛び交い、自分で考えて判断しなければ時代に取り残され、孤立を感じてしまう、自信がなくなってしまう、不安が積もる、そんなことを心に抱いて生きている人もいるのではないでしょうか。
 
少しでも多くの人が自分の満足いく人生を自分で歩めるように、そんな力を育める教育はここにあると思います。


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