マガジン漫画原作『キングバック』3話「ダイヤモンドとカブトムシ」
■森内部
俺は絶賛敵地で迷子になっていた。
治「普通、いきなり迷子になるかね」
?「バカめ、お前は俺の仲間が既に術にかけ、幻の森景色を見ているのだ。まあ、この声も聞こえていないだろうがね」
治「……はぁ」
俺は俯く。
?「絶望したかな? 他の奴に手柄を取られても困る、殺すか」
治の背後に謎の男が迫る。
その時、突然クリサリスストーンズが現れる。
?「な、何だ!」
治「よし、慎重に木をぶっ倒すか!」
クリサリスストーンズは大きく振りかぶって拳を振るう。
その拳は空振りだ。
?「ふぅ、少し焦ったが、今は幻の中だ。偽物と遊んでいるんだな」
だが、男の背後の木が一本バタリと倒れる。
?「ふぁっ⁉ な、何故、俺の後ろの木が倒れる?」
男は激しく動揺する。
治「うん? いまいち手ごたえがないな。よし、もういっちょ」
クリサリスストーンズはもう一度拳を振るう。
それと連動するように、どこかの木が倒れる。
?「な、何が起こっている? こ、この男は一体?」
さらにクリサリスストーンズは激しく暴れ始め、辺りの木々は次々と倒れて行く。
?「うわわ、ちょ、ちょっ待っ! はぶるっ!」
男は倒れる木々に巻き込まれて気絶する。
俺は気が付けば、木が倒れ開けた森の跡にいた。
治「うん? なんかひどくこざっぱりしてねえか?」
ステラ「治!」
ステラはの足元には敵の一人らしき人物が倒れている。
治「なんだ、結構近くにいたじゃねえか」
ステラ「無事だったか? 敵は私たちに幻を見せてから襲う算段だったようだが」
治「そうなの?」
ステラ「そうなのって、私に幻は効かないから何とかなったが、君はどうやって突破したんだ?」
治「なんか、暴れたらこうなってた」
ケロッとした様子で言う。
ステラ「これも君の仕業か……」
ステラは少し呆れた様子だ。
クラスチェ「なんて野郎だ!」
すると、倒れた木の中からクラスチェが出てきて俺にドロップキックをする。
治「いてて、お、無事だったか」
クラスチェ「死にかけたよ! 君のせいで!」
クラスチェは涙目で訴えかけてくる。
治「生きてたから良かったじゃねえか」
クラスチェ「もういいだろ、僕は帰る!」
ステラ「どうやらそうはいかないらしい」
クラスチェ「へ?」
少し離れた所で一人の少女が頭に血が上った様子で立っていた。
少女「あ、あんたたち、勝手に侵入して、半年かけて作った拠点をぶっ壊して、絶対許さないわ!」
クラスチェ「あ、あのぉ、僕は無関係なので帰っていいですか?」
恐る恐る尋ねるクラスチェ
少女「ああ? あんたどころか、この街諸共ぶっ潰してやる! ウッドハザード!」
少女が叫ぶと、地面から太い木の根っこが次々と生えてくる。
治「あらら、怒ってら」
クラスチェ「誰のせいで怒ってると思ってるんだ!」
クラスチェは俺の脛をベシベシと蹴る。
治「まあ大丈夫だろ」
クラスチェ「何が大丈夫なんだ! あんな巨大な根っこの波に飲み込まれたら、僕、いや街は」
俺はクラスチェを無視して前に出る。
治「まあ、見てな。俺が街を救う所を」
俺は襲い来る根っこの群れに向けてクリサリスストーンズを向かわせる。
ステラ「全く、あの自信はどこから来るのやら……でも、あんなの一人はいないと、ね」
ステラは座り込むクラスチェにニコッと笑うと、サーセイバーを出す。
ステラ「君は突っ込みなさい! 仕留め損ねたものは私が斬る!」
治「おけい!」
クリサリスストーンズはざっと見ただけで7,8mある巨大な根っこの大群に衝突する。
治「うぉぉお!!」
クリサリスストーンズは力強く抑え込む。
そして、その脇から漏れ出した根っこたちは全て、ステラのサーセイバーが処理する。
ステラ「いける!」
少女「アハハ! 私のウッドハザードの力はこんな程度ではないわ! 半年、土地の力を吸って蓄えた力、全て解放よ!」
さっきとは比べ物にならないほどに太い根っこが生え、クリサリスストーンズを吹っ飛ばす。
治「くっ!」
少女「さあ、自国民を守れるかしら? それとも熱心じゃない、国民は見捨てるのかしらね?」
一部の根っこは街の方へ真っ先に向かう。
治「行け!」
クリサリスストーンズは根っこから街を庇い、さらに吹き飛ばされる。
少女「アハハ! いいわね、だけど、それじゃあ本体がお留守ね!」
根っこが俺の元に襲い来る。
今、街の方に向かわせたせいで俺が無防備だった。
ステラ「はあ!」
サーセイバーは俺に迫る、根っこを一刀両断する。
治「ステラ!」
ステラ「今は私より敵を見る!」
治「ああ」
すると、サーセイバーはクラスチェの拘束を解く。
クラスチェ「え?」
ステラ「逃げなさい」
治「良かったな」
治とステラはただ真っ直ぐ敵を見る。
クラスチェ「ど、どうして、そんなにも戦うんだ? 勝てっこないよ」
ステラ「ここは私の国、例えこの街の人が私を信用していなくても、守らない理由にはならないよ。だって、私はこの国のリーダーだから」
治「な、かっけぇだろ? こいつ」
俺はステラを指さす。
治「なんつーかさ、やるしかねえだろ」
俺は自分のぽっぺを叩く。
ステラ「行くよ!」
治「ああ!」
クラスチェ「(なんだ、この生き物たち? 底なしの善みたいな生き方して……)」
クリサリスストーンズは再び根っこを抑え込もうとする。
しかし、大量の根っこに絡めとられて動きを封じられ、治も捉えられる。
街を、そしてまだ逃げていない僕を守ろうとステラのサーセイバーは動く、だけど手数には勝てなくて、ステラとサーセイバーも絡めとられる。
治「……」
ステラ「う、うぅ」
少女「アハハ! くっさいセリフ吐いても、所詮はざぁこ! 何も守れないんだよっ!」
少女は高笑いをしている。
クラスチェ「こいつらを笑うな!」
赤い手たちは治とステラを拘束する根っこ向かう
少女「あ?」
クラスチェ「変化解! アルコール引火だ!」
赤い手たちは変化を解かれ、現れたアルコールと炎は激しく根っこを燃やす。
そして怯んだ隙に他の赤い手たちで治とステラを救出する。
少女「あ、熱い!」
クラスチェ「ぼ、僕だって、あんなの見せられたら絆されるじゃないか!」
少女「く、腰抜けかと思ったら意外とやる。けど、もうネタ切れかしら?」
根っこは燃えた部分を切り捨て、さらに生えて襲い来る。
クラスチェ「ぴぃ!」
クラスチェはすぐに捕まってしまう。
一時的に開放された治とステラだったが、ステラはぐったりしていてすぐに捕まる。
しかし、治は抜け出して走る。
少女「あら? 助けてもらったら逃げるのかしら?」
少女のにやけは止まらない。
治「はぁはぁ」
?「戦え」
頭のどっかから懐かしい声が響く。
?「屈さずに戦え」
声は耳に残る。
少女「全てを見捨てるなら見逃してあげてもいいわよ~なーんて♪」
?「諦めるのか? それで貴様は満足か?」
治「うるせぇ」
少女「え?」
治「さっきからうっせぇよ、ごちゃごちゃと! 意見すんなら、力を寄こせ! ロック!」
ロック「寄こす? 既にその方法は知っているはずだ、岩谷治」
治「そう、そうだったな。トランスフォーメーション、タイプ:ビートル」
するとクリサリスストーンズに空から強烈な光が降り注ぐ。
拘束する根っこは消滅し、クリサリスストーンズは全身が膨張し始める。
治「来い、ダイヤモンドビートル」
その瞬間、クリサリスストーンズ全身のレンガははじけ飛ぶ。
そして、そこにはダイヤの如き輝きを放ち、頭部に立派な角を持つキングバックが現れる。
少女「だ、脱皮した⁉ そんなキングバック聞いたことがない」
少女は予想外の出来事に狼狽えている。
治「吹っ飛ばせ!」
ダイヤモンドビートルは根っこに向かって突き進む。
少女「たかが、脱皮したぐらいで!」
根っこはダイヤモンドビートルに襲い掛かる。
しかし、強烈なパンチをくらわせ根っこは引き千切れてバラバラになる。
少女「な!」
治「根っこバイキングまだまだ食い足りねえなぁっ! 全部やっちまえ!」
ダイヤモンドビートルは凄まじいパワー、かつスピードで根っこたちをちぎっては投げちぎっては投げをそのままの意味で体現する。
少女「ちょ、ちょ、ちょっと待って!」
少女が制止するときには既にほとんどの根っこはバラバラにされ、ダイヤモンドビートルはそれでも向かって行く。
少女「私が悪かった! 気が立ってたけど、や、やり過ぎたって、お、思って」
少女は涙目で懇願してくる。
治「いいやダメだな」
ダイヤモンドビートルは少女の目の前の地面に手を突っ込む。
そして、地面から木の人形のようなキングバックを引っこ抜く。
治「てめえみたいな、クソメスガキは、分からせてやんねえとなぁっ!」
真上に放り投げ、落ちて来たところへ強烈な裏拳を叩きこむ。
少女「ぴぃぃっ!」
少女は泡を吹いて倒れた。
俺は振り返る。
治「ほら、見たか? 俺が街を救う所」
クラスチェ「あ、ああ、本当にやるとは」
治「いんや、お前には助けられたぜ、ありがとうな」
俺はクラスチェの肩をポンと叩き、ステラの元へ行く。
治「おーい、大丈夫かステラ?」
ステラ「あ、ああ」
俺はステラに肩を貸す。
クラスチェ「(僕はこの二人を敵に回しなくない。この二人ならきっと……バルターさん、僕は二人の中に見つけたような気がします)」
■建物の影
?「チイラを倒すとは、案外太陽の国も油断出来ないな。おっと、チイラは回収回収っと。他は後回しでごめんね」
すると片目を前髪で隠した男の元に先ほど治にやられた少女チイラが瞬間移動される。
?「おい、起きろ」
男はチイラのほっぺを軽く叩く。
チイラ「う、うぅ、ホルン様、申し訳ございません」
ホルン「敵の戦力を知れたのは収穫だ。ただし、激昂して見境なしに暴れたな?」
チイラ「……」
ホルン「これは女王のお説教かな」
チイラ「そ、それだけはぁ!」
すると、謎の男ホルンはチイラ共にその場から消えた。
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